日本観光協会(中村徹会長)は訪日外国人旅行者の利便性向上と日本での行動を把握するため、ICカードを使った事業化実験を7月19日から9月末まで実施する。対象は韓国、台湾の個人旅行者で、計1万人に無料で提供する。総事業費は約2千万円。カードには電子マネー機能などが付いているが、今回は旅行中に病気になった場合、カードを提示すれば母国語で診察を受けられる機能も付けた。 日観協は実験に際し、JR東日本やアイワイ・カード・サービス、エバー航空、アシアナ航空、ソニー、ぐるなび、損害保険ジャパンなどと「YOKOSO!JapanCardキャンペーン実行委員会」を組織。JR東の「Suica」、アイワイの「nanaco」を基に「YOKOSO!Japan Card」(YJC)という専用カードを発行する。枚数はSuica仕様が9千枚、nanako仕様1千枚。 Suica仕様のカードにはあらかじめ1500円分をチャージしている。 YJCには電子マネーや乗車券機能に加えて、母国語で診察が受けられる医療機関の紹介や旅行中のケガ、病気に対して一定額の見舞金を出す「安心機能」を付けた。旅行者がNPO法人AMDA国際医療情報センターに連絡すると、同センターが母国語に対応できる医療機関を紹介。旅行者はYJCを提示し、1千円を払えば診察を受けられる。「上限付きだが、治療費に対する見舞金も支給する」(日観協)。なお、医療機関は首都圏の約20機関が協力する。 また、東京や横浜など首都圏の観光地や商業施設約100カ所に専用端末を置き、カードをかざせばポイントが貯まるポイントラリー機能も付けた。ポイントに応じて、帰路の成田、羽田両空港で電化製品や化粧品、キャラクターグッズなどをプレゼントする。 YJCを提供するのはアシアナ、エバー両航空会社を利用して、現地旅行会社から個人用のパックツアーを購入して訪日する旅行者が対象。事前に名前や年齢、性別、パスポートナンバーなどを登録してもらう。 日観協では旅行者の訪問先や買い物のデータを年代、性別ごとに収集するほか、アンケート調査も行い、今後の観光戦略に生かす。
国土交通省や国際観光振興機構(JNTO)は、国際会議の誘致、開催に対する自治体などへの支援活動を強化していく。国交省は今年度から、開催地の決定権者に向けて誘致主体が行う説明会を共催して支援する補助事業をスタート。JNTOは、国際会議の情報を集積したデータベースを6月にも開設し、地方自治体や各地のコンベンション・ビューロー向けに公開する。 政府は、2011年までに国際会議の日本での開催件数を5割以上増やし、アジアで最大の開催国となる目標を観光立国推進基本計画に掲げている。日本は、かつてアジア首位の位置にいたが、05年には、予算、人材を強化して誘致に努めた韓国、シンガポールに抜かれ、06年には中国にも追い抜かれた。国際競争は年々激化している。 国交省は今年度、新規事業で誘致活動の支援に乗り出す。自治体や企業、国内機関などが、開催地の決定権を持つ国際機関の本部などに対し行う説明会やレセプションの開催経費を補助。国交省が共催する形態をとり、経費の最大2分の1を負担する。 支援対象となる国際会議の基準は、国際機関、国際団体、国内団体、行政機関が主催する会議で、(1)参加人数50人以上(2)参加国数3カ国以上(3)開催期間1日以上──の条件をすべて満たすもの。このほか、誘致に“勝算”があること、関係省庁、自治体、企業の連携態勢が構築されていることなどが条件となる。 また、国交省は、国際会議の開催に合わせ、日本の観光魅力を発信するエクスカーションなどの観光・交流事業を行う場合、経費の3分の1を上限に国費で補助する制度も設けた。支援対象は、行政機関が主催する国際会議。 JNTOは、コンベンション誘致部を中心に、国交省と連携して支援事業を展開する。6月上旬〜中旬をめどに公開する国際会議のデータベースは、統計調査で蓄積した過去10年間、約2万5千件分の会議データを、開催年、月、都道府県、会議規模などのキーワードで検索できる。重要な会議の開催ローテーションの把握などが可能になる。 データベースは、ログインIDやパスワードを付与された地方自治体や各地のコンベンション・ビューローなどが閲覧できる。開催地が決定していない今後の国際会議についても情報提供を検討している。 このほかにも国交省やJNTOでは、所管大臣の招請状の発出、在外公館やJNTOの海外宣伝事務所などを通じた海外キーパーソンへの働きけ、コンサルティングなどの支援事業を引き続き展開していく。 地方自治体などの誘致主体が、国の支援を必要とする場合は、JNTOのウェブサイトにある「支援要請フォーム」を利用して問い合わせることもできるようにした。 誘致推進で会合 自治体など参加 国交省 国土交通省は21日、国際会議誘致重点会議を開催した。地方自治体や各地のコンベンション・ビューローなど約165人が出席。国交省やJNTOの支援策を説明したほか、横浜市の野田由美子副市長、ちば国際コンベンションビューローの東條秀彦・市場調査課長、が国際会議の誘致、開催の現状をテーマに講演した。 会議冒頭のあいさつで本保芳明・総合観光政策審議官は「国際競争は激化し、競争相手のシンガポール、韓国などは資金力も豊かだが、日本が観光魅力などで劣っているとは思わない。国際会議の誘致は、政策以上にビジネスのセンスが必要だ。情報を共有し戦略的に取り組みたい」とあいさつした。
冬柴鐵三国土交通相は27日の定例会見で、政府が来年度の新設を目指す「消費者庁」に、消費者行政に関係する法律を他省庁から移管する構想が浮上していることについて、「法律全体を移管するのはいかがなものか」と疑問を呈した。今後の折衝で、国交省所管の旅行業法がどう取り扱われるのか注目される。 冬柴大臣は「消費者保護は非常に大事でその観点では協力しようと考えているが、法律の中には、業界育成とか、業種の育成監督という政策が複合している」と全面的な移管に対する問題点を指摘した。 23日の会見でも、「法律の中には、観光ならば観光政策を実質的に進めなければならない部分がある」と観光に触れ、全面移管を問題視した。