全旅連は17日、山形県天童温泉の天童ホテルで総会と理事会を開いた。20年度事業計画として、(1)水質汚濁防止法の暫定排水基準に関する取り組み(2)NHK受信料契約問題への対応(3)原油高騰をはじめとする経営コスト増への対応──などを重点課題として取り組むことを決めた。役員人事では、空席だった専務理事に元中小企業大学校三条校校長の島村博幸氏を選出した。 水質汚濁防止法については、温泉に含まれるホウ素、フッ素の排出基準強化をめぐり、その対象業種から旅館業を外すよう全旅連を含む宿泊5団体が陳情を行っている。佐藤信幸会長は「各県の県議会議員に陳情をしていただいているところだが、先日、温泉所在地の市町村会で旅館業の(対象業種からの)除外が決議されたと聞いている。皆さまに協力いただいた活動の成果が少しずつ出てきている」と述べ、出席した47都道府県旅館組合の代表に謝意を述べた。 NHK受信料問題については、NHKが打ち出した新しい事業所契約制度について、依然負担が重いとして、英国放送協会(BBC)並みの制度を採用するよう宿泊5団体で求めているもの。佐藤会長は「2月の一斉陳情、4月の青年部の陳情もあり、業界と観議連(観光産業振興議員連盟)の先生方、NHK幹部が集まり、話し合いをしたところだ。観議連の先生方の力で、NHKも我々との話し合いの土俵に立たねばならなくなった。これからが正念場だ」とした。 佐藤会長はこのほか、「宿泊客の減少傾向に歯止めがかからない。宿泊客を増やすための対策を打ち出さねばならない」と強調。佐藤体制の目玉施策として打ち出した旅館・ホテルの新しいビジネスモデルの研究も引き続き行う構えをみせた。当日は全旅連ビジネスモデル研究部会による「旅館・ホテルのビジネスモデル実態調査報告書」も配布された。 来年の全国大会は6月16日、大分県別府市のビーコンプラザで行うことを決めた。総会と理事会は大会前日に同県由布院温泉で行う予定。
全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長=山形県・日本の宿古窯)は18日、山形県上山市の上山市体育文化センターで第86回全国大会を開いた。全国の旅館組合員約1200人が登録、参加。主催者と来賓あいさつ、生活衛生営業の振興に貢献した組合員などへの表彰に続き、旅館業界の組織強化や経営の安定に向けた大会宣言と決議を採択。さらに今年は全旅連の創立50周年を記念して、優良従業員の表彰と、地球温暖化の防止に向けた「環境づくり宣言」を初めて行った。 物故者への黙祷、佐藤佐次右衛門・大会実行委員長(山形県・たちばなや)の開会あいさつに続き、あいさつに立った佐藤会長は、14日発生した岩手・宮城内陸地震の被災者に見舞いの言葉を述べたあと、「観光立国推進基本法や観光庁の制定、設立で観光の未来は明るいが、現実は厳しい。観光白書によると、国民ひとりあたりの年間宿泊数は2.47泊。前年比9.2%減少した。国民の宿泊が増えなければ我々業界の活性化はない。宿泊客を増やすための対策を全国各地で行わねばならない」と強調。宿泊客増大に向けた取り組みを各地で行う必要性を説いた。 来賓から、岸宏一・厚生労働副大臣、花角英世・国土交通省観光事業課長があいさつ。地元から後藤靖子・山形県副知事、横戸長兵衛・上山市長が歓迎のあいさつを行った。 表彰は例年の厚生労働省健康局長表彰、全国生活衛生同業組合中央会理事長感謝状、全旅連会長表彰に続き、創立50周年を記念して組合員の優良従業員を初めて表彰した。470人の受賞者を代表して宮城県・ホテル佐勘の山田清氏が佐藤会長から表彰状を受け取った。 このほか高齢者、障害者などすべての人に優しい活動を行っている事例を顕彰する「第11回人に優しい地域の宿づくり賞」の表彰を行い、厚生労働大臣賞の福山ホテル支配人会(広島県)、全旅連会長賞の伊香保温泉旅館協同組合(群馬県)、選考委員会賞の前橋旅館ホテル協同組合(群馬県)に表彰状を授与。観光経済新聞社社長賞を受賞した稲取温泉旅館協同組合(静岡県)には江口恒明本社社長から表彰状を手渡した。 「明日の活力を育む宿泊産業の担い手としての誇りをもって、経営の安定と活性化に努める」などとする大会宣言と、「金融問題を解決し、旅館の再生促進を期す」など12項目からなる決議文を澤田克司・岩手県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長(宮古ホテル沢田屋)、佐藤勘三郎副会長・宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長(ホテル佐勘)がそれぞれ朗読。 さらに創立50周年を記念して、「地球温暖化防止に向け、人に優しい環境づくりに積極的に取り組む」とする環境づくり宣言を野口秀夫副会長・北海道ホテル旅館生活衛生同業組合理事長(登別石水亭)が読み上げ、拍手で採択された。 続いて次年度の大会開催地の大分県の旅館組合員が登壇。「湯の町別府でお待ちしています」と上月敬一郎・大分県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長(おにやまホテル)らが呼びかけた。
和ベット室を新設 蔵王国際ホテル(山形県蔵王温泉、伊藤八右衛門社長)は館内のリニューアルを進めている。6月7日は東館の客室20室をリニューアルオープンし、新たに和ベッド室を設置。7月20日は貸し切り風呂3カ所をオープンする。 客室は3、4階に10室ずつと変わらないが、和室18室、和洋室2室のうち、和室の2室を和ベッド室に改装した。「昼間は畳の部屋で、寝るときはベッドで」という顧客の志向に対応したもの。縁なしの琉球畳を採用するなど内装も凝っている。また4階の10室すべてを顧客の要望が多い禁煙室にした。 来月オープンの貸し切り風呂は名称が「山の恵み湯」「里の恵み湯」「森の恵み湯」。木の雰囲気を大切にした風呂で、1カ所は車いすでも対応可能なバリアフリー設計。利用は無料で、1回45分。チェックイン時に予約を受け付ける。以前は有料の貸し切り風呂を2カ所設けていたが、サービス体制を充実させた。 2軒をリニューアル 北海道内に14の旅館・ホテルを経営する野口観光(野口秀夫社長)はこのほど、家族、小グループ、女性客などに向けて新しいコミュニケーションの場としての温泉施設を提供しようと、登別「石水亭」と層雲峡「朝陽亭」の大幅なリニューアルを行った。 登別石水亭では、夫婦やカップルで利用できる天然温泉貸し切り風呂が全5室、貸し切り岩盤風呂(2人用)が2室、エステルームが5室(2人用2室、1人用3室)と充実させ、さらに、フットエステの専用スペースを兼ね備えた癒しのゾーンとして、癒し処「なごみ」をオープンさせた。 層雲峡朝陽亭では、屋根がなく、地区内でも初めてのパノラマ型空中大露天風呂を最上階に設け、源泉を引いた湯を楽しみながら層雲峡の眺望を堪能できるようにした。秘湯気分を味わいたい人に向け、デザインに凝った新しいコンセプトの大浴場も新規オープン。「間接照明の落ち着いた雰囲気の中、ゆっくりとした時間を楽しめる」と同社。客室は53室リニューアル。「和モダン」のスタイルを意識した洋室を設置し、1室は完全バリアフリールームとした。 野口観光グループは今後も多様化したニーズに対応できるよう、施設の改装、リニューアルを行う予定だ。ソフト面では「オンリーワン宣言」として、スタッフ一人ひとりが自分ならではのサービスを胸のバッジに表記し、接客に努めている。北海道という観光資源に感謝しながらエコロジーとの共存を目指すという「ノースグリーンプロジェクト」にも取り組み、消灯運動や適切な室内温度の設定、ゴミの削減などを積極的に行っている。