小規模高品質の宿の経営者が集まり、もてなしや文化を学びあう「世界宿文化研究学会」(世話人=西田和雄・要庵西富家社長)は7月から、日本政府観光局(JNTO)の事業パートナーとなり、海外に向けた情報発信を始めた。JNTOのサイトに同学会のサイトをリンクしたほか、会員旅館の検索ができるようにした。JNTOに年会費を支払い、積極的な海外プロモーションを始める旅館グループは同会が初めて。「Exquisite Ryokans(極上の旅館)」として旅館の魅力をアピールし、外国人富裕層の囲い込みを図る。 同学会は今年で設立12年目。西田氏が、高い文化性を持ち、主に富裕層を顧客とする旅館の経営者に声をかけ発足した。世界基準の高品質の宿づくりを目的に年2回研修会を開いている。「学会」という名前の由来は、「全員が真剣に宿づくりについて学ぶ会だから」(西田氏)。会員として、あさば(静岡・修善寺温泉)、あらや滔々庵(石川・山代温泉)、五足のくつ(長崎・天草)──など12軒が名を連ねる。 いずれの宿も小規模なうえ、伝統の重みや個性的なもてなしなどで集客力も高いが、「それでも集客、経営は容易ではない」(西田氏)。そこで同学会では、日本人富裕層の少ないパイを奪い合うのではなく訪日富裕層を取り込もうと効果的な方法を検討。以前から外国人観光客を積極的に取り込んできた会員の洋々閣(佐賀・唐津、大河内明彦社長)のノウハウを生かして英語版のサイトを用意した。 今回JNTOの事業パートナーとなったのは、JNTOサイトの宿泊横断検索を利用できるため。JNTOサイトから各宿の英語の予約案内ページまでの導線をつないだことで、訪日客の予約増が期待できる。このほか事業パートナーになったことで、ファムトリップ(下見招待旅行)の取材先選定での優先案内など、海外への広報、販売促進活動の支援を受けられるようになった。 今回の取り組みを、「世界に向けた情報発信の第一歩」と位置付ける同学会。今後はサイトの内容をさらに洗練し、会員宿の持つ文化性などを反映したものにするほか、会員宿を回るモデルコースの提示なども行い、ゆったりと楽しめる日本の旅を提案。顧客の囲い込みを図りたい考えだ。 「優れたものの持つ『良さ』は世界共通。自館の良さをサイトを通じて発信し、自分たちの力で宿を『世界に』売っていきたい」と西田氏は話す。 これまでインバウンドに消極的だった旅館も、近年の訪日客拡大を受けて取り組みを活発化しつつある。一方で、JNTOの事業パートナーには有名ホテルチェーンなどが名を連ねるものの、「プロモーションサービスを受けようという旅館はほとんどない」(JNTO広報担当)。旅館は世界宿文化研究学会のほか、指宿白水館(鹿児島・指宿温泉、下竹原和尚社長)のみ。JNTOは同学会の取り組みを受けて、「『政府観光局』としてのPR力を他の旅館にも活用してもらえれば」とその波及効果を期待する。
静岡県・伊東の「くつろぎ日和 伊東遊季亭」が7月1日にリニューアルオープンした(写真)。「おし花の宿 遊季亭」から名称を変更し、湯や料理、客室など5つの「くつろぎ」を提供する。ホームページでは9月末まで、女性のライフスタイルに合わせた4つの宿泊プランも販売する。 遊季亭の前身は昭和3年開業の老舗旅館「東海館」。その歴史を受け継ぎながら、源泉掛け流しの「自慢の湯」、地元の旬の食材を使った「四季を遊ぶ料理」、寝具にもこだわった「くつろぎの客室」、「24時間のおもてなし」「遊季亭時間」の5つのくつろぎを新たなテーマにした。 女性向けプランは、60分のボディートリートメント付き、娘と母親の旅行向け、1泊朝食付き、ツインルームの1人使用をそろえている。料金は、トリートメントプランの場合、2人1部屋利用で2万9千円から。
5月に開業40周年を迎えた愛知県・伊良湖畔の伊良湖ビューホテルは、バリアフリーに配慮した大型大浴場棟「spa VIEW(スパビュー)」を9月13日にオープンする(イラスト)。露天風呂や気泡風呂、寝湯など男女ともバラエティ豊かな8種類の風呂が楽しめる。オープン記念の特別プランも用意している。 スパビューは地上1階、地下1階で営業面積が約2500平方メートル。海が見渡せる露天風呂のほか、ダイエット効果も期待できて女性に人気の低温ミストサウナなどを備える。12月上旬には、エステやマッサージ、バリアフリー風呂なども加える予定。 オープン記念の特別宿泊プランは、1泊2食付き通常1万5750円のところ1万3650円。ドリンク券や部屋の朝日・夕日側指定、カラオケルーム1時間半額の中から1つを選べる特典も設けた。夕食は和洋中60種類以上のメニューを食べ放題にしたバイキング。 スパビューの利用とランチバイキングをセットにした日帰りプランや、これに加えて部屋の利用も可能な日帰り半泊プランも用意した。
日本観光旅館連盟(佐久間進会長、3891会員)は1日、地球温暖化問題などを踏まえ、環境に配慮した宿づくりを進める会員旅館・ホテルを「地球に優しい宿」としてホームページ(HP)「日観連・やど日本」で紹介する試みを始めた。日観連や会員施設のイメージアップに役立てる。会員施設のさらに詳細な環境対策を調査中で、その結果をまとめた上で今後の活動に反映させていく。 やど日本は、全会員施設を掲載した宿泊予約などが可能なHP。地球に優しい宿として約700軒の施設を取り上げ、所在地と取り組み別に検索できるようにした。 環境への取り組みの項目は、環境管理の国際規格ISO14001の認証取得をはじめ、リサイクル材料を使ったはしや竹製はしの使用、生ゴミの肥料化、太陽光などの自家発電装置の利用などで分類。連泊時にシーツ交換を希望制にしている宿も紹介している。 日観連では全会員施設を対象にした、より詳細な取り組み状況の調査を実施中。これまでに回答があった主な取り組みには、食用廃油のリサイクル、川の水などを使った打ち水、はし持参者への特典の実施、地産地消へのこだわりや野菜の自家栽培、温泉の余熱や排湯の利用など。 調査結果を参考に、今年度に初めて設置した「地球に優しい宿推進委員会」(伏島晴彦委員長)で、今後の活動のあり方を検討する。先進的な取り組みの会員施設への普及、日観連統一の消費者への宣伝活動などの手法を研究する予定。 日観連本部では「環境に関心が高い消費者はもとより、モノより心の豊かさへの転換を通じ、新たな旅行者ニーズも捉えられるのではないか。会員施設の取り組みを推進し、宿のイメージアップにつなげていきたい」としている。