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  観光行政 ■第2481号《2008年8月30日(土)発行》  

通訳ガイドの低い稼働率が浮き彫りに、国交省初の実態調査で判明

   通訳案内士(通訳ガイド)登録者のうち、実際に就業しているのは全体の約3割、このうち年間稼動日数30日以下が約5割、年収100万円未満が約6割に達する──。国土交通省が初めて実施した調査でこのような結果が出た。通訳ガイドの現在の登録者数は約1万2千人。観光立国推進基本計画には2011年度までに1万5千人に増やす目標があるが、就業率や稼働率は低い水準にとどまっている実態が浮き彫りになった。

 今年2〜3月、都道府県に登録している通訳ガイドにアンケート用紙を郵送し、3446人から回答を得た。

 実際に就業しているのは、登録者全体の26.4%で、約4人に1人の割合だった。さらに専業者となると、登録者全体の10.2%。残りの兼業者は、通訳・翻訳業、語学学校講師、教職員、旅行業以外の会社員を副業または本業とする人が多かった。

 就業者全体のうち、年間稼動日数が30日以下は54.5%と半数以上に達した。31〜50日が11.8%、51〜100日が13.4%。100日を超えるのは16.1%に過ぎなかった。通訳ガイド業による年収は100万円未満が62.2%に上った。300万円未満でみても全体の81.3%と多数を占めた。

 専業者にしても、年間稼動日数100日以下が63.4%に上った。年収300万円未満が69.9%に達し、100万円未満も38.8%だった。

 一方、登録者全体の73.6%を占める未就業者に今後の就業に対する意向を聞くと、「将来的には就業するつもり」が42%と多数だが、「検討中」が34%、「就業するつもりはない」という回答は22%だった。
     
メモ: 通訳案内士は、報酬を得て、外国人に付き添い、外国語で旅行の案内をする業務を行う者。無登録で報酬を得ると、50万円以下の罰金が科せられる。国に代行して国際観光振興機構が10言語で試験を実施。外国人も取得できる。登録者の言語別構成比は、最多の英語68.5%に対し、韓国語4.8%、中国語11.0%など。

業界団体「無資格ガイド対策を」
 国交省は21日、通訳ガイドの就業実態調査の結果について東京都内で報告会を開いた。通訳ガイド団体の代表者をはじめ、旅行業やホテルの関係者が出席。意見交換では、就業率や稼働率の低さを踏まえ、無資格ガイドの対策や有資格者の就業機会の確保、通訳ガイド利用に関する情報提供の仕組みづくりなど、それぞれの立場から現状の課題が示された。

 通訳ガイド団体の間には、無資格ガイド対策を求める声が強い。「無資格ガイドの問題解決なしに、試験制度を緩和させて人数だけ増やそうとするのはおかしい」などと指摘。韓国ガイドの団体も、「観光地を見渡せば訪日旅行者は多いが、無資格ガイドばかり。難しい資格を苦労して取っても仕事がない」と訴えた。

 外国人の資格者を増やす方策を求めたのは、アジア系のランドオペレーター。「外国人にとって試験が難し過ぎる。一定の科目に合格すれば、“仮免許”を取得できるような制度を。仮免許の期間に仕事をしながら日本をよりよく知ってもらい、本試験の合格者を増やすようにしては」。

 国内旅行業のインバウンド担当者は、アジアの団体旅行との関係を説明した。「台湾、韓国の旅行会社は今、団体旅行の参加者が集まらずに苦労している。コース内容では差別化できず、価格競争に走っており、料金が高くなる通訳ガイドの利用を敬遠する」と指摘し、アジアのインバウンドを欧米豪とは別にして議論するように提案した。

 一方、通訳ガイドを宿泊者に紹介する立場にある外資系大手ホテルのコンシェルジュ担当者は、通訳ガイドの資質に触れた。「約100人分のリストがあるが、この人にお願いしたいと思う通訳ガイドは10人ほど。スキルだけでなく、好印象をもたれる方でないと困る。だいたい決まった方を紹介することになる」と打ち明けた。

 また、ホテルの担当者は、旅行者に通訳ガイドの料金など情報が十分に伝わっていないという問題点を挙げ、「ガイドをもっと一般的に利用できるようにする仕組みづくりもビジット・ジャパン・キャンペーンの一部ではないか。低料金の区分のガイドなども設けて、ホテルで紹介するといった利用を増やす工夫もあるのでは」と提言した。

 今回は初の実態調査で、数値データを基に関係者が意見交換する機会も初めて。調査を担当した国交省観光資源課の水嶋智課長は「議論をさらに深めていきたい。無資格ガイドの問題と、有資格者が通訳ガイドをビジネスとして成り立たせる問題は、それぞれ別の議論が必要ではないか。多くの課題がある中で、2020年に外客2千万人という目標を考えれば、量、質ともに通訳ガイドのさらなる充実を図らないといけない」と述べた。


09年度観光庁予算、77億円を要求 国交省

 国土交通省は27日、来年度観光庁予算の概算要求を発表した。総額は76億8400万円。今年度当初予算比で21%増、要求額で比較すると6%減だった。国際観光振興機構の運営費交付金などを除く、各種施策に充てる事業費は今年度当初予算比33%増の53億3100万円とした。観光圏の整備事業費には、今年度予算の約2.3倍にあたる6億3千万円を要求した。

 滞在型観光を促進する観光圏の整備事業では、今年度からの継続分に加え、新規に10数カ所の地域を支援する。観光圏に対しては、新たに国交省港湾局の予算を旅客船ターミナルの整備などに活用できるよう連携する。

 VJCを推進するビジット・ジャパン・アップグレード・プロジェクトには、同35%増の41億円を計上した。2020年に外客を2千万人にする中長期戦略を見据え、プロモーションでは、関係省庁と連携した日本文化の発信のほか、従来の重点市場に加え、インドネシアやベトナム、湾岸諸国などの新市場を調査する。受け入れ態勢の強化では、通訳ガイドの充実のほか、外国語表示の改善など交通機関の利用環境の向上を図る。

 国際会議の開催・誘致の推進費は、今年度予算と同額の3億7100万円。誘致活動を支援するほか、国際会議開催の経済効果を算出できる推計モデルを策定する。

 新規事業では、ユニバーサルツーリズム促進事業に1千万円を付けた。障害者などの旅行環境整備に向け、観光情報の提供や旅行商品の造成に関する目安となるチェックシートを作成する。



観光庁発足祝う会、10月2日に都内で

 10月1日に国土交通省の外局として観光庁が発足するのに合わせ、観光関係団体懇談会(26団体で構成、幹事・日本観光協会)は26日までに、10月2日に東京のグランドプリンスホテル赤坂で「観光庁発足を祝う会」を開くことを決めた。

 当日は観光関係団体、企業、国会議員、国交省幹部など約200人の参加が予定されている。

 観光庁は長官以下、次長、審議官、参事官2人が置かれ、総務課、観光産業課、国際観光政策課、国際交流推進課の4課のほか、観光地域振興部の下に観光地域振興課と観光資源課の2課体制でスタートする。

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