東日本フェリー(函館市、古閑信二社長)は8日、11月いっぱいで国内フェリー事業から撤退することを発表した。同社は函館〜青森航路へ昨年9月と今年5月に相次いで世界最大級の高速フェリーを投入。短い乗船時間や新しい設備を売りに利用客を集め、青森〜道南地域の観光振興の新たな旗手として期待されていた。しかし高額な船体建造費を回収するほどの利用者数が得られなかったことに加え燃油価格の高騰が経営を圧迫、今回の撤退となった。
撤退するのは、函館〜青森、函館〜大間、室蘭〜青森の3航路。このうち函館〜青森で運航中の高速フェリー「ナッチャンRera」「ナッチャンWorld」は11月から運休する。2隻の高速船の売却や貸与などの予定は現段階で未定。同社はこのほか2隻の在来型フェリーを同航路で運航していたが、これらについては、同社グループ会社の道南自動車フェリーが引き継ぎ、運航する。
東日本フェリーはこれまで、1隻90億円とされる高速船の導入にはじまり、津軽海峡エリアの活性化と広域観光の推進を目指し高速バスと高速フェリーを組み合わせたチケットなどを販売。青森県フェリー埠頭公社とともに青森のフェリーターミナルのリニューアルを行うなど、積極的な事業展開を行っていた。
同社によると、昨年9月の高速フェリー導入以降、利用者数は前年比80%増と好調に推移していたが、8月は23%増と伸び幅が大幅に縮小。「ハイシーズンである夏季に想定していたボリュームの旅客が確保できなかった」(営業本部)。
青森県フェリー埠頭公社によると、07年の青森港の航送実績は、旅客は前年比6%増の75万6946人と伸ばしている。しかし乗用車が同3%減の13万2652台、バスが同15%減の1328台と前年割れ。「ガソリン価格の高騰の影響からか、乗用車の利用が予想以上に伸びなかったことも響いた」(営業本部)。
同社は8月4日、「燃油価格の高騰が事業基盤を圧迫する深刻な状況」だとして9月1日乗船分からの運賃改定と減便を発表。エコノミーの場合、運賃を大人5千円から6500円に値上げするなどの対応を行っていたが、今回の撤退となった。
10年の東北新幹線延伸をにらみ、広域観光振興を推進する青森県も今回の撤退に肩を落とす。同県観光局の小笠原裕局長は「高速船の運航は、移動時間の短縮から道南地域と青森の交流人口の拡大につながるものとして期待していた。訪日外国人に人気の北海道と組み合わせた青森周遊旅行商品も実現していただけに、残念」と話す。
函館〜大間航路については生活航路として存続を求める声があることから、東日本フェリーでは、関係自治体からの支援を受けての運航を含め、航路存続の可能性を検討する予定だ。 |