観光振興に向けて人材と地域とを結び付ける国土交通省の観光地域プロデューサー事業。9月24日、今年度のモデル地区に指定されている茨城県石岡市、新潟県佐渡市、千葉県鴨川市で活動するプロデューサーが決定した。選ばれた3人は、いずれも旅行会社に勤務した経験を持ち、これまでに培ったキャリアを生かして地域の観光振興をけん引することが期待されている。 観光地域プロデューサーは、石岡市が田井康夫氏(67)、佐渡市が前田雅裕氏(60)。鴨川市が西谷斎氏(63)。いずれも国交省が開催した研修会の修了者で、有識者でつくるモデル事業検討会(座長=大西隆・東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授)とモデル地域の選考を経て決まった。 3人は地域との間に雇用関係を結び、観光協会、市役所などに在籍して手腕をふるう。 田井氏を採用した石岡市は、「旅行商品化や情報発信などが石岡市の課題。11月には体験型観光施設『朝日里山学校』もオープンする。商品造成や販売手法の確立にこれまでの経験を生かし、外部からの視点で地域の観光を活性化させてほしい」(小松崎隆雄・商工観光課課長補佐)と期待する。 国交省の同事業では、観光地域プロデューサーの業務に関連する旅費や資料作成費、広告費などに補助金を交付、モデル地域間の情報交換も進めながら地域観光の振興を支援していく。 モデル地域の1つ、鴨川市は当初、モデル地域に指定されていなかったが、昨年度の観光地域プロデューサー研修の修了者の西谷氏を今年6月から市商工観光課で採用してきた経緯から、「独自モデル地域」に指定されることになった。 観光地域プロデューサーは、昨年度のモデル地区、千葉県富津市、東京都台東区、山梨県富士河口湖町、静岡県伊豆の国市、富山県立山町を含めて計8人になった。
体験型観光に積極的に取り組み、成果を上げている地域の事例や課題を議論する「全国ほんもの体験フォーラムinふくい」が来年3月20〜22日の3日間、福井県で行われる。フォーラムの主な開催場所となる同県の美浜町で9月27日、そのプレイベントにあたる「ほんもの体験フォーラムin美浜」が開かれた。 全国ほんもの体験フォーラムは、04年の長野県・飯田大会を皮切りに毎年開催。次回の福井大会で6回目を迎えるが、プレイベント開催の前例はなく極めて異例。3月の本フォーラム開催に向けての意気込みが表れた。 当日は、同町で活躍するインストラクターら約350人が参加。山口治太郎美浜町長らによる開催挨拶、インストラクターらによる事例発表と藤澤安良氏(体験教育企画代表)による講評、沖縄県在住の詩人で舞台演出などを手掛ける平田大一氏による記念講演が催された。平田氏は、今年3月に開かれた沖縄大会でも記念講演を務めている。 冒頭登壇した山口町長は「美浜には山や海など、教育旅行に最適な70〜80のメニューがある。中学生、高校生に感動を与えると同時に町も刺激をもらい、ともに意識を高めたい」と挨拶。3月の本フォーラム開催に向けて抱負を述べた。 美浜町は、体験プログラム「若狭美浜はあとふる体験」を商品化。リアス式海岸で有名な若狭湾や、町の総面積の80%を占める山地などを生かし、ボート体験や漁業体験、田植え体験などを提供。今年度からは民泊の受け入れを開始し、体験型観光を積極的に推進している。同町の体験型観光のコーディネート組織「NPO法人はあとふる美浜ネットワーク」は、全国で本格的な体験型観光を推進する「全国ほんもの体験推進協議会」(約30団体加盟)のメンバーに名を連ねている。
奈良市の平城宮跡で復原工事が進む「第一次大極殿(だいごくでん)正殿」が9月21日から23日までの3日間、一般に特別公開された。平城遷都1300年祭が開かれる10年の完成を目指しており、一般公開は今回が最後。20日に行われた内覧会を含め、4日間で約2万9千人が訪れた。 大極殿は、今から約1300年前の710年に藤原京から遷都された平城京の北側に位置した「平城宮」の最も重要な建物。遷都後の715年に竣工したと考えられ、天皇の即位式や元日の朝賀(ちょうが)のような国家的儀式に使われていた。復元する建物の大きさは、東西長さ約44メートル、南北長さ約19.5メートル、高さ約27メートル。 初重、二重の屋根に葺き上げられた約10万枚の瓦や、二重の大棟に載せられた金色の鴟尾(しび)を間近で見る迫力に、多くの人が見入っていた。
福島県南会津町は、地域資源を活用したイベントの開催や体験プログラムの提案を通じて、観光振興や都市住民との交流促進を目指す「南会津やまなみ“泊”覧会」(通称・やまはく)を来年4月から1年間にわたって開催する。やまはくの開催に向けて、旅行者ニーズを把握するモニターツアーなども企画されている。 南会津町は、2006年3月に田島町、舘岩村、伊南村、南郷村の合併により誕生した。人口は約2万人。豊かな自然環境や伝統芸能、温泉、スキー場などを生かした観光振興、交流拡大の契機として、やまはくの開催を準備している。年間の集客目標は200万人、100万泊を目指す。 やまはくのテーマは、「伝統と暮らしが溶け合う癒しのふるさと」。季節に合わせて「南会津そばの祭典」「会津高原花フェスタ」「御蔵入三十三観音札所めぐり」などをテーマに、地域特性を生かしたイベントや体験プログラムなどを町内各地で展開していく。 やまはくのプレイベントとしても位置づけているモニターツアーは、南会津観光公社が実施する。同観光公社は南会津町などが出資して昨年7月に発足。第2種旅行業を取得し、修学旅行の誘致などに取り組んでいる。 同観光公社が主催するモニターツアーは、Aコースの「紅葉散策と旬の味覚三昧」(10月18〜19日)、Bコースの「のんびり湯ったり田舎体験」(11月1〜2日)の2回。いずれも1泊2日で、募集人員は各50人。Aコースでは、キノコの収穫体験、鮎を堪能できる「あゆまつり」を楽しむ。Bコースは、藍染体験、新そばまつりをコースに組み込んだ。 同観光公社の福来義明・取締役副支配人は「2次交通の整備なども検討されている。自然や文化を生かした体験メニュー、イベントを通じ、多くの方に南会津を知ってもらい、観光交流を拡大していきたい」と話す。
全国で最も魅力的な市区町村は3年連続で札幌市 こんな結果がブランド総合研究所(東京都港区、田中章雄社長)の行った全国市区町村の魅力度調査「地域ブランド調査2008」で出た。同調査は、認知度や魅力度、イメージなど全63項目からなる質問事項について、全国3万5309人から回答を得た。国内1000市区町村を対象に、8月に実施した。今年で3回目。 同調査は、全783市と東京23区、地域ブランドへの取り組みに熱心な194町村を加えた計1000市区町村を対象として8月1〜7日の期間に行った。100点満点で集計した。 ブランド総合研究所は市区町村のブランド力を数値化し、全国市区町村が地域ブランド戦略の指標として役立ててもらおうと、年1回インターネットを利用して実施している。集計にあたっては、20〜60代の男女別、各年代別、地域別にほぼ同数ずつ回収し、日本の縮図となるように、年齢や地域人口の分布に合わせて再集計した。 最も魅力的な市区町村では、札幌市が59.5点で1位。続いて函館市が55.9点で2位。昨年の4位からの上昇だ。京都市が55.1点で3位、横浜市が51.9点で4位といずれも順位を1つずつ下げた。小樽市が49.2点で5位だった。 町村の中では、軽井沢町が41.4点で9位。続いて屋久島町が39.5点で11位となった。 07年の調査と比較して、最も魅力度が上昇したのは石垣市で昨年109位から今年は18位。同市は「とても魅力的」と答えた人が昨年の7.1%から今年は16.9%と大幅に増加した。屋久島町や宮古島市など離島の市町村の魅力度が上昇している点が特徴的だ。