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  観光行政 ■第2491号《2008年11月8日(土)発行》  

追加経済対策、中小企業の資金繰り支援

 景気悪化や金融危機などで観光業界も厳しい経営環境に置かれているが、政府が10月30日に打ち出した「追加経済対策」(生活対策)の効果を期待する声が上がっている。高速道路料金の値下げはマイカーによる旅行が増え、生活支援定額給付金は旅行費用に回されるかもしれない。また、中小企業に対しては資金繰りが円滑に行われるよう支援する方向で、資金繰りに悩む旅館などにとっては朗報といえそうだ。

 追加経済対策は、生活者支援、金融経済の安定強化、地方支援──が3本柱になっている。いずれも観光業界と密接にかかわる分野であり、早期実施が求められる。対策の中には「観光立国の推進」という文言も盛り込まれ、(1)観光圏の整備促進による魅力ある観光づくりの支援(2)宿泊施設など受け入れ態勢の整備、出入国管理・査証発給体制整備などの観点を含めた訪日査証の見直しによる外客の拡大──に取り組むとした。

 追加経済対策の中で、まず生活者支援では総額2兆円の定額給付金が目玉となる。具体的な実施方法はこれからだが、給付額は夫婦と子ども2人の標準家庭で6万円程度が支給される見通し。家計にとってはささやかな臨時収入となる。

 給付金が生活必需品の購入や貯蓄に回された場合、新たな消費を喚起する効果は薄くなる。業界は家族旅行などに充ててもらいたい意向だが、そのためには動機付けとなる旅行・宿泊プランが必要。旅行会社などは腕の見せどころだ。

 高速道路料金値下げは消費拡大や地域経済活性が狙い。土・日曜、祝日は原則1千円で乗り放題とする。ただし、自動料金収受システム(ETC)利用者に限られる。首都高速や阪神高速など大都市圏の高速道は対象外だが、休日に一定額を割り引く方向で検討する。

 「高騰していたガソリン価格も下がり、ドライブにも出やすい状況。値下げが加われば『ちょっと遠出しようか』という気にもなるのでは。給付金支給と合わせ、旅行気運の盛り上がりを期待したい」という声も上がっている。

 中小企業へは資金繰り支援が柱で、企業が民間金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が返済を100%保証する「緊急保証制度」を拡充する。責任共有制度の適用はない。保証枠は当初予定の6兆円から20兆円に増やす。制度の対象業種は「(旅館・ホテルを含めた)545業種で、さらに追加する予定」と中小企業庁。すでにスタートしている。

 対象業種は一般保証8千万円に加えて、別枠で8千万円(有担保者はさらに2億円)まで保証を受けられる。また、政府系金融機関が直接貸し出す低利融資の枠も3兆円から10兆円に拡大する。特に業況が厳しい事業者については金利の見直しも行う予定。

 経済産業局には「中小企業貸し渋り110番」が開設されており、同庁はこの利用も呼びかけている。



観光庁がビジョン発表、職員に心得5カ条

 観光庁は10月31日、新たに発足した行政機関として、職員の仕事への取り組み姿勢を示す行動憲章などを定めた「観光庁ビジョン〜開かれた観光庁」を発表した。新たな組織文化と職員意識の創造を目指す。行動憲章には「5か条」を定め、“タテ割り行政”の打破などをうたう。5か条は名刺サイズのカードにして職員全員が常時携帯することにした。

 行動憲章の五か条は、「開かれた観光庁」を合言葉に、職員1人ひとりに対し、仕事の進め方や外部との連携、情報公開の姿勢などを定めた。「タテ割りに陥ることなく、迅速に成果を出す」としたほか、民間や地方、他省庁との交流を通じて「新しい力を発揮する」。「仕事のプロセスや結果を公開する」「観光に関する相談には幅広く応じる」などを盛り込んだ。

 観光庁の本保芳明長官は「単なる内部の規定ではなく、外部から見て実行できているか、具体的にチェックできる仕組みもつくる」と説明した。具体策の1つには、観光庁の行政運営について定期的に意見を聞くために、外部の有識者で構成する懇談会の設置準備を進めている。

 観光庁ビジョンは、行動憲章と理念の2部で構成されている。理念では、観光立国の実現に向けた取り組みの方向性を示している。

観光庁ビジョン「開かれた観光庁」
【観光庁の理念】
 私たちは、「観光立国の実現」を通じて、我が国経済社会の活性化、活力に満ちた地域社会の実現の促進、国際相互理解の増進や国際平和の実現、健康で文化的な生活の実現などに貢献します。

 このため、具体的な目標を定めて、以下のとおり「住んでよし、訪れてよしの国づくり」に取り組みます。

 ○我が国の魅力を内外に発信します。
 ○国内外の交流人口を拡大し、我が国や地域を元気にします。
 ○地域の自律的な観光地づくりを応援します。
 ○観光関連産業を活性化します。
 ○すべての人が旅行しやすい環境を整備します。

【観光庁の行動憲章】
 私たちは、国の行政の新しい姿を目指し、「開かれた観光庁」として新しい意識と組織文化の創造に職員一人一人が取り組みます。

〈観光庁5か条〉
 ○民間、地方自治体、他省庁などと交流し、新しい力を発揮します。
 ○タテ割りに陥ることなく、無駄を省いてスピード感を持ち、迅速に成果を出します。
 ○積極的に情報を発信し、仕事のプロセスや結果を公開します。
 ○専門性の向上に努め、観光に関する相談には幅広く応じます。
 ○壁のない自由なコミュニケーションを徹底し、働きやすい職場環境を作ります。



秋の叙勲、褒賞、本社関係は7人


 政府は3日までに秋の叙勲、褒章の受章者を発表した。国土交通省分では、観光事業振興功労として万平ホテル会長(元日本ホテル協会副会長)の佐藤泰春氏氏(74)に旭日小授章を、業務精励として旅館の女将5人に黄綬褒章を授与した。厚生労働省分では、生活衛生功労として、元全国旅館生活衛生同業組合連合会常務理事(元滋賀県旅館生活衛生同業組合理事長)の朝比奈光夫氏(70)に旭日双光章を授与した。

 黄綬褒章の受章者は次の通り(敬称略)

 大西百合子(70)=北海道洞爺湖町、大西産業観光取締役副社長(女将)▽奥村美代子(94)=福井県あわら市、べにや旅館取締役(女将)▽梶木和子(72)=兵庫県神戸市、中の坊取締役(女将)▽坂井喜美子(81)=富山県砺波市、三楽園(鳥越の宿三楽園)取締役(女将)▽阿久津惠永子(76)=栃木県日光市、きぬ川国際ホテル代表取締役(女将)

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