政府は、中国人の訪日観光に対する家族観光査証(ビザ)の発給要件の見直しを進めている。今年3月から、通常の団体観光より少人数の家族観光を促進する目的で試行が始まったが、要件である添乗員の同行などが敬遠されたとみられ、ほとんど利用されていない。観光庁では来年3月末をめどに、政府内の調整、中国側との交渉を終え、新たな発給要件を打ち出したい考えだ。 家族観光ビザは2〜3人の家族が対象。個人年収25万元相当以上という経済力に関する要件があり、富裕層に限定している。ただ、2000年から発給している団体観光ビザ(おおむね40人以下の団体対象)と同様に、中国側、日本側双方の添乗員各1人の同行が必要だ。試行は6カ月後の見直しを前提に開始したが、現在も同じ要件で継続している。 試行期間の3〜8月の発給実績は4組10人と少ない。旅行会社に対するヒヤリングでその要因が指摘されている。「添乗員の同行が大きな阻害要因。富裕層のニーズはフリーの個人旅行」(中国側)、「添乗員2人の同行で費用は通常の団体観光の3倍になり、成約に至らなかった」(日本側)、「経済力の要件がネック。外資系企業の課長クラスでないと厳しい」(同)。 家族観光ビザの発給状況や旅行会社の声を踏まえ、観光庁の本保芳明長官は11月26日の定例会見で、「同行する添乗員を1人またはゼロにする方法などについて、どのような制度設計が必要か、関係省庁と検討している」と説明した。 ビザの要件緩和には、発給事務の態勢や失踪者対策なども絡む。観光庁、外務省、警察庁などで調整した上で、中国側に働きかける。添乗員などの要件を見直すには、中国側にも規定変更などが生じるため、相手国の意向に配慮しつつ慎重に検討を進めている。 また、本保長官は、さらに要件を緩和した個人観光ビザの導入の見通しに関し、「家族観光を含めた団体観光ビザにも課題がある中で、一挙に個人旅行を議論しようとは考えていない」と述べ、段階を踏んだ取り組みが必要だとの認識を示した。
日本政府観光局(JNTO)がこのほど発表した10月の訪日外客数は前年同月比5.9%減の73万9千人となった。前年割れは8月から3カ月連続。金融危機による景気後退などの影響で、韓国、台湾、中国など8市場からの訪日客が前年同月比で減少した。一方、VJCの広告宣伝効果、航空座席の供給量の増加などがプラス要因となり香港からの訪日客は10月としては初の4万人を突破した。 訪日外客数を国別でみると韓国は同15.2%減の18万8800人。台湾は同3.3%減の12万6300人。中国は同5.0%減の8万6600人。豪州は同9.9%減の1万8200人。米国は同14.3%減の6万8千人と7カ月連続で前年割れ。カナダが同8.4%減の1万4200人だった。 一方、香港は4万5600人と前年同月比で42.4%の増加を示した。沖縄旅行ブームなどがプラス要因となった。タイはVJCの広告宣伝効果が奏功し、同10.0%増の2万2600人。シンガポールは同10.1%増の1万3800人。フランスは日仏観光交流年のイベントなどが訪日旅行を促進し、同6.0%増の1万5800人だった。 出国日本人数は金融危機の影響なども加わり、同9.5%減の134万3千人となった。