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  観光行政 ■第2495号《2008年12月13日(土)発行》  

観光立国戦略会議WGで入国審査の時間短縮改善が課題に
WGの第3回会合


 「入港審査の待ち時間を短くしてほしい」。11月26日、訪日外国人旅行者を2千万人にする戦略を話し合う政府の観光立国推進戦略会議・観光実務に関するワーキンググループ(WG)の中で、多くの委員が入国審査の待ち時間を課題に取り上げた。今回の議題の1つは「受け入れ態勢」で、カード決済や両替、交通・観光情報の案内などに関する意見も出たが、「入国審査は他のテーマと違い、政府の取り組み次第」と改善を求める声が強かった。

 外国人の入国審査では、観光立国推進基本計画に「全空港での最長審査待ち時間を20分以下」にする目標がある。今年10、11月の調査によると、成田空港では15日間のうち12日間が最長待ち時間20分未満と比較的スムーズだったが、関西空港は11日間のうち20分未満の日は1日だけで、20〜40分台が9日間、54分に達した日もあった。

 クルーズ船でも課題がある。クルーズ船は一度に多数の乗客が乗降する上、上陸後の滞在時間が平均約9時間と短い。審査待ち時間の短縮が求められているが、今年3月には神戸港に入ったクルーズ船が審査手続きに時間を要することを理由にナイトツアーを取り止めた事例があったという。

 WGの会合には、法務省の入国管理局担当者も出席して対応を説明した。空港では、外国人用・日本人用のレーンの弾力的な運用や整理要員の配置、チャーター便が就航する地方空港への職員派遣などに取り組んでいる。クルーズ船に対しては、出港地や沖合での職員の乗り込みによる船内審査も実施している。

 しかし、有識者らが務めるWGの委員からは厳しい指摘も出た。チャールズ・レイク氏(アメリカンファミリー生命保険会社会長)は「国の第一印象を決める上で重要。受け入れ態勢にかかわる他の課題と違い、入国審査は完全に政府のコントロール化にある。必ず改善するとの姿勢で臨むべき」と指摘したほか、「20分以下を目標に掲げているが、成田空港から都心までの時間を考えたら10分に」と訴えた。

 このほかにも、「成田空港などで短縮に成功した取り組みは地方空港にも広げてほしい」(桑野和泉・玉の湯社長)、クルーズ船に関しても「神戸港のケースを想像するに、乗船客の不満は相当なものだったはず。船内審査などにもっと力を入れてほしい」(島田晴雄・千葉商科大学学長)などの意見が出た。



観光庁の認知度、いまひとつ

 内閣府が発表した「観光立国と観光庁に関する特別世論調査」で、10月に発足した観光庁について「名前も内容も知っている」と答えた人は約1割に過ぎないことが分かった。発足からわずか半月後の調査とはいえ、知名度不足は否めず、積極的な情報発信が必要なようだ。また、国内旅行に行く条件では「宿泊料や入場料などが安いこと」と挙げる人が半数を超えた。

 調査は10月中旬、全国の20歳以上の男女3千人を対象に実施。有効回答数は1853件(回収率61.8%)。観光庁について「名前も内容も知っている」との答えは10.8%に過ぎず、「名前も内容も知らない」は64.1%に達した。

 官民挙げて訪日外客増に取り組んでいることもあってか「外国人旅行者が増えた」と感じている人が80%に上り、「減った」の5.9%を大きく上回った。

 外客が増えることについて(複数回答)、「国際交流が進み相互理解が深まる」が50.7%だったものの、「治安の面から不安、何らかの対策が必要」も51.8%あり、評価が分かれた。

 さらに増やすために重要だと思う施策を聞いたところ、「日本の魅力のさらなるPR」が51.3%ともっとも多く、以下「空港や駅、観光地、宿泊施設での外国語による案内、応援の充実」(47%)、「外国人に対応した宿泊施設の整備」(33.9%)の順。

 調査では「旅行に行きたいと思えるようになるための条件」も聞いた。59.6%の人が宿泊料や入場料の安さを挙げており、景気低迷による節約志向がうかがえる。次いで、「移動手段が安いこと」(47.7%)、「魅力的な宿泊施設(温泉を含む)であること」(40.4%)、「家族と一緒に休みがとれること」(39.7%)が続いている。 



MICE全般を誘致、観光庁方針

 観光庁は、国際団体や国際学会が主催する国際会議にとどまらず、スポーツや文化のイベント、見本市などを含めたMICE全般の誘致、開催を促進する方針を新たに打ち出した。観光立国推進戦略会議・観光実務に関するWGの第3会合の中で説明した。MICE誘致には、国際競争力の強化に向けた国の支援策、施設整備、人材育成のあり方を課題に挙げた。

 MICEは、企業などのミーティング、インセンティブツアー、コンベンション、イベント・エキシビジョンの英語の頭文字をとった呼称。

 観光庁では、これまでもMICE全般を視野に入れてはいたが、観光立国推進基本計画に定めた「国際会議の開催件数を5割以上増やす」を目標に、国際会議を主なターゲットにしてきた。MICE全般への対象拡大について、本保長官は「訪日客の誘致や経済効果の拡大、我が国の地位向上などの観点から、これまでより幅広く、MICE全般を重視する必要がある」と指摘した。

 国の支援策のあり方も課題だ。アジア各国はMICE全般の誘致、開催の支援策を強化しており、韓国、シンガポールでは、20億円以上の年間予算を投じて、誘致支援やインフラ整備を進めているという。一方の日本は、誘致支援に今年度から約4億円の予算が付いたのが現状。「取り組みは十分とは言えない。他国とは相当の差がある」(本保長官)。

 MICEは、主催者や開催の形態が多岐にわたるほか、開催地決定の課程なども多様であることから、個々に対応した国の施策が必要になる。また、施設整備や人材育成などの推進も欠かせない。施設整備では、世界に10万平方メートル以上の展示会場は43施設あるが、日本にはなく、最大で8万平方メートルの施設にとどまっている状況も説明された。



観光庁、入込客統計で試験調査

 観光庁は、都道府県が実施する観光入込客数(実人数)や観光消費額の統計に全国共通の調査手法を導入しようと、試験調査をスタートさせた。有識者らで検討を重ねた基準案を基に、11月下旬に新潟、岡山の両県で1回目の調査を実施した。現状では都道府県ごとに調査手法が異なり、地域間での比較ができないため、共通基準を示し、観光振興に役立つデータにする。試験調査を重ね、2010年度から本格実施できる態勢を整えたい考えだ。

 都道府県ごとの観光入込客数などの統計には、日本観光協会が03年11月に作成した「全国観光統計基準」があり、国土交通省でも推奨してきたが、07年度までに導入したのは17都道府県にとどまっている。

 全国観光統計基準の普及の問題点には、従来調査との連続性、調査予算の負担などのほか、調査地点の定義と地域の現状の不一致、実人数を把握するための調査手法の不明確さなどが挙げられていることから、「統計の信頼性と同時に、都道府県が実際に導入しやすい共通基準づくりを重視している」(観光庁・観光経済担当参事官室)。

 試験調査で使う基準案は、観光統計の整備に関する懇談会(座長=山内弘隆・一橋大学大学院商学研究科長・商学部長)の示した方針に基づき策定した。全国観光統計基準をベースに改善を加えたほか、昨年からスタートした国の承認統計「宿泊旅行統計調査」のデータなども活用していく。

 試験調査の手法は、都道府県内から調査地点として観光地など10カ所以上を抽出し、四半期ごとに年4回、1地点当たり100人から、年齢や居住地、日帰り・宿泊の別、同行者数、訪問地数、消費額などを聴き取る。これらのデータを基に、訪日外国人を含めた観光入込客の実人数や観光消費額を推計していく。

 新潟、岡山での試験調査では、各県20カ所の観光地を調査地点とする。1回目の調査は11月27、30日に実施。2回目は2月に行う。この試験結果を踏まえて基準案の運用上の問題点などを検証。09年度中には、対象を10地域程度に拡大して第2次試験調査を実施し、共通基準を策定する。

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