訪日旅行者の消費を引き込もうと、国内の流通業界から6社が、中国最大の旅行見本市に初出展した。「中国国際旅游交易会(CITM)2008」(上海市、11月20〜23日)の日本パビリオン内に、日本百貨店協会や家電量販店、ショッピングモール運営会社などがブースを構えた。流通業界が中国からの中長期的な訪日客の拡大を見据え、相手国での積極的なPRに乗り出し始めた。 今回のCITMでは、観光庁と日本政府観光局(JNTO)が各出展者をとりまとめて「日本パビリオン」を設置した。観光・運輸関係の企業や団体を中心に、前回の21団体を上回る過去最多の44団体が出展したが、特に目を引いたのは流通業界からの参加だ。 出展したのは、日本百貨店協会、ドン・キホーテ、銀座名店街、チェルシープレミアム・アウトレット、ららぽーとマネジメント、ヨドバシカメラ。日本パビリオン内に、この6社で構成するショッピングをPRするゾーンが設けられた。 JNTOの06〜07年調査によると、中国人観光客の訪日動機1位は「ショッピング」。実際の消費行動もその調査結果を裏付けているため、訪日中国人のさらなる増加などを見越して、流通業界は相手国での情報発信や商談に前向きになっているようだ。 出展団体の1つ、日本百貨店協会(91社266店舗加盟)では、昨年6月に「外国人観光客招致プロジェクト」という委員会を設置。今年1〜2月の訪日集中キャンペーン「YOKOSO JAPAN WEEKS」にも参加し、期間中31店舗で22億6千万円(免税手続きベース)を売り上げた。すでに主要店舗では中国人に一般的な銀聯カードによる決済が可能になっている。 CITMへの出展について、同協会の西田光宏企画開発部長は「品ぞろえやサービスはもちろん、都市観光の“ランドマーク”として日本の百貨店をPRし、認知度向上への手ごたえをつかむことができた」と語ったほか、「日本の商業文化である『百貨店』をそのまま世界に通用する言葉にしたい。他のアジアの国々の旅行見本市への出展も検討していく」と意欲を示した。 今回、流通業界が多数出展した背景に関し、JNTO海外プロモーション部では「日本人市場の将来的な規模縮小が懸念される中、中国をはじめとする訪日アジア人市場は、中長期的な成長が期待できる重要なターゲットとして評価され始めた」と指摘している。
JTB西日本のインバウンドプロモーションコンサルティングデスクとポータルジャパンは4日、「インバウンドプロモーションセミナー」を東京都品川区のホテルで開いた。旅館ホテル、旅行会社、コンベンション会社、広告会社などから80人以上が参加した。 パネルディスカッション「訪日外国人の日本における消費行動について」の中で、日本百貨店協会の西田光宏企画開発部長は「日本の百貨店業界は昨年6月に10店舗が中国銀聯(ぎんれん)カードでの決済を開始し、11月末現在は61店舗が導入している。今年1月20日〜2月29日のYokoso!JapanWeeks期間の1人あたりの購買単価は6万円で日本人の平均客単価の10倍だった」と中国人旅行客のショッピング熱の高さをデータで示した。 日本を紹介するフリーマガジンを北京・上海・広州などで発行しているチャイナコンシェルジュの大西正也社長は「日本旅行にくる中国人は年収250万円以上の層で、全人口の5・2%にあたる約6700万人。沿海部の大都市に集中している。年収1千万円以上の富裕層も2%位はいる」と話し、訪日中国人旅行客の潜在力を示唆した。 また、ドン・キホーテ社長室の中村好明マネージャーは「今年6月から中国銀聯カードの取り扱いを開始し、全220店舗中、19店舗・25カ所で対応している。決済額は毎月30%ずつ伸びている」と明かした。 実践インバウンドの小野秀一郎代表は「旅館ホテルには、簡単な英語版ホームページ(HP)を準備してほしい。その上で、海外で有力な宿泊予約サイトと提携すれば集客に直結する」と宿のインバウンド誘客の秘訣を紹介した。