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トラベル ■第2499号《2009年1月17日(土)発行》  

年末年始の国内旅行、景気後退の影響ジワリ 本社調べ
 年末年始は、12月27日の土曜日を休めば、1月5日の仕事始めまで9日間の休みがとれるとあって、景気後退の中でも、旅行気運の盛り上がりが期待された。国内旅行についてはガソリン価格の低下もあり、「高騰を理由に夏休み時期に遠出をためらったファミリー層にとって、車を利用しての帰省や遠出の絶好のチャンス」(JTB)との観測も出ていた。旅行会社や全国の主な温泉・観光地に年末年始の手ごたえを聞いた。【国内旅行動向取材班】

旅行会社
 KNTによると、メイト商品(12月単月)は人員ベースで前年比約5%のマイナス。方面別では北海道が約2%増だったものの、九州や沖縄は減少。宿泊企画商品は全体で約9%減となった。その一方、年末年始の卒業旅行は好調で、「首都圏発大阪方面への商品は前年の倍」と言う。スキー商品は12月が約7%、1月は約10%の減少だが、「首都圏、中部マーケットでは東北や上越、関西マーケットでは信州などが好調」。また、東京ディズニーリゾート商品はディズニーランドホテルのオープンにより「関西、中部からのお客さまが伸びている」。

 「12月出発は好調、1月に入ると不調」と言うのは日本旅行。販売額は12月25〜31日が前年比20.3%増なのに対し、1月1〜4日は20.4%減。トータル4.2%増。首都圏、北海道、中四国、東北方面が好調だった。また「個人型フルセット旅行(交通、宿泊、食事などが選べるプラン)の扱いが増え、フリープラン型は前年並み」に。

 阪急交通社の実績は人数ベースでほぼ前年並みに推移したが、北陸・甲信越、東海、九州方面は2ケタの増加となった。対して、北海道は航空会社の減便・減席で苦戦。

 クラブツーリズムは前年比約1%減。「休暇期間が例年に比べ若干長かったことを考慮すれば多少(不況の)影響があったのかもしれない」と話す。関東近郊日帰りや、宿泊でも信州など首都圏近距離のバス旅行が比較的安定していたと言う。「バス旅行ではまた、和倉温泉・加賀屋宿泊を含む夫婦限定の新春初夢の旅(3泊4日、2人で15万円)が熟年層に人気だった」。

 はとバスの実績は人員ベースで前年比7%増。「不況の影響か、宿泊コースは全体的に集客減となり、宿泊から日帰りにシフトした感がある」と言う。日帰りは長野・諏訪湖方面コースが好調で2ケタのアップ。宿泊では伊良湖・伊勢神宮方面や群馬・草津温泉コースが5〜6%増となった。

 JALツアーズの実績は前年比4%増。好調だった方面は関東エリアで30%の増加。売れた商品はTDR商品。景気の低迷で「高付加価値、高品質商品である第1ブランドが不調だった」と言う。

温泉・観光地
 観光地、温泉地の年末年始の状況を観光協会や旅館組合に聞いたところ、例年通り堅調に推移した地域がある一方で、景気後退などの影響を受けて厳しい状況となった地域が少なくなかった。

 北海道・登別温泉の12月31日〜1月3日の宿泊客は前年比6%減となった。観光協会によると、例年、12月31日は満室となるが、今季は若干の空きが出た。テーマパークは客数が例年より8〜10%落ち込んだ施設もあるという。

 例年なら満室となるピーク期に空き室が出たというのは、福島・会津東山温泉や鳥取・皆生温泉も同様。「今までにない状況。やはり景気後退が大きく影響している」(会津東山温泉観光協会)。「降雪を懸念した直前のキャンセルが多かった。例年ならそれほど影響のない天候でもキャンセルになるケースがあったようだ」(皆生温泉旅館組合)。

 和歌山・那智勝浦も前期を下回った。町産業課の調査によると、12月30日〜1月3日、旅館・ホテル13施設の宿泊客は前年比2.2%減。一方で日帰り客は、主要観光スポット5地点で0.7%増。熊野那智大社の三が日の参拝客は前年より増えた。「宿泊客は減ったが、景気回復を祈る参拝客は増えたようだ」(町産業課)。

 千葉・鴨川も市観光協会の調査で12月27日〜1月4日の宿泊客が前年比3%減、日帰り客が5%減だった。

 一方で、前年並みとの感触を得ている地域もある。愛媛・道後温泉は、「景気が悪いとは言え、27日から前倒しで正月のようなムードになり、3日まで大半の施設が満館」(旅館組合)。静岡・修善寺温泉も「休暇が長く取れる分、宿泊に結びついたのではないか」(旅館組合)。神奈川・箱根、長野・昼神、大分・由布院、鹿児島・指宿などの温泉地も順調だった模様だ。

 群馬県は、県内9温泉地の12月29日〜1月3日の状況を調査。その結果、宿泊客は前年比0.1%増だった。4大温泉地は、草津2.0%増、水上2.4%減、伊香保0.2%増、四万2.5%増。今期は9日間という長期休暇も可能な日並びで調査期間外に分散した可能性もあるという。県産業経済部観光局観光物産課は「年末年始はリピーターなど固定客、家族客が多く、今期は経済状況を受けて不安もあったが、日ごろの努力が現れ、4大温泉地はほぼ前年並みだった」と分析した。

 年始以降の動向を不安視する声も地域からは出ている。「1、2月は連休こそ予約が入っているが、平日は厳しい状況」(会津東山温泉観光協会)、「不景気の影響で旅行を控えるムードが心配だ」(皆生温泉旅館組合)。年末年始を中心にまとまった降雪があった地域が多く、スキー場での集客は期待されているものの、景気後退の影響などが危ぐされている。



今年の国内旅行人数は前年比1.1%減 JTB発表
 JTBが8日発表した09年の旅行市場の見通しによると、1泊以上の国内旅行人数は、世界的な経済環境の悪化の影響を受け前年比1.1%減の2億9325万人となりそうだ。平均消費額は2.5%減の3万2900円と推計する。海外旅行人数は4.4%減の1530万人で、平均消費額は6.9%減の29万5千円。訪日外国人数は0.6%増の830万人という予測だ。

 経済環境の悪化は、直接の経済面に加え、生活全般の先行き不透明感や世間体から旅行を逡巡するなど心理面でも旅行消費活動に影響しそうだという。その一方で、国内旅行では、ガソリン代の低下や春、秋と2度ある5連休がプラスの要因に挙げられる。また、「イベントが開催される横浜や新しいアトラクションがオープンする東京ディズニーリゾートを中心とした都市型観光、さらには目的性やテーマ性が強い旅行は経済動向とは関係なくにぎわいを見せるものと思われる」(JTB)。

 訪日外国人数は、世界的な経済環境の悪化と急激な円高の影響を受け減少に転じており、年初しばらくはこの状況が続くと予想。しかし、観光庁の施策や、中国からの訪日旅行者増から、年間では前年並みと見る。

 併せてJTBでは08年の推計も発表し、国内旅行人数は前年比1.1%減の2億9651万人となった模様。年初からのガソリン代の高騰、経済環境の悪化、先行き不安感のなど影響を強く受けたという。平均消費額は1.2%減の3万3760円となった。

 海外旅行人数は7.7%減の1600万人、平均消費額で3.7%増の31万6900円と推計。

 訪日外国人数は増減なしの835万人と推計している。6月までは順調に推移したが、円高や経済環境の悪化で8月以降は前年比マイナスに転じた。「特に円高ウォン安の影響を受けた韓国からの旅行者の減少が大きい」(JTB)。


クルーズ・オブ・ザ・イヤー2008のグランプリに北海道商品
 日本外航客船協会(会長・松平誠郵船クルーズ会長)は15日、「クルーズ・オブ・ザ・イヤー2008」のグランプリにJTB北海道や商船三井客船などが実施した「にっぽん丸『飛んでクルーズ北海道』」を選んだと発表した。授賞式は2月2日、東京・平河町の海運ビルで行われる。

 オブ・ザ・イヤーは客船事業振興委員会の今年度新規事業として実施。日本旅行業協会(JATA)が後援した。オリジナリティーに富み、クルーズマーケットの拡大に貢献した商品を企画造成、催行した旅行会社などを顕彰することで、モチベーションの向上を図るとともに、消費者に対し良質のクルーズ旅行商品やサービスを提供するのが目的。

 協会やJATAの会員会社を対象に募集したところ、計23点の応募、推薦があった。選考委員会を設け審議した結果、グランプリ1点、優秀賞2点、特別賞3点と、ベスト・クルーズカップル・オブ・ザ・イヤーを決めた。

 グランプリの「飛んでクルーズ北海道」については、フライ&クルーズによる新たなマーケット開拓に貢献したことや、すべてのクルーズが満室で、初乗船者が7割強を占め、潜在需要の大きさを示したことなどが評価され、「日本のクルーズ史に残る企画で、地域活性化にも寄与」と絶賛している。

 優秀賞は、阪急交通社の「JALチャーター直行便利用『サファイヤ・プリンセス号で行くゆったり優雅な夏のアラスカクルーズ10日間』」と、読売旅行の「ぱしふぃっくびいなすチャータークルーズ『春の瀬戸内海と九州一周クルーズ8日間』」。

 クルーズカップルには「優雅で知的、かつ親しみやすいイメージがクルーズにピッタリ」として俳優の高橋英樹・美恵子夫妻を選んだ。高橋夫妻は授賞式に出席する予定という。


運輸機関の年末年始、悪天候で利用低調
 08〜09年の年末年始(12月26日〜1月4日)の各運輸機関の利用状況がまとまった。空路、鉄道とも12月末の悪天候が影響した路線が多く、前年の利用状況を割り込んだところが目立った。悪天候に加えシステムトラブルなどから運休やダイヤ乱れが相次いだJRは多くの路線が前年割れした。一方、ガソリン価格の落ち着きなどから、高速道の利用台数は前年よりも増加した。

■航空
 国内航空路線では、JALグループの総旅客数が118万5948人で前年同期比1.9%減だった。方面別では、関西方面が同6.1%増だった以外は軒並み前年を割り込んだ。北海道方面は同4.6%減、沖縄方面は同4.3%減だった。

 ANAは総旅客数が同6.8%減の118万802人。方面別では、沖縄方面(同1.0%減)、関西方面(同0.1%増)がほぼ横ばいだったほかは、前年実績を5%以上割りこんだ。特に北海道方面(同11.8%減)、東北・北陸方面(同10.4%減)が低調だった。

 スカイマークの総旅客数同9万2804人で、前年同期比15.9%減だった。昨年は運行のなかった羽田〜旭川線、福岡〜那覇線の利用者およそ8千500人が増えたものの、全体では前年を大きく割り込んだ。羽田〜神戸線の提供座席の減少(同48.2%減)も影響したと見られる。

 エア・ドゥの総旅客数は前年同期比3.2%増の5万3039人だった。札幌〜仙台線がANAとの共同運航で始まったことが運輸実績を引き上げた。東京と北海道各地を結ぶ各路線は、同25.6%減となった女満別線をはじめ札幌、旭川、函館各路線とも低調で、前年を5〜10%割り込んだ。

 スカイネットアジアの総旅客数は、前年同期比9.4%増の3万4596人。スターフライヤーは同10.9%減の2万9468人だった。

■JR
JRのうち新幹線の利用実績は、JR東海が330万3千人と前年並みだったほかは、JR東日本が前年同期比3%減(利用人数は非公表)、JR西日本が同2%減の153万人、JR九州が同4%減の10万4千人と各社前年実績を割り込んだ会社が目立った。

 在来線特急・急行では、JR北海道が、前年同期比1%増の40万800人と前年を若干上回ったものの、JR東日本が同5%減、JR東海が同9%減の21万8千人、JR西日本が同6%減の93万人。JR九州(特急のみ)は、同3%減の55万2千人。JR四国の瀬戸大橋線は、同4%減の27万9千人だった。JR東日本の新幹線、在来線特急、急行の利用者は、同3%減の423万5千人。

 期間中、JR北海道では12月26日の悪天候などにより前年比224本増の240本が運休。JR東日本では12月29日のシステムトラブルで運休した112本を含め、悪天候などで期間中174本の新幹線が運休し、輸送人員数に影響した。

 このほか、前年割れの要因としてJR西日本は「年始の期間が短かったことで、利用日が集中したため」としている。

 新幹線や特急などの長距離移動は低調だったものの、首都圏近郊の輸送実績は好調だった。東京ディズニーリゾートの最寄り駅である舞浜駅の降車人員は、前年同期比10%増の57万8千人と2ケタ増。イベントが開催された東京・水道橋、千葉・海浜幕張の各駅も近距離きっぷの発売が前年実績を2割以上超えた。

■高速道路
 主要高速道路3社(NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本)によると、12月24日〜1月4日の高速道路の利用状況は、主要9高速道計で385万1900台、前年同期比3.9%増となった。道央道以外は軒並み前年を上回った。東北道(同6.5%増)、山陽道(6.2%増)が好調。高騰していたガソリン価格が落ちついたことも、利用を後押ししたようだ。


JTBと朝日新聞、旅行・文化事業で提携
朝日新聞の秋山社長(右)と握手をかわすJTBの田川社長

 JTB(田川博己社長)と朝日新聞社(秋山耿太郎社長)は4月から、旅行・文化事業分野で複合的な提携関係を結ぶ。両社の強みを生かした相乗効果により、「新たな旅文化を生み出し、地域社会の発展に寄与できるようにしたい」(秋山社長)という狙い。具体的には、JTBが朝日新聞グループの朝日旅行(堀口昭社長)を連結対象会社とし、カルチャー事業を朝日新聞に売却するなどして取り組む。昨年12月26日に合意し、発表した。

 JTBは、朝日旅行の発行済株式のうち51%を3月末に譲り受け、朝日新聞社は33.4%の株式を保有する。朝日旅行は、JTBグループの仕入手配力、販売力を活用して事業拡大を進めるともに、新聞読者へのサービス向上も図る。新体制となる4月以降も、商号や「朝日旅行」「朝日サンツアーズ」のブランド名などを踏襲していく。

 朝日新聞社は10月1日を目途に、100%出資会社である朝日カルチャーセンター(東京、大阪、福岡、愛知)の4社を合併。JTBは、子会社ジェイコムが運営している「JTBカルチャーサロン」事業を合併後の朝日カルチャーセンターに譲渡し、新会社の発行済株式の33.4%を保有する。

 記者発表で田川社長は「JTBブランドは旅行、遊びといったイメージが強く、朝日新聞社グループは文化的イメージを持っている。両社の経営資源の融合効果によって、さまざまなテーマ性のある旅の企画や新たな交流の場の提供が可能になり、新しい旅文化の需要が創出できる」と提携の意図を語った。

 両社では、旅と文化を組み合わせた地域文化振興の事例として、くらしが育んだ日本の里を選定する朝日新聞社の「にほんの里100選」と、地域の魅力を掘り起こすJTBの着地型商品「旅百話」を連携させる事業を構想する。「日本古来の風景の中で多くの人が四季折々に出会い、触れ合う機会を数多く提供し、全国各地のにぎわいにつなげたい」という。


主要63社11月実績

 観光庁が8日に発表した08年11月の主要旅行業63社の旅行取扱状況(速報)は、総取扱額が5553億9982万円で前年同月比7.7%減だった。4カ月連続での前年実績割れ。このうち国内旅行は同3.0%減の3597億4463万円。海外旅行は同15.2%減の1893億7319万円で6カ月連続前年割れした。外国人旅行は同17.1%減の62億8200万円で3カ月連続の前年実績割れ。

 国内旅行は2カ月ぶりに前年割れした。前年実績を超えたのは取り扱い57社中、13社。クラブツーリズム(前年同月比7.1%増)、東武トラベル(同19.6%増)、フジトラベルサービス(同7.7%増)などが好調だった。

 旅行商品ブランド(募集型企画旅行)は、総取扱額が前年同月比3.9%減の1445億7909万円だった。このうち国内旅行は同3.5%増の931億9621万円、海外旅行は同14.8%減の511億3620万円、外国人旅行は同9.7%減の2億4668万円。取扱人数は同0.8%増の423万5670人だった。このうち国内旅行は、同2.4%増の390万5349人、海外旅行は同15.6%減の31万5874 人、外国人旅行は、同16.0%減の1万4447人。
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