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旅館・ホテル ■第2506号《2009年3月14日(土)発行》
定額給付金で旅館に泊まって! 各地で動き活性化
“定額給付券”をアピールする伊豆長岡温泉旅組の女将さん
定額給付金の支給が始まった。給付額は1人当たり1万2千円で、18歳以下と65歳以上には8千円が加算される。効果を疑問視する声は依然根強いが、低迷する景気の刺激策として期待する業界も少なくない。その1つが観光業界で、旅館組合や旅行会社、観光協会などでは給付額にちなんだ商品やサービスを始めている。各地の“定額給付金商戦”を追った。
群馬県みなかみ町と同町観光まちづくり協会は同町内の約70施設を利用した宿泊客を対象にキャッシュバックサービスを始めた。宿泊料金の一部を宿泊客に戻すもので、宿泊料金が8千円未満の場合は1千円、8千円以上の場合は2千円をキャッシュバックする。
3月15日から4月30日までの宿泊を対象としたサービス。期間中、土曜日を除いた日が対象となる。10人以上の団体での利用は対象外。
3月5日から専用電話を設置して受け付けを始めたが、初日には300人を超える申し込みがあり、出だしは好調。キャッシュバックのために同町と宿泊施設が用意した予算計2800万円から、同協会では先着1万5千人程度がサービスを受けられるのではないかと試算するが、2週間ほどで予約がいっぱいになりそうと見る。
同町への観光客は県内のほか、埼玉県からの利用者も多い。新聞紙上などで首都圏中心に取り組みをPRし、利用者が伸び悩んでいる現状を打破したい考えだ。
静岡県の伊豆長岡温泉旅館協同組合は定額給付金をもじった「定額給付券」キャンペーンを展開中。給付券1万円分を抽選で1万人にプレゼントするもので、33の旅館・ホテルで使用することができる。「冷え込む消費や地域経済の起爆剤になれば」と同旅組。
2月22日から応募を開始。7日現在、はがきは2800枚、インターネットでの応募は5千通に達し「予想以上の反響だ」と驚く。応募締め切りは5月末だが「どのくらいになりそうか検討がつかない」と嬉しい悲鳴。
宿泊客は年間90万人を超えていた時もあったが、現在では約50万人と大きくダウン。今回の給付券で話題を提供、宿泊客増へつなげたい意向だ。
3月1日から一律1万2千円で宿泊できる「定額給付金得々プラン」を開始したのは滋賀県のおごと温泉旅館協同組合。組合所属の全旅館(10軒)が参加している。プランは1室2人利用で平日限定とした。1泊夕朝食付きでの通常料金は1万5千円程度なので、3千円ほど安く宿泊できる。6月末まで実施。
びわ湖花街道の佐藤祐子専務(同旅組副会長)は「当館ではすでに約50件の予約が入っている。給付金に対しては批判的な意見も少なからずあったので(反響の大きさに)ビックリしている。滋賀県で使っていただき、地域経済の活性化につながれば」と期待する。
佐賀県嬉野市の温泉旅館組合は、同温泉で利用できるプレミアム付き宿泊券を5月をめどに発行する方針だ。売価7千、1万、1万5千円の宿泊券だが、それぞれ額面の1割のプレミアムが付く。併せて同組合所属の旅館は、7700円、1万1千円、1万6500円で宿泊できる宿泊プランを用意。
通常よりもサービスなどを充実させたお得感ある宿泊プランで、利用者を呼び込む。「宿泊券が誘客のきっかけになり、ひいてはリピーターの確保につながれば」と同市観光商工課。
各温泉地が給付金プランをつくる中で、異色なのが静岡市の梅ヶ島温泉の取り組み。「定額給付金プラン」と称する1泊2食2人で1万2千円の格安宿泊プランを発売したが、プランによる売り上げの約1割を派遣切り救済事業を行う団体に寄付する点が特徴だ。
年度末に派遣切りや派遣村のニュースに触れたことがきっかけとなり、派遣切りで苦労している人の支援と地元の景気回復の後押しができないかと企画した。1人あたり6千円と同温泉に宿泊する際の通常の価格よりも3〜5割安いが、地元の食材を使った地産地消メニューを提供する点などは通常と変わらない。
同温泉観光組合に所属する施設全13施設のうち、11施設が宿泊プランを実施する。プラン設定日は4月1〜20日の全日。各旅館がプラン用に毎日1、2室部屋を用意し、部屋が埋まり次第予約を締め切る仕組み。3月11〜20日の10日間、同組合案内所で予約を受け付ける。
手島泰宣組合長(梅薫楼)は、「今回の給付金を少しでも多く地元で使っていただくことで、地元の景気回復の一助となれば」と期待する。
定額給付金に絡めた宿泊プランやサービスは新潟県妙高市観光協会も検討しており、今後さらに拡大しそうだ。
長野・戸倉上山田温泉、マスコミに魅力アピール
懇談会
戸倉上山田温泉旅館組合連合会(長野県千曲市、宮川光男代表)は2月26日、東京・永田町の星陵会館で報道関係者を集めた懇談会を開いた。旅行志向の変化などで温泉地への入り込みが減少傾向にある中、地域の素材を活用した着地型体験観光プログラムの商品化や、温泉街のにぎわい創生事業を進め、誘客に努めている現状を説明。「チェンジする戸倉上山田温泉に皆さまの支援を」と呼び掛けた。
文化、伝統、食、健康などを題材にした、同地ならではの13の体験観光プログラムを商品化し、販売している。「全国の夜景百選」に選ばれた姨捨(おばすて)の夜景を見に行くツアーや、芸妓が観光ガイドを務める温泉地のそぞろ歩き、温泉まんじゅうを揚げて食べる地元ならではの食文化を体験するプログラムなどを設定している。
このほか、タクシードライバーが温泉地周辺の観光ガイドを務める「語り部タクシー」を制度化。温泉街の活性化へ、裏小路の再開発や足湯の開設、旅館が月替わりでロビーに芸術作品を展示する「1宿1ギャラリー」、商店と飲食店がオリジナル商品を開発する「おらんちの逸品」などの事業に取り組んでいる。
同温泉は善光寺参りの参拝客や団体観光客などで古くからにぎわい、昭和30〜40年代は年間160万人の入湯客があったが、現在は75万人程度まで落ち込んでいる。個人化など、現代の旅行志向に対応するため、旅館組合員らが再生事業推進組織「カラコロにぎわい協議会」を発足。行政の補助を受け、ハードとソフトの整備を進めている。
同温泉のキャラバンは同日、東京の観光経済新聞社も訪問。一連の事業を説明した。
京都府旅組が修学旅行フェスティバル
新しい修学旅行向け料理を展示した献立講習会
京都府旅館組合の団体旅館部会(山内広之部会長)は3日、京都市中京区の本能寺会館で第30回献立講習会(修学旅行フェスティバル)と旅館経営合理化展示会を開いた。
講習会では、京都の3旅館が修学旅行の献立を展示。エビフライやハンバーグといった学生に人気のメニューと京野菜などの地産の食材を取り入れた和食を組み合わせた献立が並んだ。参考にしようと写真やメモをとる旅館関係者らの姿が多く見られた。
展示会には飲料メーカーや衛生用品を製造販売する企業など約20社が参加した。
献立を展示した和泉屋旅館の小林幸二総支配人は「修学旅行生は未来の旅行客。盛り付けなどを工夫して、京都らしさを感じてもらえるようにした。どういった献立が受け入れられるのか試行錯誤しながら、魅力のある献立を提供していきたい」と話した。
福島・岳温泉で「女将と過ごすひな祭り」
そろいのはんてんを着てひな祭りをアピール
福島県岳温泉の女将会「かたかごの会」(会長・鈴木美砂子陽日の館あづま館女将、7会員)は2月28日から3日間、文化・健康イベント「あだたら万遊博─女将と過ごすひな祭り」を開催した。期間中、各旅館を会場に多彩なイベントが繰り広げられた。
初日のオープニングセレモニーはあづま館で行われ、そろいのはんてんを着た女将が勢ぞろいし、あいさつ。また、佐藤俊夫岳温泉観光協会長、鈴木安一岳温泉旅館協同組合理事長らが祝辞を述べた。
期間中、菅原美智子・ラジオ福島アナウンサーや芥川賞作家の玄侑宗久氏による講演のほか、きき酒会、陶芸教室、女将によるスペシャルビューティー温泉講座などさまざまなイベントが行われた。
また、岳温泉周辺の旅館・ホテル、レストランなどが取り組んでいるB級グルメ「安達太良カレー」が今回初めて披露された。
滋賀・白浜荘、独自の体験プログラムを企画・販売
里山ハイクなどが好評
滋賀県高島市の白浜荘(前川為夫社長)は、地元ガイド団体と連携し、地域独自の体験プログラムやエコツアーを企画販売している。同旅館では04年に高島市が環境省から「エコツーリズムモデル事業」の1つに選定されると同時にツアーづくりに取り組んできた。年間20から30の「里山ハイクツアー」「海辺ツアー」などを実施している。
新たな体験プログラムとして、4月からは伝統漁法で魚を獲り炭焼きで食べる「投網体験」や、地場産業に触れる「扇子の絵付け体験」のほか「いかだづくり体験」「阿弥陀山ハイキング」を販売する。これらの着地型プランの特徴は、JRを利用して来たツアー客へは、駅から目的地までを無料送迎。朝集合場所の駅に旅館オリジナルの「ふるさと弁当」を出前。帰りは、休憩やお土産が買える道の駅を経由し、宿(日帰りの場合は駅)に戻る。
これらの取り組みは地域総合整備財団が選ぶ07年度の「ふるさと企業大賞(総務大臣賞)」を受賞。昨年4月には、「びわ湖里山・里地の滋賀県版事業者特区」に認定された。また、全旅連が主催する第11回「人に優しい地域の宿づくり賞」の努力賞も受賞。「体験プログラムを充実させるとともに、旅行客の利便性を研究、システム化により多くの体験型来訪者を増加させたい」(前川社長)。
同旅館では、体育館やテニスコート、プール、コンベンションホールなどの施設も充実しているので体験プログラムと組み合わせてスポーツ合宿や研修旅行で利用することもできる。
問い合わせはTEL0740・32・0451。
ニセコビレッジ、宿泊客送迎にヘリ利用
北海道のニセコビレッジとヒルトンニセコビレッジは3日から、朝日航洋と協力し、ヘリコプターによるシャトル便の運航を開始した。ルートはニセコ〜新千歳空港、同〜札幌丘珠空港間で、最速約30分で結ぶ。大幅な時間短縮となるが、運賃は片道約19万円と高額。需要はもちろん、採算がとれるのかどうか、注目される。
リゾート施設がヘリシャトル便を運航するのは「ニセコビレッジが国内初」と言う。
新千歳〜ニセコ間は冬季の場合、約3時間かかるが、30分で結ぶことで「早朝の飛行機で東京を出発すれば午前の早い時間にニセコに到着する。スキーやゴルフなどニセコでのリゾートライフをより長く楽しめる」と自信を示す。
ヘリは定員4人で、3人から受け付ける。1人当たり運賃は18万9千円(税別)と高額なため、富裕層の利用を見込む。運航予定日の7日前までに予約する。
時間短縮に加え「支笏湖や洞爺湖、羊蹄山などを眼下に見られ、北海道の雄大な景色も魅力の1つ」とアピールする。札幌丘珠空港ルートを利用すれば、ニセコビレッジに滞在しながら日帰りで札幌観光も可能としている。
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