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観光行政 ■第2514号《2009年5月16日(土)発行》  

初の観光立国教育全国大会、三島市で開催
本保長官(左)から表彰を受ける米沢市立北部小学校の教諭ら

 郷土や地域の良さを見直し、その良さを発信する教育事例を全国に広めようと、10日、観光立国教育全国大会(大会会長=舩山龍二・日本ツーリズム産業団体連合会会長)が静岡県三島市で開かれた。小中学校の社会科や総合学習の時間に実践された、観光をテーマとした授業の優れた事例15例を「観光立国教育賞」として表彰したほか、観光教育の模擬授業を行った。大会には教師や観光関係者らおよそ900人が参加。観光教育の推進へ、産学官が連携し新たな一歩を踏み出した形だ。

 同大会は、観光を切り口とした授業活動を研究してきた、小中学校の教員らの教育技術研究団体「TOSS」が中心となり、日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)、日本観光協会などとともに実行委員会をつくり、開いた。観光庁も観光立国教育賞の選考に加わるなど後援団体として積極的に支援した。大会テーマは「郷土を愛する心を育てる観光立国教育」。

 観光庁の役割や進める観光施策について記念講演を行った本保芳明・観光庁長官は、冒頭、「東京以外の場所に観光にかかわる産学官の主要メンバーが一堂に会したのは、観光立国教育の成果に対する賛辞と興味関心の高さによるもの」と述べ、多くの教諭が観光をテーマにした授業を実践し、郷土愛の醸成などに成果を上げていることを評価した。

 また大会では向山洋一・TOSS代表、川勝平太・静岡文化芸術大学学長、中村徹・日本観光協会会長、金井耿・JATA会長が、それぞれの立場から観光立国教育についての提言を行った。

 このうち向山代表は、「自分の地域の素晴らしさを教えることで、子供の未来を一緒になって作るのが観光立国教育」とその重要性を訴えた。このほか中村会長は、同協会が推進するボランティアガイドへの児童生徒の参画を、金井会長は観光教育による旅行の価値の国民的コンセンサス向上を提言した。

 観光立国教育の模擬授業では、インターネット上で自由に地図を利用できるソフト「グーグル・アース」や接触式白板「スマート・ボード」を活用した授業が展開された。内容だけでなく、視覚的にも工夫された授業に、参加者が熱心に見入る姿が目立った。

 本大会の副実行委員長で、模擬授業も行った谷和樹・玉川大学教職大学院准教授は、「観光立国教育の実現には、既存のカリキュラムを変化させる必要があるなど難しい問題もあるが、TOSSの活動が産官を巻き込んだものにつながったことは意義深い。今後は観光関係の大学の研究者らとの連携なども進めていきたい」と今後の活動拡大への意欲を示した。

 第2回の観光立国教育全国大会は、大阪府で開催する方向で調整が進められている。



新型インフル、修学旅行に大きな打撃
 新型インフルエンザの感染者が国内で初めて確認されたことを受け、海外への修学旅行だけでなく、国内の修学旅行にも延期、中止の動きが出ている。文部科学省の「新型インフルエンザ対策に関する行動計画」では、現在のような状況下に対しては、国内修学旅行に対する自粛要請などは定められていないが、安全確保を理由に修学旅行の中止を決めた学校もある。延期、中止が拡大すれば、旅行会社や観光地への影響は深刻。危機感を強める観光業界では、関係機関に冷静、的確な対応を求めるアピールを出す準備を進めている。

 文科省は、海外への修学旅行や語学研修の延期、中止について全国の実態調査を進めているが、現在のところ、国内の修学旅行などの動向に関する調査の予定はないとしている。しかし、一部地域ではすでに延期、中止の動きが出ている。

 徳島県の徳島市教育委員会は12日までに、県教委からの修学旅行の実施に関する通達を踏まえ、5〜6月に計画されていた31の全市立小学校の京阪神方面への修学旅行の中止を決めた。同時期に予定されていた中学校1校、市立高校1校の修学旅行も中止。「児童生徒の安全を最優先に考えた。行き先の問題ではない。他の時期に実施することを念頭に状況を見極めたい」(市教委)。

 カナダでの語学研修から帰国した高校生らに感染が9日に確認されたが、水際での発見のため、政府が対策を強化する「国内発生」にはあたらない。文科省の行動計画でも、国内が感染拡大期に入るまでの段階には、国内の修学旅行に自粛を指導する明確な規定はない。

 5〜6月は春の修学旅行シーズンにあたるだけに、旅行会社らの危機感は強い。「国内の修学旅行の延期や中止を過剰反応とは言い切れないが、適正な対応を呼びかける必要があるのではないか。何らかの対応をとらないと、観光業界は大打撃を受けることになる」と旅行会社の担当者は顔を曇らせる。

 こうした動きを踏まえ、旅行業団体や宿泊団体など17団体で組織する観光関係団体会長連絡会議(議長=舩山龍二・日本ツーリズム産業団体連合会会長)は12日、修学旅行が適正に実施されるよう、関係機関に向けた緊急アピールをまとめた。

 また、日本旅行業協会は12日、国内旅行、海外旅行など関係委員会の横断的な組織として、新型インフルエンザ問題に関する連絡会議の設置を決めた。関係機関と連携し、対策を講じていく。

 一方、観光庁でも、国内修学旅行の延期、中止などの状況について情報収集に努めているほか、文科省との情報交換などを深める考えだ。



観光団体、修旅の延期や中止で緊急アピール
 新型インフルエンザの影響で海外のみならず、国内の修学旅行についても延期や中止の動きが出ていることを憂慮し、観光関係17団体で組織する観光関係団体会長連絡会議(議長・舩山龍二日本ツーリズム産業団体連合会=TIJ=会長)が採択する予定の「新型インフルエンザの教育旅行への影響に関する緊急アピール」の内容が12日、明らかになった。

 国内で新型インフルエンザ感染者が確認されたことに伴い、海外への教育旅行の実施延期や中止する学校が出ているが、アピールは「最近では国内の教育旅行についても実施延期や中止を要請する動きが相次いでいる」と懸念を表明。「学生生活に置ける記念すべき事業であるのみならず、幅広い視野の涵養や交流を通した相互理解の促進など、学校内だけでは体験できない有形無形の教育効果を生む」と教育旅行の意義を改めて強調した。

 その上で「実施延期や中止という各地での対応は、青少年の交流機会の著しい減少が懸念されるため、いま一度教育旅行実施の効果や意義についてご認識いただきたい」と呼びかけ、教育関係者に対し、「状況の見極めや適切な指導を望む」ことを求めている。

 新型インフルエンザに対する教育委員会の対応に旅行会社などは苦慮しており、今後、この動きは広がる恐れもある。そうなれば観光業界に大きな打撃を与えると判断、同連絡会議の迅速な対応となった。

 17団体は次の通り(順不同)。  国際観光施設協会▽国際観光日本レストラン協会▽国際観光旅館連盟▽ジャパニーズ・イン・グループ▽全国旅行業協会▽日本温泉協会▽日本海外ツアーオペレーター協会▽日本観光協会▽日本観光旅館連盟▽日本コンベンション事業協会▽日本添乗サービス協会▽日本観光通訳協会▽日本ナショナルトラスト協会▽日本ホテル協会▽日本旅行業協会▽日本政府観光局(JNTO)▽TIJ



厚労省、ホテル業の職業能力評価基準を改訂
 厚生労働省は4月30日、「ホテル業」の職業能力評価基準を改訂した。中央職業能力開発協会(JAVADA)が、日本ホテル協会(中村裕会長)、ホテル業界OBなどで構成するNPOシニアマイスターネットワーク(作古貞義理事長)と連携しながら、基準作定普及委員会(座長=岡本伸之帝京大学教授)を設置の上、内容を再検討。04年9月に公表した基準を改訂した。今回新たに(1)モデル評価シート(2)判定目安表(評価ガイドライン)(3)モデルカリキュラム──を設けた。

 今回の改訂で、厚労省の職業訓練支援制度「ジョブ・カード制度」のホテル業界への普及を加速する。

 ジョブカードとは、職務経歴、学習歴・訓練歴、免許・資格取得、キャリアシートなどの各用紙からなるファイルのこと。キャリアコンサルタントと呼ばれる有資格相談員が記載内容の確認作業を行う。いわば職務経歴と遂行能力の公的証明書。

 新基準ではホテル業の職種を「宿泊」「レストラン」「宴会」「営業・マーケティング」「施設管理」「環境対策」「危機管理」「経営戦略」の8つに分類。それぞれについてレベル1(スタッフ)、レベル2(シニアスタッフ)、レベル3(スペシャリスト・マネージャー)、レベル4(シニアマネージャー)の5段階を設定した。ホテル業界は人材の流動性が比較的高い業界だが、人のつながりでの転職が多く、人材を客観的に評価する統一基準が04年までなかった。「旅館業」には現在、職業能力評価基準は存在しない。このためJAVADAは最短で2年後の完成を目途に検討に入った。



補正予算案、観光庁分は19億円計上
 政府が経済対策などを盛り込んだ2009年度補正予算案に、観光庁分として19億2400万円が計上された。観光庁当初予算の各種施策に充てる事業費の約半分に相当する大型の補正予算。中国への個人観光査証(ビザ)の発給開始に合わせた集中プロモーションなどに予算を付けた。

 訪日中国人に対する個人観光ビザ制度創設に伴うプロモーションには3億9700万円。ビザ発給には個人年収25万元以上という要件を設けていることから、富裕層に集中して個人旅行の魅力をPRする。

 個人観光ビザは北京、上海、広州の居住者を対象に今年7月から発給が始まるため、観光庁では、事前に誘客宣伝を強化し、訪日につなげたい考え。また、発給対象の広州市には、日本政府観光局の海外宣伝事務所がないため、臨時のプロモーション拠点の整備に予算を充てる予定。

 インバウンド全般としては、「ダイレクト・プロモーションのための基盤整備」として9億2700万円を計上した。日本に関心を持つ層の囲い込みに向けたプロモーションを重点12市場で展開するほか、消費者応募型の懸賞付きキャンペーンの実施などを通じて、マーケティングなどに活用できる消費者データベースを整備する。

 このほか、交通機関や観光地の案内表示の多言語化に向けたモデル事業を実施するために5億5千万円。観光産業の新たなビジネスモデルづくりを支援するイノベーション促進事業には、当初予算の1700万円に加え、5千万円を追加した。




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