インバウンドにかかわる支援サービスを展開している日本コンベンションサービス(=JCS、近浪弘武社長)はこのほど、「JCSインバウンド・ツーリズム研究所」を設立した。インバウンドのマーケティングや観光地の海外プロモーションのあり方について研究し、時代に対応した新手法を確立する。研究成果は地域や産業界に対する提言などの形で発信。インバウンド振興のためのシンクタンクとして機能させる考えだ。
JCSは、昨年秋の世界的な金融危機以降、低迷が続いている訪日市場の現状、また、政府が見据える外客2千万人の目標を踏まえ、インバウンドの発展には、「明確な戦略と効果的なマーケティングを継続的に推進し、日本の価値を向上させることが喫緊の課題」と指摘。そのためマーケティング手法などを研究する専門部署を設けた。
新たなマーケティング手法の必要性について、同研究所の広江真所長は「旅行博への出展、旅行会社へのセールスといった従来通りのプロモーション手法だけでは、FIT(外国人個人旅行)などの多様な市場をカバーできず、経済情勢が回復しても、さらなるインバウンドの発展には限界がある。理論化された手法を確立する必要がある」と語る。
研究所では、政府や地方自治体、団体・企業などの訪日プロモーション事業を支援してきたJCSのノウハウを生かして研究を進める。学術的な分野の研究では大学などとの連携も視野に入れている。研究成果はウェブサイト(
http://www.inboundlab.jp/)やセミナーなどを通じて幅広く発信していく。
研究所の人員は所長を含めて8人。研究所のメンバーは研究業務だけでなく、地域や企業を顧客としたJCSのインバウンドマーケティングに関する支援業務を兼務している。研究成果を理論的な提言にとどめず、具体的な事業として実践する態勢も併せ持つ。
研究所では、マーケティング手法やプロモーション手法などの研究のほか、外国人旅行者の受け入れ態勢についても、IT技術を活用したナビゲーションシステムや接遇システムの開発などの研究を進める。
◆日本コンベンションサービス
1967年設立。本社は東京・霞が関。国際会議の誘致・開催支援や企画運営、通訳・翻訳サービスの提供、人材派遣などを中心に、国や地方自治体、企業などのインバウンド事業を支援する業務を手がける。