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ビジネス ■第2527号《2009年8月22日(土)発行》  

旅館・ホテルの数字、春季はすべて上昇 日本公庫調べ
 日本政策金融公庫は12日、旅館・ホテルなど生活衛生関係営業を対象に四半期ごとに行っている景気動向等調査の、今年6月調査分の結果を公表した。それによると、今年4〜6月期のホテル・旅館の売上、採算、業況の各DIは前期比ですべて上昇した。全業種計もすべて上昇した。ただ、前年同期を大幅に下回っており、同公庫では「景気後退による消費マインドの低迷が経営に深刻な影響を及ぼしており、生活衛生関係営業の景況は厳しさが続いている」としている。

 調査は6月上旬、ホテル・旅館業ほか、飲食業、理容業、クリーニング業など生活衛生関係営業3220企業に個別訪問面接方式で行った。このうちホテル・旅館は208企業に聞いた。

 前年同期比で売上が増加したとする企業割合から、減少したとする企業割合を引いた売上DIは、ホテル・旅館がマイナス50.2。前期(今年1〜3月期)のマイナス56.0から5.8ポイント上昇したが、前年同期(昨年4〜6月期)のマイナス28.4からは21.8ポイントの下落となった。

 全業種の売上DIはマイナス46.2で、前期比6.6ポイント上昇、前年同期比11.8ポイント下降。

 当該期が黒字の企業割合から赤字の企業割合を引いた採算DIは、ホテル・旅館がマイナス41.8で、前期のマイナス42.0から0.2ポイント上昇とほぼ横ばい。ただ、前年同期のマイナス20.5に対しては21.3ポイントの下落となった。

 全業種の採算DIはマイナス18.0で、前期比9.4ポイント上昇、前年同月比6.2ポイント下落。

 前期比で業況が好転したとする企業割合から悪化したとする企業割合を引いた業況DIは、ホテル・旅館がマイナス55.3。前期のマイナス65.8から10.5ポイント上回ったが、前年同期のマイナス23.7からは31.6ポイントの大幅な下落となった。

 全業種の業況DIはマイナス42.5で、前期比19.2ポイントの大幅な上昇。ただ、前年同期比では9.5ポイントの下落となっている。

 ホテル・旅館で特徴的な業況判断理由は次の通り。

 今期・好転(高知県)=新型インフルエンザの影響を心配していたがそれほどでもなかった。むしろ高速道路の千円効果が大きかった。客足を伸ばすことができた。観光業界は大歓迎である。利用客は増大したが客単価は低下傾向にあり、その対応が課題である。

 今期・悪化(山形県)=景気が悪化している中、山形市全体での客数が減少しているにもかかわらず、中央資本のホテルが乱立し、客単価の値下げ競争(特にネット利用)により、地元資本のホテル経営は悪化の一途をたどっている。

 来期見通し・好転(岩手県)=昨年は、宮城、岩手内陸地震に見舞われ大きな影響を受け、県内の各地で大幅な売上の減少となり、経営の根幹を大きく揺すぶられた1年であった。今年度になってからは徐々に客足の回復も見られており、これからは各種のイベント、祭り、全国的会議開催の会場等により一層の回復基調になる見込みである。高速道路の割引効果も大きく売上アップに寄与している。

 来期見通し・悪化(宮崎県)=極端にお客さんが減少した。宿泊の予約が極めて少なく増加の兆しが見えない。先行き不安である。



東京五輪で観光需要は2600億円
 日本ホテル協会(中村裕会長)は4、5日の2日間、「第27回トップセミナー」をザ・プリンスパークタワー東京で開いた。会員ホテルの経営幹部28人が参加した。初日の第1講座「2016年オリンピック東京招致と大会の開催効果(宿泊・観光需要)」では、東京都東京オリンピック・パラリンピック誘致本部の村西紀章招致推進部副参事が、これまでの誘致活動の経緯や開催都市決定までのスケジュール、東京オリンピック開催によって観光業界にもたらされる経済効果などについて解説した。

 2016年夏期オリンピック大会の立候補都市は、東京、シカゴ(米)、マドリード(スペイン)、リオデジャネイロ(ブラジル)の4都市。10月2日にデンマークの首都コペンハーゲンで開かれるIOC総会で開催都市を決定し、同日18時頃(日本時刻は3日深夜)に発表される。

 IOC(国際オリンピック委員会)は世界中から選ばれた107人の委員で構成。開催都市はこの107人による投票で決まる。委員には元オリンピック選手が多いという。

 村西氏は「オリンピック招致には最高の計画とロビー活動が必要」で「東京には大いにチャンスがある」と話した。理由として(1)競技会場の配置計画が東京・有明地区を中心とする半径8キロメートル圏内に納まる4都市の中で最もコンパクトな設計で、IOCが求める環境への配慮、選手の移動負担の軽減と輸送の効率化に合致していること(2)既存ホテル数が4都市の中で突出して多く、オリンピック開催時に毎回問題となる客室数不足の懸念が最も少ないこと──などを挙げた。

 観光業界にもたらされる経済効果については、宿泊・観光需要で約2600億円が期待できるとした。内容は、大会約1カ前から各国選手団が全国各地で行う事前調整キャンプ(合宿)、大会期間中の宿泊需要、買い物、飲食需要など。

 7月29日から8月14日の大会期間中の延べ宿泊需要を海外観客23・6万人、国内観客95・6万人の合計約120万人と試算。IOC委員、IF(国際競技連盟)、NOC(各国オリンピック委員)、スポンサー、メディアなどの大会関係者分だけで都心に1日4万室が必要で、既に279ホテルと4万5131室の提供契約を結んだという。

 同セミナーでは2日間で6講座を開いた。残り5講座のプログラム内容は「新型インフルエンザ・パンデミック対応の実例〜ホテルでの対応策と行政との連携」(東京都総務局総合防災部・齋藤實課長、ロイヤルパークホテル・南安常務、シェラトン都ホテル大阪・市谷敏総支配人)、「企業トップの危機管理」(NPO広報駆け込み寺・三隅説夫代表)、「労働者派遣・紹介・請負の留意点及び法改正の動向〜人件費のコストパフォーマンスと助成金の活用」(全日本サービスクリエーター協会・志水光一理事)、「エコロジー経営を考える〜ハイブリッドホテルプロジェクト」(ホテルニューオータニ・志水肇代表取締役常務総支配人)、「働く人のメンタルヘルス〜自分も会社も気になるストレス1日決算主義の勧め」(横浜労災病院・山本晴義勤労者メンタルヘルスセンター長)。



じゃらんリサーチC、セミナーで事業を紹介

 じゃらんリサーチセンター(JRC、沢登次彦センター長)は同センターの事業や実施した調査の内容を知ってもらおうと6日、東京都内で観光振興セミナーを開いた。各都道府県の東京事務所や観光関連部署の職員など約120人が参加。宿泊旅行調査や父子旅行創造への取り組みなどを説明したほか、今年予定する事業を紹介した。

 セミナーではJRCが毎年実施している国内宿泊旅行市場に関する調査「じゃらん宿泊旅行調査」の結果について、地域別の動向や、食べ物、土産物の都道府県別評価などを中心に解説。また旅の効能に関する調査の結果分析や、観光による過疎地の活性化についての研究成果を披露した。

 このほか、観光協会の実態調査などを行う「次世代の観光協会を考えるプロジェクト」、モバイル端末のGPS機能を使ったゲーム「位置ゲー」利用した旅行需要の創出事業といった今年手掛ける研究の内容を紹介。沢登センター長は「今年も興味を持ってもらえるような調査テーマ、プロジェクトをさまざま実施するので、期待してほしい」と語った。

 セミナーでは毎年、宿泊旅行調査を元に宿泊客の傾向などを都道府県別に分析した資料を自治体関係者に提供していることなどから、多くの自治体の関心を集めている。





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