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トラベル ■第2527号《2009年8月22日(土)発行》
JATA、ニューツーリズム推進へ商品化後押し
長野県飯山市での現地研修。ブナ林のトレッキングを体験した
国内旅行活性化のカギを握るのが、エコツーリズムや産業観光などのニューツーリズム。日本旅行業協会(JATA)は、ニューツーリズム商品の流通促進に乗り出し、旅行会社向けの現地研修を始めた。商品造成や販売の手法などに課題もある新分野だが、地域が開発したプログラムを実際に体験してもらうことで、旅行会社の商品化を後押ししている。
JATAが国内観光振興を目的にニューツーリズムに関する現地研修を実施するのは今年度が初めて。すでに4回実施した。研修先は熊野古道(和歌山県など)、東北(山形県など)、南房総(千葉県)、飯山市(長野県)。いずれの地域もニューツーリズムにかかわる体験・交流型のプログラム整備に力を入れている。
研修先の1つ、飯山市は、民宿が軒を連ねる戸狩・信濃平地区、リゾート地の斑尾高原などがあり、グリーン・エコツーリズムを軸にした通年型観光の確立に取り組んでいる地域だ。この10年間でスキー客への依存からの転換を図り、ブナ林や里山を巡るトレッキング、農村での農業体験などのプログラムを充実させている。テーマ別に地域を歩く「歩こさいいやま」と題した16コースも整備した。
7月31日から1泊2日で行われた飯山研修には、旅行会社の担当者ら16人が参加。中高年らの集客に成果を上げているトレッキングをガイド付きで体験した。登山ツアーに強みを持つアルパインツアーサービス営業部、竹森壮孝氏からは「ガイドやアクセスなど受け入れ態勢も整っている。登山愛好家は高齢化が進み、滞在型で無理なく楽しめるトレッキングツアーとして商品化できそうだ」との声が上がった。
このほか参加者からは、心身の癒しにつながるプログラムを盛り込んだ森林セラピー、野菜の収穫などの農業体験、飯山で撮影が行われた映画「阿弥陀堂だより」のロケ地巡りなどに高い関心が寄せられた。
ニューツーリズムの浸透に向けて、旅行会社の送客に対する地域の期待は大きい。飯山市の場合、飯山市観光協会が第三種旅行業を取得し、着地型旅行商品を販売できるが、広範な販売チャネルを持つ旅行会社との連携を特に重視している。5年後に北陸新幹線「飯山駅」の開業を控え、都市圏からの集客拡大が課題となっているためだ。
飯山の自然や農業を生かした体験型プログラムを提供する宿泊施設「なべくら高原・森の家」の木村宏支配人(飯山市振興公社)は「旅行会社には単なる時間消費ではなく、地域の魅力が伝わり、旅行者の満足度向上につながるような商品造成を期待している。地元のガイドを十分に活用した商品などを検討してもらいたい」と話した。
ニューツーリズム商品の流通促進には課題もある。旅行目的に明確なテーマを持たせることから、商品としては小ロット、多品種となりやすい。商品づくりや受け入れに多数の関係者がかかわるため、旅行代金も高くなりがちだ。マスの流通に主眼を置く旅行会社には、商品造成や販売戦略に新たな手法の確立が求められている。
飯山研修に参加したJATA国内旅行委員会の藤野茂副委員長(日本旅行取締役常務執行役員)は「旅行会社は販売実績を上げなければならいが、ニューツーリズムを大きなウネリとするために、ある程度時間をかけて商品を育てる必要がある。地域と連携する姿勢も重要だ」と語った。
JATAは、今後も現地研修を開催する予定で、継続的にニューツーリズムの定着に取り組む考えだ。
KNT、中計の目標値を下方修正
近畿日本ツーリスト(KNT)は経済不況や新型インフルエンザ流行などによる経営環境の悪化を受け、11日、昨年11月発表の中期経営計画(09〜11年)の修正を発表した。計画期間を10〜12年に改めたうえで、各年の財務目標を下方修正した。今後、ウェブ販売の強化や地方での団体旅行事業部門の改組のほか、不採算部門の撤廃や希望退職による要員整理などで販売構造と費用構造の刷新を加速させ、目標達成を目指す。
新たに12年度の連結業績目標を設定した。経常利益41億円、営業収益703億円、営業利益37億円を目指す。また目標値の修正に伴い、販売面と費用面の革新に向けた重点施策を打ち出した。
販売面のうち個人旅行事業では、ウェブ販売の強化を図り、12年度の売上高400億円(09年目標120億円)の達成を目指す。具体的には、専用商品開発部署の設置やウェブ専用のメイト・ホリデイ商品の開発を行う。また30年来使用してきた販売系基幹システムに替わるシステムの開発に約75億円を投入。11年から稼動し、他社システムと円滑に提携、結合ができるようにする。
団体旅行事業については、各地域の実情に即した営業を強化。組織や拠点の見直しのほか、注力する市場の絞り込みを地域ごとに行う。特に北海道、九州地区については分社し、それぞれ売上高70億円、80億円規模の子会社とする方針。
グローバル事業では、アジア、中国発旅行のビジネスを強化するため、韓国、タイ、インド、香港、台湾に現地拠点を設置する。 費用面の施策ではパンフレットの部数、種類の見直しを行うほか、全国で10カ所程度、赤字店舗を廃止。また今年度内に200人規模の希望退職者を募るなどして営業外要員を中心に削減し、今年3月段階で4千人の社員を13年3月までに3500人程度に絞る。
昨年11月に発表した中期経営計画には、経済不況の影響を織り込んでいなかったため、「早期の(中計)見直しを求める声もあり検討していた」(加藤真人・経営戦略本部部長)。経済不況に加え新型インフルエンザの流行などの特殊要因も重なったため、これらの影響も踏まえたうえで修正版を発表した。
日旅の上半期販売額、前年比22%減
日本旅行の今年上半期(1〜6月)の販売実績は、総販売高が前年同期比22.0%減の1615億1686万円と大きく落ち込んだ。特に海外旅行が同35.2%減、438億626万円と3割台の減少。国内旅行、国際旅行もそれぞれ15.5%減、1143億3018万円、18.0%減、32億4310万円と落ち込んだ。昨年後半からのサブプライム問題に続く新型インフルエンザの発生が大きく影響した形だ。
国内は団体旅行(14.5%減、259億5886万円)、企画商品(7.0%減、372億9018万円)、JR、航空、一般宿泊などの個人・ビジネス旅行(21.2%減、510億8113万円)など、すべての部門が前年割れ。
海外も団体旅行(38.8%減、74億6395万円)、企画商品(17.5%減、249億379万円)、企画商品以外の個人旅行(56.8%減、91億8194万円)など、すべての部門で前年を大きく下回った。
旅行は価格よりも内容重視
旅行で「価格」「内容」のどちらを重視するのかを聞いたアンケートをJTBが実施したところ、「価格」が43%、「内容」が57%と、内容を重視する人の方が多かった。20代、30代は「価格重視派」が勝っているが、40代以上になると「内容重視派」が半数を超える。
内容重視派は、20代以下で44%、30代でも48%と半数に満たないが、40代で56%と逆転、50代で63%、60代以上では65%とおよそ3人に2人の割合を占める。年代が上がるにつれて割合が高くなる傾向にあった。
旅行形態別での内容重視派は、「カップル・夫婦旅行」が62%と最も高く、「記念日旅行はせっかくの機会なので価格は惜しみたくない」などの声が上がる。「友人との旅行」は57%、「家族旅行」は56%。一方、「ひとり旅」は42%で、価格重視派が58%と勝った。「旅の目的を達成させることが優先で、旅行手段の快適性や利便性はあまり考えない」といった回答があった。
内容重視派がこだわる点はというと、「宿泊施設」46%、「観光個所」23%、「食事」16%、「宿泊地」9%が上位。「日常から解放されて日ごろの疲れを癒す、また、心地よく過ごせる場所を求めて、宿泊施設にかける期待は高い」とJTBでは見ている。
はとバス、初のゴミ拾いツアー実施
はとバスは17日、群馬県の協力を得て、10〜11月にゴミ拾い日帰りバスツアーを実施すると発表した。「ゴミ拾いなどエコ活動を取り入れたツアーを行うのは初めて」という。25日から予約を受け付け、計13回運行する。
日本百名山の1つ、武尊山で、山道をガイドの案内で歩きながら、自然を楽しむがてらゴミ拾いする。「美化活動を、花の観賞や温泉浴など観光バスツアーとして組み込むことで無理のないエコ活動をしてもらう」と同社。バスもハイブリッド車を使用し、環境に配慮する。
ツアー代金は6980円からで、子どもは200円引きとなる。集客目標は400人。
主要旅行業62社6月実績
観光庁が11日に発表した今年6月の主要旅行業62社の旅行取扱状況(速報)は、総取扱額が前年同月比26.5%減の4005億8839万円だった。11カ月連続で前年実績を下回った。内訳は、国内旅行が同14.8%減の2739億734万円で、8カ月連続の前年割れ。海外旅行は同43.9%減の1227億6910万円、外国人旅行は同21.2%減の39億1195万円。
国内旅行は取り扱い57社中、エイチ・アイ・エス、郵船トラベル、エヌオーイーJTBグローバルマーケティング&トラベルの4社のみ前年比増。
海外旅行は13カ月連続で前年実績を割り込んだ。取り扱い60社中前年を超えたのは、JTBグローバルマーケティング&トラベルだけだった。
外国人旅行は10カ月連続前年割れ。JTBグループ各社が堅調だったほか、京王観光、沖縄ツーリスト、南海国際旅行が前年を超えた。
募集型企画旅行の状況は、総取扱額が同25.1%減の945億5290万円だった。このうち国内旅行は同13.5%減の590億7801万円、海外旅行は同39.0%減の352億3062万円、外国人旅行は同8.5%減の2億4427万円。取扱人員は同1.3%増の299万1093人。国内は同4.6%増の268万2086人。海外、外国人は前年割れした。
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