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トラベル ■第2553号《2010年3月13日(土)発行》  

旅行業団体、上海万博を視察
林幹雄・衆院議員、二階・ANTA会長、祝・中国国家観光局副局長(左から)

 日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)の関係者をはじめとする日本の旅行業関係者とマスコミ関係者約350人は3〜6日、中国国家観光局と上海市旅游局、江蘇省旅游局の招きで視察旅行「2010上海万博プレビュー」を行い、万博会場などを視察した。このうち視察団名誉団長の二階俊博・ANTA会長(衆院議員)は3日、上海市内で祝善忠・中国国家観光局副局長、周太●(●の漢字は、丹に彡〔さん〕づくり)・上海市政治協商会議副主席とそれぞれ会談し、万博への日本人100万人の送客について強い決意を示した上で、双方向交流の重要性を強調した。

 二階会長は2月、日本で行われた上海万博の「キックオフ式」で、中国側の日本人送客100万人の要請に応じることを明言している。これについて二階会長は「非常に重い約束だ」と述べ、達成に向け旅行業界挙げて取り組むことを改めて示した。

 また二階会長は万博期間中に国宝「鑑真和尚坐像」と、「弘法大師坐像」が上海博物館に展示されることに触れ、「両国の人が上海で、1千年以上前に海を渡って日中の懸け橋となった2人を目にできることは、両国交流の1つのエポックとなる」と強調。「観光はのこぎりのようなもの。お互いに行き来するほど関係は深くなり、観光も盛り上がる」とも話し、万博を契機とした相互交流の深化への期待感を示した。

 これに対し祝副局長は「日本の100万人送客の約束に心から感謝したい」と述べたほか、上海万博での日本のPRが訪日中国人数拡大につながると指摘し万博のPRなどへの協力を求めた。

 同日行われた上海万博に関するセミナーでは、万博の会場や展示内容が説明された。日本側から登壇した視察団団長の柴田耕介・JATA理事長は、チケット販売についての情報不足などの課題を指摘したほか、送客への意欲を語った。

 視察団は4日以降、上海万博会場内のプレスセンターの内覧や、中国館、日本館の車窓見学を実施。上海に近い蘇州や揚州も視察し、万博関連ツアーの造成に向けた情報収集を行った。



旅行各社、春節需要取り込みに課題も
個人客の受け付けも始まったが…
(昨年7月の個人ビザ客歓迎式)

 経済の低迷に苦しむ日本の一方で、著しい経済発展を遂げている中国。富裕層を中心に消費意欲が旺盛だ。旅行への興味も強く、訪日中国人は増加傾向。中でも1、2月は、中旬に旧歴の正月「春節」があり、多くの中国人観光客が見込める。特に今年は、後退気味の国内需要に代わるものとしての期待感や、昨年7月の個人ビザ解禁などから、各旅行会社が需要取り込みを狙ったが、取り扱い拡大にはまだまだ研究が必要なようだ。

 中国では春節から3日間を休日としていることから、その前後1カ月に旅行をする人が多い。今年は春節が2月14日だったことから、1月中旬から3月中旬ごろまでがピーク期とみられる。

 1〜2月の取り扱い状況について「昨年よりは期待できる」というのはANAセールス。団体旅行の取扱人数は対前年比42%増の1725人と大きく伸ばしている。昨年は原因不明のキャンセルが多発したため、3月の訪日中国人旅行の地取り扱いが予想よりも伸びなかったが、「今年は不安要因も特に見当たらず、このペースであれば昨年実績を大きく超えられるのでは」と話す。

 ANAセールス、KNTによると、人気の方面は、北海道と東京。北海道は、昨年中国で公開された映画「非誠勿擾」の人気で中国人の関心が高まっていることなどが背景。「特にスキー商品が売れている」(ANAセールス)。また東京は、見どころやショッピングスポットの多さから根強い人気があるという。

 「正確な取り扱い状況の集計はこれから」と話すのは日本旅行。先行受注の状況から「期待ほどの伸びはない」。前年並みの数字を見込んでいる。KNTは1千人強の取り扱い状況。同社の場合は春節需要と関連の薄い訪日教育旅行も含んでおり「春節の伸びはつかみにくい」という。

 昨年は取り扱えなかった個人旅行。富裕層が対象のため、各社とも取り扱い拡大を図りたいところだが、「思ったよりは伸びていない」(ANAセールス)のが現状のよう。

 JTBも春節の個人旅行では苦戦した。訪日外国人パッケージツアー「サンライズツアー」での新たな試みとして、中国語で案内する横浜発着の富士、箱根への日帰りツアーを2月15、16日に設定。中華街にいる親戚に訪問する人を見込んで、発着場所を中華街に近いホテルニューグランドにする工夫もしたが、催行は1日のみ。参加者もわずか。「告知期間の短さや、来日後のツアー申し込みに慣れていないことが原因」と同社。とはいえ「中国人の個人旅行者が今後増加するのは間違いない」として、春節時期に限らず需要の掘り起こしには力を入れていく考えだ。



JTB、90点以上の宿をギフト化
ハードカバーのカタログ(左)とケース(右)

 JTBは、同社宿泊アンケートで高評価の平均90点以上の旅館・ホテル100軒を厳選した宿泊ギフトを4月1日から開始する。「特別な日に、贈るのはモノではなく、くつろぎという贅沢」をコンセプトにしている。

 ギフト名称は「JTBハーモニフト」で、「ハーモニー」と「ギフト」との造語。価格は2人1室7万円(税込み)。休前日利用の追加料金はなく、平日利用では部屋や料理のグレードアップ、館内利用券のプレゼントなどのサービスを付ける。

 有効期間は販売翌日から1年間。贈られた側の宿泊スケジュールが合わない場合には宿泊の代わりに北海道、東北、九州などの名産品や旬の食材の取り寄せができる。

 全国の店舗や電話、FAX、インターネットで販売する。10年度に10億円、14年度には20億円の販売を見込む。



ETC割引対抗へ、JRとフェリー会社が連携
 JR九州とJR西日本、名門大洋フェリーは共同で、旅行商品「フェリー新幹線で行く大阪満喫スペシャル」(0泊2日)を発売した。景気の低迷や高速道路のETC割引で苦戦している3社が連携、0泊で往路を船中泊にし、復路は新幹線を利用、USJと大阪観光が楽しめる旅行商品とした。

 設定期間は2月10日から3月30日までの2日間。発地は九州の小倉、博多、中津、大分、別府、久留米、大牟田、佐賀、佐世保、熊本の各駅。名門太平洋フェリー2等、山陽新幹線「のぞみ」、大阪ミニぐるりんパス、各駅から小倉までのJR特急の組み合わせで、料金は小倉発の場合、大人1万4800円、子ども8800円。

 「大阪ミニぐるりんパス」は大阪地区のJR線が乗り放題となるほか、USJ(13時以降限定)や海遊館、大阪城天守閣、大阪港観光船などが利用できるパスポートタイプのきっぷ。



KNT、「桜田門外ノ変」ロケ地見学ツアー発売
 KNTはこのほど、今年10月公開予定の映画「桜田門外ノ変」のオープンセット・ロケ地を先行見学するオフィシャルツアーを発売した。映画の支援団体の協力を受け、茨城県への観光誘客促進のために企画、販売するもの。映画公開前から毎月1本程度ツアーを実施していくことで、地元と映画の両方を盛り上げる。

 「水戸藩開藩400年記念『桜田門外ノ変』映画化支援の会」(狩野安代表)の支援の協力で実現した。

 ツアーでは、昼食には映画ロケ時に俳優やスタップが食べたものと同じ内容の弁当を用意するほか、関係者から説明を受けたり、ロケ中のエピソードを聞いたりしながらオープンセット内を見学できる。日本三名園の偕楽園で開催の「偕楽園梅まつり」や水戸徳川家ゆかりの品を展示する徳川博物館の見学も盛り込んだ。

 出発日は27日。旅行代金は大人7100円、小中学生6500円。

 映画に関わるツアーにより、3月から映画終了の来年2月までに、茨城県へ5千人の送客を目指す。

 同社では今後も、映画のオープンセットやロケ地見学ツアーのほか、地域の特性や隠れた観光素材を盛り込んだツアーやイベントを実施する。



玉川大、若者の海旅動向テーマにシンポジウム
観光業界のプロと学生が意見交換

 玉川大学経営学部は7日、東京都町田市の同大キャンパスで入場無料の公開シンポジウム「若者が望む海外旅行を考える」を開いた。観光庁の「若年層アウトバウンド促進事業」の連携事業として実施。同大経営学部観光経営学科の学生らも参加し、観光業界のプロと学生が意見交換をした。

 観光庁の田端浩観光地域振興部長の特別講演「観光立国の実現に向けた取り組みについて」に続き、国連世界観光機関(UNWTO)アジア太平洋センターの本田勇一郎代表が基調講演「世界の若者と日本の若者の海外旅行の比較」で登壇。

 「世界人口が64億5千万人の05年推計で全世界旅行到達者数は8億人。そのうち15歳から29歳までユース旅行者到達数は1億9300万人で24%を占める」と市場の大きさを解説した。また「同年の全世界のユース人口16億7800万人に占めるユース旅行者の割合は11.5%。アジア太平洋(ユース人口9億7400万人)では4%、欧州(ユース人口1億9400万人)では52%」と話した。

 神澤隆・同大経営学部観光経営学科教授は「玉川大学経営学部学生の海外旅行の実態と志向」の調査結果を紹介。また3組6人の学生が「学生の視点による海外体験報告と魅力的な旅の提案」を発表した。

 折戸晴雄・同大経営学部観光経営学科教授をコーディネーターに開いたシンポジウム「若者の望む海外研修プログラムの実現にむけて」には、パネリストとして木島茂雄ジャルパック副社長、一倉隆ハワイ州観光局代表、西川敏晴ダイヤモンド・ビッグ社「地球の歩き方」取締役会長ら観光のプロ達と、同大観光経営学科3年の笠谷奈津子さん、同2年の宮崎恵さん、同1年の川合環さんの3人が参加した。

 パネリストらによる「若者はインターネットで得られる情報で満足してしまい海外旅行に出かけないと言われているがどう思うか」との質問に対して3人は「現地に足を運ぶのが一番。気候風土は肌で感じなければ分からない」(川合さん)、「小学生のころからインターネットで海外旅行情報に親しみ、逆に触発されてきた。ネット情報が海外旅行の阻害要因だとは思わない」(宮崎さん)、「海外旅行先ではテレビやインターネットでは決して体験することのできない現地の生活に触れることができる」とそれぞれ答えた。

 また「旅行を申し込む窓口を決める要因は何か」との問いには「友人に聞く。また有名な旅行会社の方が安全で(親も)安心すると思って決める」(川合さん)、「インターネットで情報収集をしてから旅行会社の窓口に申し込みに行く。直接相談してから決める」(宮崎さん)と回答。

 「パッケージツアーに不満はあるか」に対しては「最少催行人数が決められていてツアーが不成立になることがある」(宮崎さん)、「自分で旅行計画を立てる楽しさが味わえない」(笠谷さん)などと話した。



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