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観光行政 ■第2555号《2010年3月27日(土)発行》  

国際観光ホテル整備法、登録基準は現状維持の方向
第5回の検討会(19日)

 訪日外国人旅行者を2千万人、3千万人にする目標を踏まえた受け入れ環境整備として、宿泊施設のあり方を検討してきた観光庁の検討会(座長=平尾彰士・立教大学観光部特任教授)は19日、5回にわたる検討結果を提言としてまとめた。法改正を含め今後の運用が注目される国際観光ホテル整備法の登録制度については、一定のサービス水準を保証しているとして「登録基準は基本的に現状を維持」するとの方向性を示した。設備などの点で登録基準には達しないが、受け入れに意欲的な宿泊施設に対しては、業界団体の認定による支援制度を構築する案などを挙げた。

 検討会の名称は、「訪日外国人旅行者数のさらなる拡大に対応した宿泊施設のあり方に関する検討会」。旅館やホテル、旅行業などの業界団体、地方自治体、関係省庁の担当者のほか、有識者らが委員を務め、昨年9月から議論してきた。

 国際観光ホテル整備法の登録制度をめぐっては、総務省が09年3月に政策評価の中で、外客の受け入れ促進への実効性を疑問視し、改善を勧告した経緯などがある。検討会の提言では、施行から約60年が経過し、「さまざまな制度的弊害が顕在化」「接遇が不十分な施設も散見」という指摘があると記述した。

 しかし、検討会では、登録制度の枠組みや登録基準は基本的に維持するという結論を出した。外客受け入れを促進するには登録要件を緩和し、多種多様な旅館・ホテルを登録する方向性もあるが、「登録基準をいたずらに引き下げることは旅行者の信頼を損なう恐れもある」と懸念した。

 ただ、登録基準については外客の多様なニーズを踏まえ、接遇などの「ソフト面を中心に登録基準を見直す」ことに言及し、登録制度の「より厳格な運用」を図ることを盛り込んだ。厳格な運用では、外客接遇主任者の未選任、施設変更の未届けなどの事例があることから、監査などの手法だけでなく、定期的な自主点検の励行や手続きの簡素化などを提案した。

 登録施設に対する国の支援制度に関しては、現行法が努力義務に掲げている複数の外国語による案内標識やクレジットカード利用への対応のほか、外国語放送の視聴設備の整備などに向けた支援方策を具体化するとした。また、旅行者への宿泊施設の情報提供について、日本政府観光局(JNTO)を活用する仕組みを構築することを盛り込んだ。

 登録基準を基本的に維持する一方で、外国人の受け入れに意欲的で接遇にも優れているが、施設や設備の点で登録基準に達しない小規模な旅館やゲストハウスなどを制度としていかに支援するかも重視した。

 登録施設以外の宿に対しては、「ソフト面で一定水準を満たす施設を業界団体が認定、登録し、海外に情報発信するような仕組みを構築することも考えられる」と補完的な制度の構築を提案した。国の支援施策も、宿泊施設の特長や役割に応じて検討するとした。

 19日の会合で、検討会委員でもある観光庁の武藤浩次長は「提言を今後の施策に生かしたい。国の支援施策の具体的な内容は、現時点では盛り込まないが、融資制度や税制、補助事業などを含めて予算の概算要求に向けて検討したい」と述べた。

□  □  □  □  □

 登録制度に関しては、政府が掲げる外客3千万人誘致という目標を考えても、法制度の見直しが課題とみられてきたが、検討会の提言は基本的枠組みを維持する内容で、抜本的な法改正などの方向性は示されなかった。「法改正や運用の改善が必要かどうかは、さらに検討していく」(観光庁観光産業課)。

 登録旅館・ホテル数は2918軒(09年12月現在)で、約6万軒ある旅館・ホテルの約5%に過ぎない。また、登録旅館・ホテルには、過去にはさまざまな優遇措置があったが、現行では一部の市町村が適用している地方税の不均一課税など支援施策は限られている。目標年次を定めて外客の受け入れを拡大するには、宿泊施設の質、量の確保が課題だ。登録基準、支援施策のあり方が問われている。



温泉地数は3年連続で減少 環境省調べ
 環境省は23日までに、08年度の温泉利用状況をまとめた。それによると、09年3月末現在の温泉地数(宿泊施設のある場所)は全国で3133カ所、源泉総数は2万8033カ所となり、前年同月時点と比べ、それぞれ6カ所、57カ所減った。温泉地数の減少は3年連続。宿泊施設数、延べ宿泊利用人員も減る中で温泉利用の公衆浴場、いわゆる日帰り温泉施設数は増加の一途をたどっており、8軒に迫る勢いを見せている。

 源泉総数のうち、利用源泉数は1万8871カ所だが、自噴数は4874カ所にすぎず、前年と比べても223カ所減っている。また、湧出量も、自噴は毎分80万338リットル、動力は197万1684リットルとなり、前年と比べ、いずれも減少した。

 宿泊施設数は前年比120軒減の1万4787軒となり、延べ宿泊利用人員も同約320万人減の約1億3268万人となっている。これに対して、日帰り温泉施設数は同54軒増の7913軒に達し、09年度には8千軒を超えるのはほぼ確実な状況だ。

 温泉地数を都道府県別に見ると、もっとも多いのは北海道の254カ所で、次いで長野県(231カ所)、新潟県(150カ所)、青森県(148カ所)、福島県(138カ所)の順。もっとも少ないのは沖縄県で4カ所だった。

 源泉総数は大分県が4788カ所と断トツ。以下、鹿児島県(2824カ所)、北海道(2304カ所)、静岡県(2283カ所)、熊本県(1388カ所)と続き、九州勢の多さが目立つ。



観光庁、スポーツ観光振興へポータルサイト開設
 観光庁はこのほど、スポーツ観光の活性化に向けて関係者の輪を広げ、情報発信につなげていこうと、観光庁のウェブサイト内にポータルサイト「スポ・ツー・ナビ」を開設した。タイトルは、「スポーツ」と「ツーリズム」にちなむ。スポーツの大会や試合の情報に加え、開催地の観光情報や旅行会社のツアー情報なども寄せてもらい、スポーツ観光を盛り上げるサイトにする。

 観光庁は、プロスポーツの観戦などの「観るスポーツ」、ランニングやサイクリングなど参加型の「するスポーツ」、大会運営のボランティアや国際競技大会の誘致などの「支えるスポーツ」などの視点から、国内観光や訪日観光の振興を目指している。幅広い関係者を集め、スポーツ観光振興の連絡会議なども近く発足させる考えだ。

 スポーツ観光の振興に意欲をみせる溝畑宏長官は、ポータルサイトに掲載した19日付メッセージで、「あらゆるスポーツの魅力、発信力に着目し、各競技団体やチームと連携し、スポーツ観光の振興に取り組む」とアピールした。

 すでに観光庁は、2019年に日本でワールドカップが開催されるラグビーの日本ラグビーフットボール協会、外国人の関心が高い柔道の全日本柔道連盟や講道館などと、観光振興への連携について合意している。

 ポータルサイトでは、スポーツ観光を連携して盛り上げるスポーツ団体や大会として、プロ野球の日本野球機構、自動車レースのF1日本グランプリ(鈴鹿サーキット)などのウェブサイトともリンクを張っている。



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