休暇の取得促進や分散化など休暇改革に関心が高まる中、観光庁は、地域ぐるみで「家族の時間づくり」に取り組む実証事業を全国8地域の協力を得てスタートさせる。学校休業の柔軟な設定と企業の有給休暇の取得を促し、親子の休みの一致や余暇活動の活性化につながるかなどを検証する。連休の谷間を学校の休みにして4連休や8連休にし、家族旅行や地域行事への参加を促す試みなどがある。旅行需要の喚起といった経済効果だけにとらわれず、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)などの視点から休暇のあり方を問いかけるのが狙いだ。
実施地域は、東京都荒川区、新潟県妙高市、静岡県島田市、三重県亀山市、京都府京都市、福岡県福岡市と、福井県、山口県の一部。小中学校などの休みを振り替えて、秋の連休やゴールデンウイーク(GW)を大型化する。同時に地域の企業や地元経済団体に有給休暇の取得を呼びかける。
■オフ期に連休
妙高市は、中学校1校、小学校2校で11月22日を休みにし、土・日曜、勤労感謝の日をつなげて4連休にする。発想は斬新だ。3校があるのは妙高高原温泉郷を有する地域で、この時期は紅葉とスキーの観光入り込みの谷間にあたるオフシーズン。観光に関係する事業者らにも休暇取得を呼びかけ、むしろ他の観光地に出かけてもらおうというのだ。
妙高市観光商工課の早津之彦課長は「観光事業者も家族で休暇を取って、他の観光地をみてもらいたい。広域観光にともに取り組む周辺観光地には、妙高から人を集めてみてはと呼びかけるつもりだ。観光地間のパイ(市場)の奪い合いではなく、こうした取り組みを相互に行えれば市場拡大にもつながる」と話す。事業者や住民の理解を得ながら、連休の取得、活用を呼びかける考えだ。
■行事を契機に
島田市は、地域で過ごす時間を考えようという発想だ。1つの中学校区(中学校1校、小学校4校)を対象に10月8日(金曜)を休みにし、体育の日のハッピーマンデーにつなげて4連休にする。同校区では10月第2週の週末に地元の伝統行事「島田大祭」が行われる。もともと前日の金曜日には祭りの準備のため、学校を早く切り上げる子どもも多い。学校を休みにすることで事業所にも休暇の取り方を考えてもらう契機にする。
島田市企画部企画課の矢澤雅則課長は「家族の時間づくりでもあるが、地域で過ごす時間づくりと捉えて取り組みたい。時間または休暇の有効な使い方、地域とのかかわり方を考えることが、ひいては地域の観光振興にもつながるのではないか」と指摘する。地域に推進組織を立ち上げて理解を求めながら進めていく。
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このほかの地域では、山口県の私立、野田学園中学がハッピーマンデーの敬老の日と、秋分の日にまたがる9月19〜26日の期間に8連休を創出する。三重県亀山市は、市内の全公立小中学校で4月30日を休みにして7連休にする。他の実施地域でも具体的な内容を調整中だ。
観光庁では、各地域での広報活動やアンケート調査などを支援し、成果や課題を収集する。「学校の休みに合わせて親の休暇は取りやすくなるのか、連休の過ごし方に変化はあるのかなどを検証したい。地域経済への効果、影響なども検証できれば」(観光庁観光経済担当参事官室)。
政府では祝日法改正により大型連休を地域ごとに設定する分散化案が検討されているが、この実証事業では、家族の時間の過ごし方、地域活動への参加のあり方、生産性向上といった企業の経営改善への効果など、幅広い視点から休暇取得のあり方を検証し、普及策を探っていく。