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観光行政 ■第2561号《2010年5月15日(土)発行》
「2〜3年後に休暇分散」国交省成長戦略会議が素案
国交省成長戦略会議の第12回会合
民間有識者でつくる国土交通省成長戦略会議(座長=長谷川閑史・武田薬品工業社長)はこのほど、国交省に提言する成長戦略の素案を公表した。観光分野では、「将来、観光産業を日本の基幹産業とすることも夢ではない」「特に地方において幅広い雇用が期待できる唯一の分野」と強調。具体的な政策では、国内観光振興に向けた春や秋の連休の地域別分散化、日本政府観光局(JNTO)の充実を通じた訪日誘致プロモーションの強化などを盛り込んだ。5月末に最終報告をまとめ、6月に閣議決定する政府の新成長戦略に反映させたい考えだ。
4月28日に開かれた成長戦略会議の第12回会合には、前原誠司国交相をはじめ政務三役が出席。観光をはじめ航空、海洋、住宅都市、国際・官民連携(建設、運輸、インフラ関連産業)の5分野の戦略案を示した。
観光分野は、劇作家・演出家の平田オリザ氏を座長とする分科会が、観光立国の実現に向けた戦略として、(1)訪日外国人旅行者の誘致戦略(2)観光地の魅力度向上戦略(3)観光立国推進のための基盤整備と国民意識の改革戦略──の3つの柱を挙げた。
■休暇改革
「観光立国推進のための基盤整備と国民意識の改革戦略」の中の休暇取得の分散化促進では、ゴールデンウイークや秋の連休の地域別分散により、ピーク需要を平準化させ、旅行需要を拡大するとともに、観光産業の経営改善や雇用増大につなげることを盛り込んだ。
休暇の分散化に向けて、実証事業や機運醸成に取り組み、祝日法の改正などを経て、2、3年後の実現を目指すよう求めた。課題には国民の合意形成、地域の区割りの手法などを挙げた。
平田座長は「休暇分散化は観光事業者にとっては生産性を向上させる契機となる。日本人の休暇、東アジアの春節(旧正月)、中国の国慶節などがうまく分散すれば、年間を通じて観光にプラスは大きい」と説明した。
年次有給休暇の取得の促進も明記。取得率の目標として、07年12月に策定された政府の「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を基に、2、3年後に60%、おおむね2020年に完全取得という目標を掲げた。実現に向けては、「多少の強制力」を持った施策を検討するように提言した。
■外客3千万人
「訪日外国人旅行者の誘致戦略」では、外客3千万人の実現に向けて、海外プロモーションの実施体制の強化が必要だと訴えた。市場ごとのマーケティングを重視し、現地のニーズに即した効果的な事業を展開するように求めている。
来年度予算への要求を含めて早期実現を目指す政策として、JNTOの予算、人員の充実をはじめ、市場別の目標への達成度に基づく人事更迭を含めた成果主義の導入、現地採用の拡大を提案。事業の迅速な実施に向けて、ビジット・ジャパン・キャンペーン予算のJNTOへの直接投入も検討するよう促した。
このほか2、3年後の実現を目指す政策として、宿泊施設の外国語接遇の向上のための外国人研修員や留学生の活用の拡大、外客3千万人誘致を前提とした航空政策の推進などを挙げた。
■観光地づくり
「観光地の魅力度向上戦略」では、新しい観光アイテムの創造として、医療観光やスポーツ観光、アニメや建築を含めた文化観光、クルーズ観光などの活性化に向けて関係機関の連携を強化するよう促した。カジノについても触れ、青少年への影響やマネーロンダリング対策などに十分配慮しながら、導入の仕組みについて慎重に検討するよう求めた。
観光地づくりでは、法体系の整備や規制緩和、地域特例(特区)の活用などで、実効性のある環境整備を求めたほか、観光関連産業の高度化につながる人材育成や観光系大学をはじめとする観光関係高等教育の充実などを早期に実現すべき政策として挙げた。また、「地域を支える観光産業を活性化するための国の支援のあり方についても改革を検討する」と盛り込んだ。
2、3年後の実現を目指す政策には、政府全体の課題として、各省庁にまたがる観光地づくりの施策を、使途を特定した補助金などではない各地域の判断で使える「一括交付金」化すべきだと提言した。
他方で、観光振興を目的にした観光関係団体についても言及した。観光関係団体の現状について効率的、効果的な取り組みを実施する体制が不十分と指摘。「具体的にどの団体という議論ではない」(平田座長)としながらも、「抜本的な改革を視野に入れた体制づくり」を提案している。
観光庁、宿泊モデル約款の一部を改正
観光庁は、宿泊料金などの記載方法について、国際観光ホテル整備法の規定によるモデル宿泊約款の一部を4月22日付で改正した。従来の表記では、旅館が泊食分離に対応した料金を設定していることが明確に表示できなかったためで、「宿泊料金等の内訳」と題した別表の表記方法を変更した。訪日外国人の受け入れ拡大に向けた環境整備の一環としての改正で、旅館団体をはじめ宿泊関係団体などに通知した。
モデル宿泊約款では、「宿泊料金等の内訳」の別表として、朝・夕食または夕食が付かない宿泊施設に適用する「ホテル用」と、1泊2食付きを前提とした「旅館用」の2タイプがあったが、旅館用を採用した場合、基本宿泊料は「基本宿泊料(室料+朝・夕食料)」と表記され、泊食分離に対応した具体的な表記方法のモデルがなかった。
改正後は旅館用、ホテル用の分類はなくなり、基本宿泊料の表記は「基本宿泊料(室料<及び室料+朝食等の飲食料>)」という記載になった。「朝食等の飲食料」には夕食が付く場合はその料金を含む。朝・夕食なしの料金と、朝食または朝・夕食付きの料金を設定していることを明確にできるよう変更した。
国際観光ホテル整備法に基づく登録旅館・ホテルは、宿泊料金や宿泊約款を定め、観光庁長官に届け出る必要があり、フロントなどに日本語と外国語で掲示するよう定めている。
国交省、叙勲伝達式を開く
国交省の伝達式
国土交通省の春の勲章伝達式が10日、東京都千代田区のグランドプリンスホテル赤坂で開かれた。受章者らには勲章などが贈られ、馬淵澄夫副大臣が栄誉を称えた。観光関係では観光事業振興功労として3氏が受章している。
水明館社長で日本温泉協会会長、国際観光旅館連盟副会長の滝多賀男氏=岐阜県下呂市=が旭日中綬章を受章。滝の湯ホテル代表取締役で国観連常務理事の山口元氏=山形県天童市=と、今朝会長で元国際観光日本レストラン協会常務理事の藤森紫朗氏=東京都目黒区=が旭日双光章を受章した。
旅館経営はもとより、温泉協会会長をはじめ国観連、地域などで観光振興に尽力した滝氏は、旭日中綬章を受けた。「家内の支え、地域や団体の方々のご支援があってこそ。先輩方のご努力があって、観光はようやく国の成長戦略と認められるようになってきた。旅館業界や観光地をとりまく環境は厳しいが、次の世代のためにも一層がんばりたい」と語っていた。
滝氏は同日、皇居で行われた天皇陛下の受章者の拝謁の際、国交省分の受章者の代表としてお礼を述べる「御礼言上」の役を務めた。
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