子どもが中高生になった時の日本の家族旅行の回数はフランス、韓国の半分に過ぎない──。観光庁は2010年度版観光白書の中で、旅行環境に関する国際比較調査の結果をまとめた。子どもを含めた家族旅行(国内外の宿泊を含む旅行)の年間回数(09年)は、フランスが2.07回、韓国が1.89回なのに対し、日本は1.10回と低い水準にあることが分かった。子どもが大きくなってもフランス、韓国は家族旅行に出かけるが、日本は出かけなくなる傾向が強い。
調査は今年3月、日本、フランス、韓国の各1千人を対象にインターネットを通じて実施した。比較対象には、「観光大国」で国民にバカンスが定着しているフランスと、隣国の韓国を選んだ。
子どもの年齢層別に家族旅行の年間回数をみると、日本が他の2カ国を上回る層はない。日本は小学高学年の1.74回をピークに、中学生では1.04回、高校生では0.74回に減る。韓国も同様に子どもの年齢に応じて下降線を描くが、ピークにあたる低学年が2.91回と高く、中学生になっても2.06回、高校生でも1.67回に上るなど、日本と異なり、中高生になっても家族旅行に多く出かける。
フランスは、小学低学年から中学生までは韓国の回数を少しずつ下回るが、あらゆる層で安定した旅行回数となっている。最高値は就学前の2.36回だが、大学生など高校卒業後も2.23回と多いのが目を引く。観光白書では「家族旅行の習慣が国民生活に根付いている」と指摘する。
家族旅行に対する意識を聞くと、「家族の絆を深めるためになくてはならない」と答えた割合は、韓国が78.0%で、日本の54.0%、フランスの53.5%に比べて高い。「子どもに旅行の楽しさを伝えるために必要」の回答も、韓国が54.1%で最多で、次いで日本が49.8%、フランスが39.7%だった。
また、家族旅行に限らず旅行を増やすために必要な仕組みを聞くと、韓国では「家族単位の旅行費用を支援する制度」を挙げた人が最も多い。韓国は51.2%に上ったが、日本は29.2%、フランスは21.2%だった。
「韓国は進学のための受験熱が高いこともあり、子どもが一定の年齢になった時の旅行回数は日本とそれほど差はないと予想していたのだが、日本より家族旅行への意識が高く、生活に定着しているようだ」(観光庁観光経済担当参事官室)。
観光庁では、日本の国内観光旅行に占める家族旅行のシェアが51.4%(財団法人日本交通公社調べ)と高く、子ども時代の家族旅行の経験が将来の旅行行動に大きな影響を与えることから、家族旅行に出かけやすい環境整備のための施策を検討したいとしている。