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トラベル ■第2570号《2010年7月17日(土)発行》
夏の国内旅行、需要回復も明るさ今ひとつ
JTBによると、今年の夏休み期間(7月15日〜8月31日)の国内旅行客は前年同期比4%増の7412万人となり、リーマンショック以前の、08年夏の7348万人を上回る見通しだ。企業業績の回復で夏のボーナスがやや増える傾向となり、「旅行意欲が前向きになっている」という。旅行会社や観光地の旅館組合、観光協会などに手応えを聞いた。
旅行会社
KNTの国内企画旅行商品ブランド、メイトの契約状況(人員ベース)は7月が前年同月比1%減、8月2%減。昨年はシルバーウイーク(SW)で好調だった9月だが、今年は28%減と落ち込んでおり、「7〜8月の商戦で何とか数字を引き上げたい」という。
方面別では北海道、沖縄などロング商品が好調。また、平城遷都1300年祭が奈良で開催されていることや、昨年の新型インフルエンザの反動などから、首都圏発関西方面商品は7月38%、8月34%のそれぞれ増加となっている。
5日現在の受注状況(人員ベース)は7月が5%増、8月前年並み、9月30%減というのは日本旅行。「9月の不振はSWの反動」。方面別(7〜9月計)では奈良を含めた京阪神が20%増、九州10%増で、特に九州は「龍馬」効果が出ている。夏休みの目玉商品の1つは「静岡ガンダムオフィシャルツアー」など、子どもが主役で、家族で楽しめる商品という。
「1日現在の予約状況は人員ベースで1%増」と阪急交通社。東北、近畿、四国、沖縄が好調。例えば「谷瀬の吊り橋と瀞峡・熊野古道・お伊勢さん詣3日間」は前年比50%増という売れ行き。九州地方は口蹄疫の影響で芳しくない。
「前年並みか、ちょっとプラス」というのはクラブツーリズム。バス旅行は近場、日帰り商品が好調で、特にスカイツリー見学コースは人気だ。「近場で渋滞を避けたいという心理も働いているのでは」とみる。
トップツアーの予約状況(人員ベース)は、7月が前年並み、8月3%増。商品別では東京ディズニーリゾートが124%増と好調。一方、「JR利用で、1泊圏内として人気だった伊豆方面の企画商品が低調」という。高速道路無料化施策などが影響しているとみる。
「1日現在の予約状況は人員ベースで10%増程度」とはとバス。首都圏近郊のバスツアーが好調だが、「特にスカイツリー関連は満席状態が続いている」と嬉しい悲鳴。今月末には400メートルに達しそうで、「秋以降も人気のコースになるのは間違いない」という。
ANAセールスの国内旅行(募集型企画、受注型手配旅行)の予約状況は、人員ベースで7月が1%減、8月4%増。第1ブランドの「ANA's」が堅調で、7月8%増、8月23%増。北海道、沖縄、関西、中四国が人気を集める。このほかダイナミックパッケージは7月21%、8月41%のそれぞれ増加と好調のようだ。
温泉・観光地
夏休みに向け、テレビドラマや大型イベントなどの話題性のある観光地が人出を集めそうだ。他の観光地では宿泊予約は間際化しており、本格的な動きはこれからだ。
NHK大河ドラマ「龍馬伝」で人気の高知。高知県土佐・龍馬であい博推進課によると、1月16日オープンの龍馬博メーン会場「高知龍馬ろまん社中」の来場者数は7月11日現在で33万8112人と好調。日曜・祝日の平均は約3400人。「ゴールデンウイーク(GW)期間には1日の来場者が約5千人に上った。高知市内では8月9〜12日にはよさこい祭りもある。お盆前後にはGWを超える人出を期待している」(同課)。
「龍馬伝」の舞台は今後、長崎に移る。「ドラマの進行に合わせ、宿泊予約も入り出すと期待している」と長崎県の雲仙観光協会。家族客の予約はすでに入り始めているが、個人客はこれから。旅館組合の加盟施設では今月17日から、龍馬、お龍夫婦にちなんだおしどり懐石プランなどを提供し、集客に乗り出す。
半面、昨年の大河ドラマ「天地人」で湧いた山形県南部、米沢市の小野川温泉は、“天地人フィーバー”の反動もあり、予約状況は低調だという。同温泉旅館組合は「7月はホタル鑑賞目当ての利用者で堅調だが、8月は盆休みの日並びの影響もあって、混雑している期間は短い」と話す。
大型イベントでは奈良県の平城遷都1300年祭が話題。メーン会場の平城宮跡の入場者数は、4月24日のオープン以来、157万2千人(7月11日現在)とハイペースだ。「メーン会場の集客だけでなく、県内各地の秘仏の特別公開なども夏の宿泊需要の喚起につながっているようだ。遷都祭の後も『宿泊は奈良に』とリピーター化してもらえれば」(奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合)。
マイカー旅行者の動向を左右する高速道路料金。今年のお盆期間にはETC搭載車への「休日上限1千円」の特別な適用はなく、暦通りに土・日曜が適用日となる。6月からスタートした高速無料化実験の周辺観光への影響も限定的と言えそうだ。
周辺道路が無料になる山梨県の河口湖温泉旅館協同組合は「交通量が増えたり、車の流れが変ったりしているが、宿泊につながるかは分からない」。無料区間に近い山形県の湯の浜温泉も「無料区間の利用が見込まれる内陸部の旅行者は宿泊に絡まないことが多い」(同温泉観光協会)。一方、北海道の層雲峡温泉などには無料化に合わせた宿泊プランを展開している宿泊施設などもある。
宿泊予約の状況では、「旅行会社のツアーの催行率が上がり、満室の日が続いている宿泊施設もあるようだ」(層雲峡観光協会)などの声もあるが、間際化を指摘する声は今年も多い。「予約の動きは鈍い」(北海道の川湯温泉旅館組合)や「参院選もあり、個人客の動き出しが鈍い」(秋田県の男鹿温泉郷協同組合)。近年の天候不順もあり、天気予報を踏まえて間際に予約する人が多いという指摘も出ている。
KNT、アイフォーンで国内宿泊予約
画面のイメージ
近畿日本ツーリスト(KNT)は9日、米・アップル社の多機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」向け専用アプリケーション「アイ アプリ」を使った国内宿泊予約サービスを始めた。アイフォーンなどの多機能情報端末の操作の容易性や表現力の高さを生かせるアプリケーションの公開により、増加するアイフォーン利用者の取り込みとウェブ販売の強化を図る。
公開を始めたのは、同社のインターネット専用の現地払い宿泊プラン「Eクーポン」の検索、予約サービスを利用できるアイフォーン向け無料アプリケーション。全国の約3300施設、1万の宿泊プランを10カ月先まで検索、予約できる。アイフォーンだけでなく、アップル社の情報端末「iPod touch(アイポッド タッチ)」「iPad(アイパッド)」でも利用できる。
ウェブでの国内宿泊予約などで攻勢を強める楽天トラベルやリクルート「じゃらんネット」は、アイフォーンなどのアップル社の端末向けに宿泊検索や予約ができる専用アプリケーションを公開しているが、大手旅行会社で宿泊予約専用のアプリケーションを公開するのはKNTが初めて。
アイフォーンなどアップル社の情報端末は、インターネットブラウザを通してインターネットサイトを閲覧、利用することができる。しかし動画などに利用されているファイル形式「Adobe Flash(アドビ フラッシュ)」には対応していないことから、アイフォーンでフラッシュを多用している旅行会社のサイトを利用すると、画像が閲覧できなかったり、検索機能が利用できなかったりする場合があった。
KNTでは今後、アイフォーン向けの機能の充実を図るほか、アイフォーン以外の多機能携帯電話へのサービス提供も進める考えだ。
4〜6月、国内旅行は大きく上昇
日本旅行業協会(JATA)が発表している四半期ごとの市場動向調査で、4〜6月の国内旅行市場は、景気動向指数DIが3カ月前(1〜3月)から22Pと大きく上昇しマイナス28となった。2期連続の上昇。3カ月後(7〜9月)はさらに改善し、8P増のマイナス20となる見込み。
方面別に見ると、すべての方面で良化。なかでも関東が24P、近畿が23P、東京(含む横浜、浦安)と山陽・四国が共に21Pとそれぞれ20P以上の伸びとなった。
3カ月後は、北海道で13P、東北で9P、奄美・沖縄で7Pの上昇。首都圏、名古屋、大阪から遠距離にある方面の回復が見込まれる。
一方、4〜6月の海外旅行市場は、3カ月前より20P上昇のマイナス30に。中国を筆頭にすべての方面で上昇。3カ月後も全方面で上昇する見込み。
調査は640社を対象とし、309社から回答を得た。
東武トラベル、「尾瀬旅行は電車」をアピール
東武トラベルは、尾瀬への旅行で、環境負荷の少ない電車の利用をアピールしている。親会社である東武鉄道の乗車を促進するとともにエコツーリズムに積極的に取り組むのが狙いだ。
電車はガソリン使用の自動車に比べてCO2の排出量が圧倒的に少ない。同社は「尾瀬の環境保護のためにマイカーではなく、電車を使ってほしい」(企画仕入部・小林浩一課長)と考え、尾瀬コースの多くを電車利用としている。
また、旅行プランの代金から1人につき50円を尾瀬の自然保護活動に寄付する。夜行列車で行くプランでは、浅草から沼山峠までの電車、バスの移動(片道)により排出されるCO2を相殺するカーボンオフセットも実施。旅行パンフレットでは、東武鉄道グループが尾瀬の環境保護に協力していることを紹介する。
尾瀬プランは5〜10月設定で、前年比27%増の4200人を目標。
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