中国からの7月の教育旅行者数が1万1736人(教育旅行向けの査証免除申請者数)となった。日本政府観光局(JNTO)がこのほど発表した。昨年夏はインフルエンザの影響でキャンセルが相次いだが、一転して急増。中国の小中高校の教育旅行は夏休みがシーズンで、今年7月の実績は過去最高を記録した2008年通期の実績1万1436人を単月で上回った。地方による誘致が成果を上げており、長崎県や長野県への訪問が増えている。
今年1〜7月の累計では1万7485人となる。中国の小中高校の教育旅行は、参加希望者を募って、7月早々にも始まる夏休みに実施することが多い。学校交流を設定する関係から、日本の小中高校が夏休みを迎える前の7月中に集中する。旅行日数は4〜7日間で、東京、関西に地方都市などを組み合わせ、観光と学習、学校交流を行うのが主流だ。中国の児童、生徒にとっては、初めての訪日旅行であることが多く、東京、大阪、京都が定番コースとなる中で、地方による誘致も活発化している。
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長崎県には今年6月末から8月中旬にかけて、72団体3074人が来県した。年末を待たず過去最高の訪問数となった。長崎県と友好交流都市の関係にある上海市からの訪問が最多で1209人に上っている。
主要な訪問先は、長崎市内の観光スポットをはじめ、環境に配慮した各種設備を持つハウステンボス(佐世保市)、島原、雲仙の温泉など。県内への滞在は1泊が多く、訪問先周辺のホテルや旅館に宿泊する。
同県は、中国からの教育旅行の誘致に国内の自治体の中で最も早く取り組んだ地域の1つ。中国側の旅行会社と協力関係を構築し、招請事業などを通じ学校や教育行政の関係者の信頼を培った。01年冬に北京から教育旅行を初めて迎えて以来、着実に伸び、05年度に1403人、07年度に2700人に伸ばした。
誘致活動に加え、学校交流の受け入れ態勢が整っているのも強み。県立高校の教育旅行先に中国が多いこともあり、受け入れに教育委員会や学校から前向きな協力が得られるという。
長崎県観光連盟常勤参与の井川博行氏は「長年の継続した活動があってこそ。東京、大阪への訪問ニーズが強い中、これだけの人数が地方に足を運ぶというのは意味のある成果」と語る。ただ、今後の誘致の課題として「航空座席の確保が難しくなっている。長崎空港には上海線以外に中国路線がない。中国人の訪日観光需要が増加する中で状況は厳しい。航空アクセスの充実が必要だ」と指摘している。
長野県も今夏、南京を省都とする江蘇省などを中心に約2千人を誘致した。東京、関西に加えて、長野県を訪問する目的は学校交流だ。「誘致には実のある交流を実現するための学校のマッチング、受け入れ態勢の整備が欠かせない」(長野県観光部観光振興課の遠山明課長補佐・国際観光班長)。
同県は首都圏、近畿圏の両方からアクセスしやすく、自然環境にも恵まれる。冬季にはスキーを目的にした教育旅行も受け入れており、今年度の中国からの教育旅行者数は2300人に達する見込みだ。
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中国の教育旅行は、かつて語学研修を目的に英国、カナダ、豪州が多かったという。JNTOの平田真幸・海外プロモーション部長は「2000年ごろから環境、ハイテク、文化など日本の優れたコンテンツを学習テーマとしてPRしたところ、パターンが変わり、訪日の実績が上がってきた」と説明する。
中国からの教育旅行についてJNTOでは、航空座席の課題などはあるが、さらなる拡大も可能だと指摘。青少年による訪日教育旅行の印象が将来の需要増加にもつながるとして重視している。