馬淵澄夫国土交通相は9月23日、尖閣諸島沖での衝突事件により日中観光に影響が出ていることについて、「観光立国は新成長戦略の中で極めて重要な分野であり、今後も引き続き中国のみならず各国との関係において推進していく」と述べ、観光立国の推進姿勢に変わりはないことを強調した。奈良市で開かれたAPEC観光大臣会合後の大臣単独の会見で答えた。同28日の定例会見でも、中国市場の重要性に触れ、今後も中国人観光客の誘致に積極的に取り組む考えを改めて示した。
衝突事件以降、中国からは大型訪日旅行のキャンセル、東京で開催された世界旅行博への中国ブースの展示取りやめなどの動きが表面化。馬淵国交相の説明によると、北京、上海の現地旅行会社には訪日ツアーの募集広告自粛などを求める要請が出ている模様で、同27日時点では解除されていないという。
21の国・地域の観光協力を協議するAPEC観光大臣会合でも、メディアの関心は日中関係に集まった。同23日、議事終了後に参加国の代表が顔をそろえる共同記者会見では、記者団の質問に対し中国側から「適切に対処されなければ、両国の観光にさらに重大な影響を及ぼす」との発言があった。
馬淵国交相は同23日、共同記者会見後の会見で、中国側の発言を受け、「観光担当の大臣として、日中関係のみならず、各国との関係において観光施策に取り組むということに尽きる。それ以外のことは政府全体で判断する」と述べた。日中観光については「インバウンド、アウトバウンドともに今後とも重要」と指摘した。
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観光大臣会合では、中国の代表団はすべての議事に出席したが、馬淵国交相主催のレセプション(同22日夜、歓迎会)を欠席。共同記者会見(同23日)には代表団トップの祝善忠・国家旅游局副局長は出席せず、前・中国国家観光局(東京)首席代表として日本の観光業界にも知られる張西龍・国家旅游局旅游促進国際合作司副司長が出席し答弁した。
観光大臣会合の開催中には中国側との2国間の会談などは行われなかったが、同22日午前の会議休憩中には、馬淵国交相がホスト国の大臣として他国に対応するのと同様に、祝副局長と名刺交換し、あいさつを交わしたという。
また、中国側は観光大臣会合自体については、共同記者会見で「期待されたすばらしい成果が出された。奈良宣言の精神を支持したい」と評価。馬淵国交相はこの発言を取り上げ、「中国代表の『期待された成果を得られた』という言葉をもって今回の会合が有意義だったと評価している。観光の分野でできることをしっかりと全省を挙げて取り組む」と述べた。
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9月25日には衝突事件で拘置中だった中国漁船の船長が釈放されたが、日中観光の現状にどう影響するかは不明だ。馬淵国交相は同28日の定例会見で、「中国は成長戦略に欠くことのできない市場だとの認識は変わらない。今後とも中国人観光客の誘致に積極的に取り組む」と改めて述べ、事態の打開について「関係各省と連携して対応する」と語った。