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観光行政 ■第2582号《2010年10月16日(土)発行》
休暇改革国民会議が初会合、休暇分散化に賛否
休暇改革国民会議の初会合(6日)
休暇分散化の導入に向けて観光庁は6日、経済団体の代表や都道府県知事などを委員とする「休暇改革国民会議」の初会合を開いた。分散化に対しては、総論では実施に前向きな意見が多かったが、企業活動への影響などに対する懸念も挙がった。政府は来年の通常国会に関係法案を提出し、早ければ2012年度中の実施を目指しているが、賛否両論ある中で議論の行方が注目される。
国民会議の委員は65人で、座長には新日本製鐵の三村明夫会長が就いた。東京都内のホテルで開かれた初会合には代理を含めて40人が出席。休暇分散化のあり方について約1時間半にわたって意見交換した。
■石橋を渡ろう
徳島県の飯泉嘉門知事は「石橋をたたいて渡らないよりは、まずは取り組んでみてはどうか」と述べ、休暇分散化に総論で賛成した。四国の企業や観光事業者の間に反対や慎重論があることを認めながらも、観光需要のピーク期に合わせていた各種投資を効率化でき、正規雇用の創出にもつながると指摘した。
休暇分散化を日本経済の活性化に生かしたいとの期待も。経済同友会幹事の小林喜光・三菱ケミカルホールディングス社長は「停滞した日本経済を考えると、細かなことを考えるより、まずはやってみればいい」。大阪府の橋下徹知事も「良い面、悪い面両方あるなら今の日本はやるしかない」(当日は欠席、映像で意見発表)。
総論は賛成、各論には懸念があるという立場をとった宮崎県の東国原英夫知事は「国民に休暇問題を提起するために挑戦すべきだ。社会実験やさまざまな意見を踏まえて制度設計すればいい」と発言した。
観光関係では、日本観光協会の西田厚聰会長(東芝会長)が「観光の立場から言えば賛成だ。観光需要の拡大、観光産業の雇用の創出や安定化につながる」と述べた。
■相当の悪影響
賛成意見の一方で、企業活動への影響を懸念する指摘も相次いだ。全国的な事業展開や地域をまだいた取引に関する業務効率の低下、分散化への対応に伴う経費負担の増加、従業員の休日出勤の常態化などが危ぐされている。
日本商工会議所副会頭(観光委員長)の高向巖・北洋銀行会長は「観光の面では需要が増えるので結構だが、経済全体を考えると企業経営に相当の悪影響が出るのではないか。十分な社会実験を行う必要がある。画一的、強制的な休暇分散化には慎重な対応をお願いしたい」。
全国銀行協会の和田耕志副会長・専務理事は「銀行業務からすると、休暇分散化の実施は相当程度難しい。地域ごとに金融機関が休んだ場合、地域間の資金決済ができなくなる。特に中小企業の資金繰りに大変な影響が出る」と指摘。分散化に関係なく営業した場合でも利用者との連絡が不便になるほか、銀行員の勤務態勢や生活に与える影響も大きいと指摘した。
また、祝日の意義に関しては、全国都道府県教育委員会連合会の木村孟会長が、祝日や伝統的な年中行事への意識が変わる中で「祝日の扱い方を間違えると、アイデンティティを失うことにつながる」と述べた。
■地域分けに課題
具体的な制度案のあり方では、大型連休を分散させる地域の単位、期間などが課題となる。富山県の石井隆一知事は「5ブロック、5週に分散させるというのは難しいのではないか。全国的な企業活動にマイナスで、祝祭的な需要も鈍くなる。まずは2ブロックぐらいでやってみては」と提案した。
居住地や通勤先、通学先によって家族や友人の休暇が異なる可能性も出てくる。茨城県の橋本昌知事は「分散化案では茨城県は『北関東』、東京都などは『南関東』。それぞれ違うブロックになる。東京の職場に通勤している親と、地元の学校に通う子どもの間では休暇時期が異なってしまう可能性がある」と心配した。
■合意形成がかぎ
観光庁と経済産業省が共同で実施したインターネットによる意見公募「アイデアボックス」の結果では、休暇分散化にメリットはないとする意見が全体の約7割に達した。新制度の導入には、国民や企業の意識のあり方も重要だ。
西武ホールディングスの後藤高志社長は「国民にすれば、休暇分散化にどのようなメリットがあるのか、よく分からないというのが実態ではないか。自分たちの生活にとって、日本の将来にとって、どうプラスなのか具体的にアピールする必要がある」と指摘し、「観光立国や新成長戦略、国民生活の豊かさについて問題意識を共有し、ハードルを越えるために前向きに知恵を絞ることが大事」と述べた。
合意形成については東国原・宮崎県知事も「高速道路の無料化などもそうだが、政権交代のたびに制度が変わってしまうようだと、国民は混乱する。休暇制度についても総論としての合意、支持を得て実行することが必要だ」と制度の継続性について注文を付けた。
国民会議の次回会合は11月下旬に予定されている。
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