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インバウンド ■第2595号《2011年2月5日(土)発行》  

10年の訪日外客数、過去最高も目標届かず

 2010年の訪日外客数は、前年比26.8%増の861万2千人で過去最高を記録した。日本政府観光局(JNTO)が1月26日に発表した。前年に低迷した訪日旅行需要を大幅に回復させ、中国からの誘致も拡大したが、政府が07年に閣議決定した観光立国推進基本計画の目標1千万人は達成できなかった。観光庁は未達成の要因について、円高などの市場環境に加え、プロモーションや受け入れ態勢の不十分さを挙げた。

 外客数はビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)を始めた03年から順調に伸びてきたが、08年秋以降の世界的な景気後退で09年は前年の実績を下回り、679万人に落ち込んだ。しかし、10年は韓国などが大幅に回復、中国が過去最高を記録し、08年の835万1千人を上回った。前年比の伸び幅では大阪万博が開催された1970年の40.4%に次ぐ。

 回復は顕著だったが、円高の大幅な進行、尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件などが伸びを鈍化させた。為替レートは、豪州ドルを除く主要通貨に対し円高基調で推移し、欧米やレートに敏感な香港の旅行者に影響した。中国は国内経済の成長や誘致施策の効果で9月まで毎月過去最高を記録したが、尖閣諸島沖の事件を受けて10月からマイナスに転じた。

 10年までの達成目標1千万人には約139万人及ばなかった。観光立国推進基本法の施行に伴い基本計画を閣議決定したのは07年6月だが、VJC開始以降、官民一体で取り組んできた目標だった。観光庁の溝畑宏長官は1月26日の会見で、「国を挙げてインバウンドを促進する機運は高まったが、目標は達成できなかった。結果は真摯に受け止める」と述べた。

 観光庁は、10年に目標を達成できなかった要因を分析した。その結果、主なマイナス要因である大幅な円高の進行や尖閣諸島沖の事件の影響がなかったとしても、1千万人を約90万人下回る可能性があったと指摘した。円高による減少分は、08年から10年にかけて旅行者数が減った国・地域のうち、円に対する通貨の下落が10%以上だった6つの国・地域が全体平均と同じ伸び率だったと仮定して算出すると約33万人。尖閣事件の影響による減少分は、中国人旅行者の1〜9月の伸び率が10月以降も持続したと仮定して算出すると約16万人と見込んだ。残る90万人分は、国際情勢などが原因ではなく、誘致施策の問題と推測した。

 1千万人未達成の要因のうち誘致施策の問題について観光庁は、プロモーション戦略・態勢などの不十分さ、国内受け入れ環境の整備の遅れを挙げた。観光庁はこれらを課題として、マーケティング手法の見直し、関係省庁とのさらなる連携強化による情報発信、地域や事業者と一体の受け入れ態勢整備などを進めるとしている。



観光庁、訪日促進のウインターキャンペーン開始
 観光庁は、官民を挙げて推進する冬から春にかけての訪日旅行促進キャンペーン「ビジット・ジャパン2011ウインターキャンペーン」をスタートさせた。1月26日にインターネット上に特設サイト(http://www.visitjapan.jp)を開設し、情報発信を強化。各地の観光関係施設の協力を得て、外国人旅行者に各種特典も提供していく。

 例年同じ時期にキャンペーンを展開している。2月上旬には東アジアの国々が旅行シーズンとなる春節(今年は2月3日)に伴う長期休暇があるほか、春には訪日観光で人気が高いテーマの1つである桜の開花シーズンを迎えるため。

 特設サイトは8言語で表示。英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、タイ語でキャンペーンを紹介する。

 3月までに日本を訪れる外国人旅行者には、全国で1千を超える宿泊施設や観光施設、商業施設が、商品やサービスの料金割り引き、プレゼントなどの特典を提供する。特典情報は特設サイトやクーポンチラシで紹介していく。

 また、羽田空港の国際化を生かし地方都市への誘客を進めようと、特設サイトには、羽田空港から地方空港を経て訪ねる観光地の検索機能を持たせた。

 今年の春節、桜の観光シーズンに関しては、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件以降、客足が落ち込んでいる中国人観光客の動向が焦点。観光庁の溝畑長官は「春節で前年を上回る水準に回復させ、桜の時期4〜5月に2つ目の訪日のピークをつくりたい」と意欲を示している。



外客向け事業組合が発足
写真左から高山、阿部、堀田、溝畑、服部、眞柄の各氏

 中国人インバウンド支援会社の富士(眞柄泰利社長)、地図出版大手のゼンリン(高山善司社長)、神奈川新聞社(掘田憲司社長)の3社は、訪日外国人旅行客向けに情報発信事業を行う「羽田空港ベイエリア情報発信事業有限責任事業組合(羽田空港 Free Time LLP)」を設立した。1月28日に開いた記者会見には、溝畑宏観光庁長官、阿部孝夫川崎市長、タレントの服部真湖さんらも駆けつけ、エールを送った。

 主に羽田空港新国際線ターミナルを利用する海外からの観光客、ビジネス客に向けて、フリーマガジン、インターネット、FMラジオの3媒体で、日本の観光や文化、生活情報の発信を同日から始めた。

 英語・中国語簡体字による2言語表記のフリーマガジン「自由時間 Free Time」を10万部発行。6万部を羽田空港国際線ターミナルロビーや東京MKタクシーなどで配布する。残り4万部は北京市、上海市の旅行会社、北京大学など日本語コースのある大学200校、中国のホテルなどで配布する。

 同2言語による情報発信サイト、自由時間 Free Timeも開設。日本最大級のQ&Aサイト「OKウェイブ」、生活情報サイト「オールアバウト」などと連携し、観光や生活など、外国人からのさまざまな質問に回答していく。

 FMラジオ局「FMインターウェーブ」で放送中の中国語番組「東京達人」には自由時間の情報発信コーナーを設ける。東京達人は昨年10月に放送を開始。番組制作やレポートをすべて中国人スタッフが担当。月〜金曜に1日3回放送されている。



日中韓観光協力機構が発足

 NPO日中韓観光協力機構(JCKTCO、梁春香理事長=東洋大学国際地域学部教授)は1月30日、発足記念祝賀会を東京・新宿ワシントンホテルで開いた。

 梁理事長=写真=は冒頭のあいさつで「日中韓3国は、インバウンド観光市場において、いずれかが他の2国に依存しているのが現状だが、3国は物理的に隣国で今後の発展には相互協力が必要不可欠」と話した。

 その上で同NPO設立の趣旨について「日本の観光立国政策の実現は地方からだ。地方に行けば自然の美しい日本、伝統文化のある日本が発見できる。中国人の訪日目的の1位は温泉だが、彼らは温泉がどこにあるのか分からない。JCKTCOでは日本の地方、とくに日光市など世界遺産や温泉地のある地方の知名度を上げ、訪日中国人の増加に努めたい」と述べた。

 具体的には(1)中国の大学に通う中国人学生を日本の旅館・ホテルにインターンシップで受け入れてもらう(2)日中韓で観光を専攻する学生同士の交流会を開く(3)日中韓観光協力に関するセミナーを年に数回開催する──など、主に人材育成事業を中心に活動する。

 このほか、上海市の百貨店の1階正面入り口前のスペースなどを使って、日本の地方の物産や温泉観光地などを中国人に直接紹介する観光物産展示事業、中国政府観光機関との意見交換を行う文化交流事業も計画中。日中韓3国の観光に関する調査研究を行う研究所の設置も検討する。

 当日は来賓として、勝又正秀・観光庁国際交流推進課外客誘致室室長、廖宏偉・駐日中国大使館領事部領事、斉藤文夫・日光市長、蘇涛・中国国家観光局東京事務所課長が出席した。



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