中国からの1月の訪日旅行者数が4カ月ぶりに前年同月の実績に対してプラスに転じた。日本政府観光局(JNTO)が2月24日に発表した推計値で分かった。昨年9月に起きた尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の影響を受けて10月からマイナスで推移してきたが、一定の回復がみられた。ただ、伸び率は小幅で2月の動向にも注視する必要がある。
1月の中国人旅行者数は前年同月比7.8%増の9万9300人。1月としては09年の11万262人に次ぐ過去2番目の実績となった。
事件後の前年同月比の推移は10月が1.9%減、11月が15.9%減、12月が3.1%減。一時、中国の旅行会社が訪日ツアーの募集広告を自粛するなどした影響で、国慶節休暇(10月1〜7日)後の観光客やインセンティブ旅行が落ち込んだ。
事件に伴う旅行者の減少についてJNTOは、「11月で底を打ち、その後は増加基調に転じている」としながらも、事件前の増加幅の水準には戻っていないと指摘した。昨年2〜9月は毎月が2ケタ以上の伸びを示し、単月では過去最高を記録し続けていた。
観光庁の溝畑宏長官は、2月25日の記者会見で「事件の影響が薄らいできたとの印象を受ける」と述べたが、「2月の結果も見た上で判断する必要がある」との考えを示した。慎重な見方をするのは、年間最大の旅行シーズン、旧正月の休暇が今年は2月2〜8日で、一部の訪日旅行が1月末に始まっており、旅行需要が月をまたぎ分散した可能性があるため。
観光庁では、中国からの訪日旅行需要の回復に向けたプロモーションを強化。桜をテーマとした訪日ツアーが中国人観光客に人気であることから、開花シーズンの誘客などに力を入れている。
1月の外客数は過去最高71万人
1月の訪日外客数は、前年同月比11.6%増の71万4400人となった。1月の実績としては過去最高。市場別では韓国、香港が2ケタの伸びだったほか、豪州とタイが過去最高を記録した。
韓国は15.7%増の26万8400人で、1月としては08年の27万1583人に次ぐ。羽田空港の国際化に伴う羽田〜金浦(ソウル)の増便を含め、日韓間の航空便が昨年3月以降増加しているほか、ビジット・ジャパン事業の広告展開も奏功しているとみられる。
台湾は8.1%増の9万7100人。1月としては過去3番目の実績。1月〜2月中旬には「スキー客1千人以上が富山空港へのチャーター便を利用し、長野県各地を訪問した」(JNTO)。ただ、日本向けのチャーター便の機材繰りは、中国向けに多く割かれている影響で厳しい状況だという。
香港は12.7%増の3万4400人となり、4カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じた。
過去最高を記録したのは豪州とタイ。豪州は14.1%増の3万700人。北海道や東北、長野、新潟などのスキー場を訪れる旅行者が増加したとみられている。タイは15.4%増の1万1400人で11カ月連続のプラスとなった。
このほか米国が6.3%増の5万1700人で、1月としては3年ぶりに5万人台を回復した。羽田空港と米国各地を結ぶ航空便の相次ぐ開設に伴い、日系航空会社とJNTOが共同で実施した広告展開や旅行会社向けセミナーの効果などが出たと見られる。
一方、1月の出国日本人数は、前年同月比2.5%増の129万6千人で4カ月連続の増加だった。円高、羽田国際化などがプラスに作用した。