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観光行政 ■第2609号《2011年5月21日(土)発行》    

福島の観光関係者、政府に風評払拭を要望
会津地域の関係者が溝畑長官に対策を要望

 原発事故の風評被害が深刻な福島県。甚大な影響を受けている会津やいわきなどの観光関係者は、観光産業のみならず地域経済の危機であるとして、政府に対し支援策を要望している。会津地域では今年度の修学旅行の9割以上がキャンセル、一般観光客の客足も戻っていない。正確な情報発信による風評の払しょく、観光の活性化に関する対策を求めている。

 会津地域は福島第1原発から100キロ以上離れ、避難者などを受け入れている地域だが、風評が根強い。ゴールデンウイーク(GW)はにぎわった所もあるが、観光の入り込みが回復しない。特に春から秋にかけては修学旅行のシーズンで例年ならば1千校、8万人が訪れるが、9割以上がキャンセルになっている。

 東山温泉、芦ノ牧温泉では、夏までの団体客を中心とするキャンセルが合計11万7千人分に上り、新規予約も厳しい。

 東山温泉観光協会の川添修也会長(御宿東鳳社長)は「観光は波及効果が大きい産業だけに地域経済は危機的な状況。ぜひ泊まりに来て、土地のものを味わってほしい」と訴える。

 芦ノ牧温泉観光協会の星弘子会長(丸峰観光ホテル社長)も「本格的な回復にはほど遠いが、GWは活気づき、個人客のネット予約も少し動き始めた。これを機に風評の払しょくを」と話す。

 会津若松商工会議所(宮森泰弘会頭)と会津地域の観光・商工関係者でつくる会津方部商工観光団体協議会では、政府などに復興策を要望している。13日には、宮森会頭をはじめ川添会長、星会長ら関係者が観光庁を訪れ、溝畑宏長官に要望書を手渡した。会津若松市の菅家一郎市長も同席した。

 要望書では、観光による経済復興を推進するため、(1)福島県への観光送客や各種大会などの開催の奨励(2)福島県への修学旅行の奨励(3)正確な情報発信による風評の早期払しょく──などを求めている。

 溝畑長官は4月29、30日に福島県入りし、会津、いわきなどを訪れており、「旅行に支障がないことはもちろん、地域の皆さんの観光復興への熱意を強く感じた」と述べ、「風評を払しょくし、観光と修学旅行の回復につながる施策に取り組んでいく」と述べた。

 一方、いわき地域も震災に加え、原発事故の風評被害が長期化し、観光産業が大打撃を受けている。12日には、スパリゾートハワイアンズを運営する常磐興産の斎藤一彦社長をはじめ、いわき商工会議所、いわき観光まちづくりビューローの関係者が東京入りし、大畠章宏国土交通相、溝畑長官に要望書を手渡した。

 いわき観光まちづくりビューローは、支援策として(1)原発事故の収束と、正確な情報の発信による風評被害の払しょく(2)観光産業への風評被害などに対する補償制度の確立(3)雇用確保に関する支援(4)東北道に加え、常盤道、磐越道の高速道路料金の無料化(5)観光需要の回復への支援──などを求めている。

 訪問にはスパリゾートハワイアンズのダンサー「フラガール」たちも同行。同施設は現在休業中で、安全点検などを進め、10月中の全面的な再開を目指している。フラガールたちは避難所での慰問公演のほか、巡回公演をスタートさせ、全国で復興を願って踊る。

 首にかけるレイを贈られた大畠国交相は「事態の収束と風評被害の払しょくに全力を尽くし、多くの人にフラガールの勇姿を見てもらえるようにしたい」と述べた。



観光庁、宿泊施設の固資税見直しでアンケート調査
 観光庁は、旅館・ホテルの建物にかかる固定資産税の見直しに向けた実態調査を進めている。このほど旅館・ホテル団体を通じ、全国の宿泊施設約1万8千件にアンケート調査票を発送した。税額の算定基準が建物の使用実態に即しているのか検証するための資料にする。評価基準の見直しを要望してきた旅館団体などでは、実質的な減税につなげたいとして、宿泊施設に調査への協力を呼びかけている。

 昨年12月に閣議決定された2011年度税制改正大綱に「実態調査を行うなど、できるだけ速やかに検討する」と盛り込まれた。固定資産税は市町村税だが、総務相が告示する評価基準に基づいている。アンケート調査などをもとにした検討の結果次第では、2012年度の税制改正で評価基準の見直しが決まる可能性がある。

 アンケート調査票はほとんどの項目が選択式の設問。鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造、木造といった建物の構造をはじめ、建築や建て替えの時期などを聞く内容となっている。税制改正の基礎資料以外に活用されることはないという。回答の締め切りは5月末まで。

 固定資産税を巡っては、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本観光旅館連盟、国際観光旅館連盟などが、「旅館業は建物自体が商品である装置産業のため、建物の改装、改築が頻繁に行われ、大変な経費を要する。建物の固定資産税は原則、再調達価格を算出根拠とし、何年経過してもその評価額は下がることなく、税負担が重くのしかかっている」と指摘するなど、実態に見合った見直しを政府や国会議員に要望してきた。



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