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インバウンド ■第2614号《2011年6月25日(土)発行》    

5月の訪日外客50%減

 5月の訪日外客数は東日本大震災の影響を受け、前年同月比50.4%減の35万8千人となった。日本政府観光局(JNTO)が16日に推計値として発表した。各国の渡航自粛勧告などが被災地を除いて緩和され、アジアを中心に訪日観光ツアーが再開されたことで、減少幅は4月の62.5%減からは縮小した。しかし、原発事故への不安感などで大幅な回復とはならなかった。

 訪日団体ツアーは4月以降、韓国、中国、台湾、香港をはじめタイ、シンガポール、カナダ、英国、マレーシアで再開されている。ただ、原発事故への懸念もあり、ツアー料金を割安にして集客に努めているケースもみられる。

 5月の韓国は58.3%減の8万4100人。旅行商品では九州などに向かうツアーを通常の半額程度で販売する例もある。フェリー利用による九州3泊4日のツアーが7万9千ウォン(5928円相当)という激安商品もあるという。

 中国は47.8%減の5万8700人。4月29日に渡航自粛勧告が緩和されたことを受け、被災地などを除き各地への訪日団体ツアーが再開された。大手旅行会社も5月上旬以降、訪日ツアーの広告を再開するようになった。ただ、韓国と同様にツアー料金は震災前の半額程度という。

 台湾は40.4%減の6万8千人、香港は71.6%減の1万1600人だった。香港の減少幅が大きいのは、もともと他国に比べてビジネス目的の旅行者の割合が低く、不要不急の観光旅行が控えられた影響が大きいとみられる。

 このほか米国が37.8%減の4万800人、フランスが56.9%減の5900人、ドイツが59.8%減の4400人など。特に欧州では、原発事故に対する不安感が大きく影響している。

 JNTOの間宮忠敏理事長は17日の記者会見で「訪日客は戻り始めたという感触を得ている。原発事故の収束は不透明であり、震災前の状態に戻すには年単位で考える必要があるが、市場によっては回復のスピードが上がると予測している」との見通しを示した。

 また、間宮理事長は「特に韓国、中国の大幅な回復が待たれる」とも述べ、5月下旬に東京で開かれた日中韓首脳会合が広く報道された効果や、7月から中国向けに発給される数次個人観光査証(ビザ)の効果などに期待した。



観光庁とJNTO、海外から1000人招請へ
 観光庁とJNTOは7月末にかけて、ビジット・ジャパン重点15市場を対象に、旅行会社やメディアに日本の現状を視察、取材してもらう招請事業を集中的に実施する。訪日した外国人に情報を発信してもらうことで風評を払しょくする。

 震災からの観光復興を目指す緊急対応事業として約800社、1千人を日本に招く。内訳は旅行会社が530社・610人、メディアが約270社・390人。

 中国に関しては、旅行会社の担当者を広範な地域から招請し、訪日商品の販売拡大を促す。6〜7月には上海、瀋陽、大連、天津などから70社70人を招く。東京、中部、関西、九州方面を視察してもらう予定。

 韓国に対しては、韓国の航空会社と連携し、23〜25日にかけて韓国の大手旅行会社24社の社長を東京、鎌倉、箱根などの視察に招待した。

 震災後の海外プロモーションでは、情報発信の強化や招請事業により訪日旅行の回復への環境を整えた上で、8月以降に現地の消費者などに対する本格的な広告宣伝を展開する計画を立てている。



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