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旅館・ホテル ■第2615号《2011年7月2日(土)発行》    

日観連、総会で国観連との合併案承認
日観連・近兼会長(左)と国観連・佐藤会長=6月24日

 日本観光旅館連盟(近兼孝休会長、2946会員)の通常総会が6月24日、東京都内で開かれ、国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1112会員)との合併による新団体設立案が承認された。国観連は6月14日の通常総会ですでに承認していることから、来年4月に新団体が発足することになった。ただ、合併までには調整が必要な難題も残っている。会費設定などは具体的な制度案を示して承認を得ているが、支部組織や事業の統合などは今後の検討課題だ。

業界の地位向上と経営課題の解決へ
 日観連は、定款が定める通り合併に必要な会員4分の3以上の賛成を集めた。6月1日現在の会員数2948に対して2211人以上の賛成が必要だったが、会員から回収した表決書の賛成票は承認ラインを約100票超えた。

 新団体の設立は来年4月1日を予定。両団体は今年度の総会で公益法人改革に伴う一般社団法人への移行を承認しており、いったん一般社団法人の認可をそれぞれに取得。10月をめどに新設合併契約を締結する。来年3月末で両団体を消滅させ、新たな一般社団法人を発足させる。

 日観連の総会終了後、両団体の会長がそろって記者会見を開いた。

 日観連の近兼会長は「総会では合併に関する質問なども出ずに会員の理解が得られたが、それだけにプレッシャーを感じる。すばらしい団体をつくり、観光立国にふさわしい宿づくりを推進していきたい。政府や与党に対しても“圧力”のある団体をつくる必要がある」と述べた。

 国観連の佐藤会長は「東日本大震災からの復興に際しても、(一次産業などのような手厚い支援措置を得られず)旅館業界の基盤のぜい弱性を思い知らされた。一定の数を集めて旅館業界の地位の向上を図りたい。個々の旅館の経営にしても、企画・営業力のなさに危機感を持っている。組織でこれを高めることが必要だ」と訴えた。

支部や事業の再編 これからの調整に
 新団体の設立までには課題も残っている。会費制度は当面2年間を旧加盟団体の会費額に据え置き、3年目から客室規模別の統一制度を導入することで具体的な額なども提示済みだが、支部組織の統合や事業の再編などは、これから方向性を示さなければならない。

 新団体の支部組織は、国土交通省の地方運輸局の管轄に合致した9支部に統合される。現在の支部組織は、日観連が昨年度の通常総会で25支部を9支部連合会に再編したことで、両団体ともに9ブロックの体制になってはいるが、活動単位が合致しないブロックもあり、活動や支部会費などについて現支部間で調整する必要がある。

 事業の統合も課題。各団体が継続的に投資してきた事業をいかに再編するかなどが議論になる。また、合併により新団体の構成会員は、施設や客室といった規模の違いはもとより、日本旅館やホテル、ビジネスホテルといった営業形態も多様になる。経営課題も異なり、事業の優先順位も違ってくる場合も出てくる。新団体では、常設委員会のほかに「大型旅館・ホテル・中小旅館別の部門委員会」を設けるなどとしているが、事業の再構築なども求められる。

「いばらの道も忍耐と寛容で」
 両団体にはそれぞれ60年を超える歴史があり、会員にもさまざまな思い入れがある。その中で合併問題は20年来の懸案。2006年11月にはそれぞれの理事会で基本合意に達しながら、具体化の段階で合併が破談になったことも。今回は両団体が総会で承認するところまでこぎつけた。

 合併実現までの今後の調整について、佐藤会長は「個別、具体的な話になると、相当難しい問題が出てくる。これからもいばらの道」と表現。近兼会長も「4月まで残り9カ月、協議すべきことはたくさんある。両会長には忍耐と寛容が必要になる」と語った。

 会員数の減少や宿泊業の厳しい経営環境に対する危機感を踏まえ、最終調整をいかに円滑に進められるか。宿泊業の振興を支える新団体の設立に向け、両団体は全会員に協力を呼びかけている。



温泉協会新会長に廣川副会長が就任
廣川允彦氏

 日本温泉協会(約1500会員)は6月23日、山梨県甲府市の常磐ホテルで会員総会を開いた。任期満了に伴う役員改選では新会長に廣川允彦副会長(松川屋那須高原ホテル)を選んだ。会長を4期(8年)務めた滝多賀男氏(水明館)は名誉会長に就いた。また、学術部委員長は綿抜邦彦氏(東大名誉教授)から山村順次氏(千葉大名誉教授)に交代した。来年度総会は長崎県雲仙市の雲仙温泉で開催する。

 「無秩序な地熱開発に反対」「温泉で日本を元気に」「日本の温泉文化を守ろう」をスローガンに掲げた総会には約100人が出席。

 冒頭、歓迎の辞を述べた宇野善昌副市長は「湯村温泉郷は開湯1200年の歴史を誇り、県庁所在地の町中に温泉があるのは鳥取市と甲府市だけだ」とアピール。また、昨年の「B—1グランプリ」でゴールドグランプリを受賞したご当地グルメ、甲府鳥もつ煮のおかげで観光客が増えたことを強調し、「温泉と共に甲府の魅力を堪能してほしい」と呼びかけた。

 滝会長は東日本大震災の被災者に哀悼の意を表した上で、震災と福島第1原発事故で地熱開発が注目されていることに憂慮を表明。「無秩序な地熱開発には反対」としながらも、エネルギー環境が変化していることを踏まえ、「(地熱開発から温泉を守っていくには)地域の総意が必要」と、団結力で阻止すべきだと訴えた。また、温泉排水問題については「公共下水道が普及している。今後は自治体の関与を含めて、地域で集約した処理を考えることも必要だ」との認識を示した。

 来賓の1人、環境省の大庭一夫自然環境整備担当参事官は国民保養温泉地について「昨年度から選定基準の見直しを進めており、(審議会の答申を得て)新しい基準を公表する」とした。

 廣川新会長は「非常に重責を感じている」とやや緊張した面持ちで抱負を述べ、協会運営に当たり会員の協力を求めた。役員改選では、副会長に新たに山村、八木眞一郎(あわらの宿八木)の両氏が就いた。

 総会では一般社団法人への移行、入会基準の変更などの議案を審議、了承した。今年度事業については(1)会員の拡充並びに事業の見直しによる財政の健全化(2)公益法人制度改革を踏まえた組織のあり方の検討(3)地熱関連の動向についての情報収集と対応──を重点目標に掲げ、ポイント制宿泊予約サイトとの連携事業の検討などに取り組む。

 群馬・草津温泉の宮崎謹一常務理事(草津ハイランドホテル)が「温泉観光地の存続を脅かす無秩序な地熱エネルギー開発に断固反対」とする議題を提出した。また、竹村節子常務理事(旅行作家)が「日本を元気にするのは温泉から」をテーマに記念講演した。

 廣川 允彦氏(ひろかわ・のぶひこ)慶大卒。松川屋那須高原ホテル専務、社長などを経て、05年4月から会長。03年6月から温泉協会副会長。国観連理事、栃木県観光協会会長など兼職。栃木県出身、73歳。



千葉県旅組、災害特別委を設置
新役員とともにあいさつする平野理事長(中央)

 千葉県旅館ホテル組合(平野勝之理事長)は6月20日、千葉市のホテルグリーンタワー千葉で総会を開き、東日本大震災問題に対応する災害特別委員会の設置を決めた。また震災からの復興に向けたPR事業の実施も決めた。

 災害特別委員会は、計画停電や節電、融資や雇用、原発事故の補償など、震災関連の諸問題に対応する。委員長には武田将次郎副理事長が就任する。

 PR事業は、震災と原発事故で宿泊キャンセルが続出したことから、新たな顧客を創造し、ダメージを払拭しようというもの。すでに同月11、12日、千葉市の幕張メッセで開かれた県の観光PRイベントに出展しており、今後も各地域で精力的に取り組む。

 また旅館・ホテル営業に支障を来す計画停電が起こらないよう、顧客に節電を呼びかけるうちわも製作する予定だ。

 任期満了に伴う役員改選では、平野理事長を再選した。

 平野理事長は、昨年の千葉国体、全国障害者スポーツ大会の受け入れをスムーズに行えたことに謝意を示した後、震災関連で「1週間足らずで100軒の旅館から約10億の損害の報告があった」として、税金や借入金の納付・返済猶予や風評被害の善後策について関係機関に陳情したことを報告。「予断を許さない厳しい道のりだが、絆を糧に一致団結で乗り切りたい」と述べた。

 表彰関連では、全旅連の「第14回人に優しい地域の宿づくり賞」で観光経済新聞社社長賞を受賞した同県旅館組合女将会を表彰した。

【新役員陣容】(敬称略、カッコ内は所属)
 理事長=平野勝之(ホテル喜楽館)▽副理事長=武田将次郎(鴨川館)、篠原正人(篠原旅館)、関根清二(ホテルニュー大新)、松崎浩一(松崎旅館)、館石正文(館山シーサイドホテル)



日本の宿を守る会、30周年記念し討論会

 朝日旅行協力会の部会の1つである、日本の宿を守る会(会長=藤沢秀悟・藤井荘社長、56会員)は6月22日、静岡・熱海伊豆山温泉のホテルニューさがみやで創立30周年記念総会を開いた。総会30周年を記念した新たな取り組みとして、グループディスカッションを実施=写真。日本の宿の概念や会のあり方などについて会員同士が本音で議論し合い、盛り上がりを見せたほか、同会のシンボルアイテムを新たに定めることなどを決めた。

 冒頭あいさつした藤沢会長は、「東日本大震災のような業界の存在を根底から覆すようなことが起こるなど、近年の状況は厳しい。今は座して待っていても、がむしゃらに営業活動してもお客さまが来る時代ではない」と指摘。その上で、「この厳しさを足元を見直す契機ととらえ、この30周年記念総会を原点に立ち返る会にしよう」と会員に呼びかけた。また今期で会長を退き、2年後の次期改選では後進に会長を譲る考えを示した。

 総会の2部では、「温故知新〜日本の宿の新たなる飛躍を求めて」をテーマに、朝日旅行会(現・朝日旅行)の創立者である故・岩木一二三氏の講演ビデオを視聴した後、会の意義や日本の宿が守るべきものなどについてグループディスカッションとパネルディスカッションを実施。会員からは「秘湯の宿に比べ、日本の宿というのがどんな宿か端的に表しにくい」「顔が見える、情があるもてなしが日本の宿の良さであり、守るべきところだ」などの意見が出た。また会の基幹事業である、スタンプ10回で1泊、無料招待するスタンプ帳事業についても、事業の現状について会員同士が情報交換を行う姿も見られ、会員からは「会員同士じっくり話し合うことができ、非常にいい企画だった」などの声が聞かれた。

 総会では、スタンプを通した顧客の相互紹介活動を徹底することや、今年度事業として決まった会のシンボルアイテムの制定を、30周年という節目の年の事業として迅速かつ確実に実現することを確認。このほか役員改選では、藤沢会長のほか、小口憲太朗(四季彩一力)、星野寛治(ホテルニューさがみや)、永井隆幸(あらや滔々庵)の各副会長の続投が決まった。



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