観光庁は、旅館街の活性化を促進するための調査事業をスタートさせた。有識者を委員とする「旅館街再生基盤づくり検討会」の初会合を7月22日に開いた。旅館・ホテルの財務や営業の実態を調査するほか、旅館街の一体的な再生に成功した地域の事例も収集する。地域を主体にした活性化策をいかに促進するか、その方向性を探る。
滞在型観光に旅館街の活性化は不可欠だが、旅館・ホテルには、過去の過大な設備投資による借入金負担、旅行形態の変化への対応の遅れなどで厳しい経営を強いられている施設が少なくない。調査をもとに検討会で改善策を議論する。
旅館・ホテルの経営実態は、既存の資料やアンケート調査に基づき把握する。調査項目は、(1)客室数や従業員数など基本情報(2)損益や資金調達など財務情報(3)誘客手法や取引状況など営業情報──を想定。建物の使用実態なども調査する。
旅館街再生の成功事例では、全国で5カ所程度を選んで現地調査を行う。再生が進まなかった事例との比較、地域特性の分析なども行って成功要因を明らかにし、他の地域の参考となるようにする。
初会合で観光庁観光産業課の鈴木昭久課長は「東日本大震災や原発の風評被害により旅館・ホテルはさらに厳しい状況に直面しているが、観光の経済効果を地域のすみずみに行き渡らせるためにも宿泊が重要。旅館街再生のあり方を検討していただきたい」と呼びかけた。
今年度末までに4回ほどの検討会を開き、報告書を作成する予定。
鈴木課長以外の検討会委員は次の通り(敬称略)。
大西達也(日本政策投資銀行地域企画部地域振興グループ参事役)、川野雅之(企業再建コンサルタント)、小西龍治(立命館アジア太平洋大学大学院経営管理研究科客員教授)、本郷孔洋(辻・本郷税理士法人理事長、スパークス取締役、税理士・公認会計士)、佐藤信幸(日本の宿古窯社長、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長)、清沢正人(全旅連理事)、小関政男(国際観光旅館連盟専務理事)、中村義宗(日本観光旅館連盟専務理事)、岩佐英美子(日本ホテル協会事務局長)、中山智雄(全日本シティホテル連盟専務理事)、堀江裕(厚生労働省健康局生活衛生課長)、大高豪太(経済産業省商務情報政策局参事官)