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トラベル ■第2621号《2011年8月20日(土)発行》  

JAL、豪・カンタスとLCC設立
会見に出席した大西JAL社長(写真左から3人目)はじめ3社の代表者ら

 日本航空(JAL)は16日、豪州を拠点に航空事業を展開するカンタスグループ、三菱商事と共同で、格安航空会社(LCC)「ジェットスター・ジャパン」を設立すると発表した。首都圏の発着枠の拡大や航空自由化の進行をにらみ、新規需要の獲得を狙ったもの。成田、関西の各空港を拠点に、来年末の国内線就航を目指す。LCC参入を先に発表しているANA系の2社と共に、国内の市場活性化に力を発揮しそうだ。

 同日新会社設立について3社が合意し、発表した。今年9月の会社設立と事業許可申請を予定する。資本金は48億円だが、運航開始後に増資を含め120億円を予定。出資比率は、議決権ベースでそれぞれ3分の1ずつ。運航開始時点では、座席数180席のエアバス320型機3機を就航するが、数年中に24機まで増やす。従業員数は初年度150人を800人程度まで拡大する。

 就航路線は未定だが、成田、関空を拠点に、札幌や福岡、沖縄などへの路線を検討中。また「地方自治体とも協議しながら、適切な施設を確保できるのであればさまざまな路線を考えたい」とブルース・ブキャナン・ジェットスターグループ最高経営責任者(CEO)は話し、地方空港活用の可能性も示した。

 また運賃設定については、他社よりも安い運賃を提供する最低価格保証「プライス・ビート・ギャランティ」を適用し、価格面での優位性を訴える予定という。

 同日開いた記者会見であいさつしたブキャナン・ジェットスターグループCEOは、「ジェットスターの利用者のうち約10%は、航空便を初めて利用した人という実績がある。平均運賃よりも約40%安い低運賃で航空座席を提供することで、新しい需要を刺激したい」と意欲を語った。また大西賢・日本航空社長は「08年からLCC設立の協議を重ねており、十分な話し合いを経て今日発表に至った」と述べてLCC参入を先に公表している全日本空輸(ANA)をけん制した上で、「JALは最高の品質のフルサービスを提供し続ける一方で、ジェットスターブランドによるLCC参入により低価格でスタンダードなサービスを提供し、多様な価値に応えていく」と話し、既存のJALの国内路線との需要の喰い合いを最小化できるとの考えを示した。

 航空券の販売は、ジェットスターと同様、ウェブ販売のほか、電話受け付けや旅行会社による販売なども行う考えだ。

 国内資本によるLCC設立は、ANA出資のピーチ・アビエーション、エアアジア・ジャパンに続き3社目。




KNTグループ、旅行事業を地域ごとに分社へ
 近畿日本ツーリスト(KNT)は9日、2012年度以降の事業構造改革の基本方針を発表した。今年9月に東北、中国四国に連結子会社を作るなどして地方部の旅行事業を移管。KNTは東京、名古屋、大阪地区の旅行事業に集中する。各子会社に地域の実情に合わせた営業を展開させるのと併せ、来年1月からは団体旅行事業、個人旅行事業の2事業部門制への組織再編も行い、安定した収益基盤の確立と強化を目指す。

 東北地方、中国四国地方の旅行事業を担う新会社として近畿日本ツーリスト東北(KNT東北)、近畿日本ツーリスト中国四国(KNT中国四国)、商事事業を引き受ける新会社として近畿日本ツーリスト商事(KNT商事)を設立する。9月1日設立予定で、資本金は1億円。

 いずれもKNTを分割会社とし、各地域会社、商事会社を継承会社とする分社型吸収分割方式をとる。KNTツーリストが事業を展開してきた店頭販売部門も、各地域旅行会社に移管する。併せて地域の団体旅行事業を担ってきたKNT北海道、KNT九州についても、新たに個人旅行事業を移管する。

 本社部門の組織再編については、ECC事業本部カンパニーなど3事業本部に分かれている団体旅行事業部門を1つに統合し、情報共有などによる営業力の強化を図る。

 併せて個人旅行事業部門に提携販売部門を統合。ウェブ販売の拡大や1日から稼働を開始した同社の新販売基幹システムを活用した効率性の追求と利益拡大を目指す。

 組織改革による中期経営計画の財務目標は、東日本大震災の影響なども含め見直しを行い、確定次第、発表する予定。



JTB、「交流文化賞」の募集を開始
 JTBは15日、地域の組織、団体による観光交流の取り組みを表彰する第7回「JTB交流文化賞」の募集を始めた。併せて、個人の旅行体験記を対象とする「交流文化体験賞」の応募も求める。

 交流文化賞は、地域に根ざした持続的な交流の創造と各地域の魅力の創出、地域活性化への寄与を目指したもの。旅行者を受け入れる国内外の地域での持続可能な観光を創造した独自の取り組み事例の中から、最優秀賞1作を選ぶ。賞金は100万円。優秀賞の2作には各50万円を贈る。

 交流文化体験賞は最優秀賞1作が賞金20万円、優秀賞2作が各10万円。

 昨年度の第6回では、若狭三方五湖観光協会の「若狭三方五湖わんぱく隊」が交流文化賞の最優秀賞に輝いている。

 応募の締め切りは10月14日。賞に関する詳細はJTB交流文化賞事務局(TEL03・6269・9350)まで。



トップツアー、被災者支援で新しい試み
津波の被害を受けた森林の復旧作業の様子

 トップツアーが新しい形の被災者支援に取り組み始めている。宮城県気仙沼市の舞もう根ね湾を拠点に、同地の主要産業であるカキ養殖のための環境づくりに取り組んでいるNPOと連携。津波被害を受けた港湾上流の森林のガレキ撤去や、養殖イカダの整備を行うボランティアツアーを企画、催行し、養殖業と環境再生を長期的に支援する。カキを中心とした自然サイクル全体の再生を支援するボランティア活動を行うことで、一過性でない支援活動を一般消費者や法人団体などに働きかけ、ひいては地元経済の再生につなげたい考えだ。

 上流での植林などを通してカキ養殖に必須の肥沃な水づくりに取り組んできたNPO「森は海の恋人」(畠山重篤代表理事)と連携した。

 第1弾となるツアー「『森は海の恋人』復興ボランティアツアー」は、9月16日夜に首都圏を出発する2泊3日の日程で催行。2日目に岩手・一ノ関から気仙沼市の唐桑地区に入り、舞根湾に注ぐ舞根川上流の森のガレキやごみの撤去や養殖イカダ固定用の土俵づくりを行う。海中の種ガキの生育状況の観察なども行う。宿泊は気仙沼市中心部のホテルを利用。地元の海の豊かさを知ってもらうなどの目的で夕食のメニューには可能な範囲で地元の食材を利用することも検討している。「気仙沼市内に宿泊することは、シニア層の参加を容易にするだけでなく、被災状況や復興の現状を間近で知ってもらうことにもつながる」と土屋勇・同社旅行業務本部事業開発部事業開発課課長。3日目には、世界文化遺産に登録された岩手・平泉の中尊寺などの観光も行う。東京〜一ノ関の往復には新幹線を利用する。

 同社では同ツアーを毎月3回程度継続的に催行し、長期的な応援、支援を続けてほしいとの地元の要望にこたえる考えだ。

 米田稔・同部部長は、「地元の主要産業であるカキの養殖業が周辺環境の復旧も含め完全に再生するまでには、少なくとも2、3年はかかる。幅広い年代の一般消費者や法人団体などにも広く参加を呼びかけたい。支援事業が同地域のカキのファンづくりだけでなく町の再生の一助になれば」と語る。



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