帝国データバンクが5日公表した景気動向調査の今年8月分によると、同月の全国企業の景気DI(0〜100、50が判断の分かれ目)は前月比0.3ポイント減の35.2となり、4カ月ぶりに悪化した。震災の復興需要で、東北などで改善基調が続くものの、戦後最高の円高による輸出環境の悪化や内需の伸び悩みで、「震災後の回復局面に早くも変調が表れ始めている」(同社)。今後の国内景気も踊り場局面に入る可能性があるとしている。業界別DIでは、旅館・ホテルが前月比2.4ポイント好転した。
DIを10の業界別でみると、サービス、運輸・倉庫など5業界が悪化、小売、建設など5業界が改善した。
サービスは前月比0.3ポイント減の36.5。このうち旅館・ホテルは34.6で、同2.4ポイント増加した。震災前の2月の28.1から、3月に15.3、4月に10.1、5月に19.0と、全業種で最も低い数字に落ち込んだが、6月に26.9、7月に32.2と徐々に回復。8月も回復し、これで4カ月連続の上昇となった。ただ、先行きでは「震災と原発事故の影響で宿泊客は減少傾向が続くとみている」「原発の影響で海外からの観光客の減少は当面続く」と悲観的な声も出ている。
サービスではほかに、娯楽サービスが同1.8ポイント減の33.3、飲食店が同3.8ポイント増の36.7。
運輸・倉庫は同0.4ポイント減の37.1。円高による輸出関連企業の停滞で荷動きが低下し、4カ月ぶりに悪化した。
製造は同1.1ポイント減の36.8。節電で企業活動が制限を受けたほか、戦後最高の円高で生産・出荷活動が停滞し、4カ月ぶりに悪化した。
小売は同0.6ポイント増の35.0。生活必需品を中心に底堅さがみられ、5カ月連続で改善した。この中で、家電・情報機器小売が節電や省エネ対策製品の需要増が続き、41.1と高い水準となった。
10の地域別では、東北が同1.3ポイント増の36.4。復興需要の増加で4カ月連続で改善し、全国10地域中、過去最高の2位に上昇した。宮城(43.9)は建設が60.6と高水準で、47都道府県で最も高い数字。福島(37.5)は全国4位、岩手(37.2)は同5位となった。
調査は全国企業2万2762社に行い、1万1070社から有効回答を得た。このうち旅館・ホテルは41社が回答した。