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観光行政 ■第2631号《2011年11月5日(土)発行》
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東電、観光風評被害賠償で新基準提示
福島第1原子力発電所事故による、観光業に対する風評被害の賠償基準について、東京電力は10月26日、従来の方針を変更すると発表。これに先立つ21日には中川正春文部科学相が仮払いの算定基準を見直す考えを表明した。観光業界の強い批判を踏まえた措置で、賠償基準問題は新たな段階を迎えた。
中川文科相は同日の記者会見で、「従来、国による仮払いの金額の算定に当たっては、原発事故以外の地震や津波により生じた収益の減少率、これを20%控除するということにしていたが、観光庁のデータを参考に改めて基準を設けることにした」と述べた。
具体的には、3月から8月については20%から10%に引き下げ、9月以降分は控除しない。国が東電に代わって請求額の半額を迅速に支払う仮払いの基準見直しは、東電の“本払い”に影響を与えると見られ、東電の対応が注目された。
東電は売上高が減少した割合のうち、20%分を賠償の対象から外すとしていたが、新たな基準は(1)5月31日までは20%とし、6月以降は原則0%とする(2)3月11日〜8月31日までは10%を差し引く──とし、この2つの基準から観光業者自身が選べるようにした。対象は従来通り、福島、茨城、栃木、群馬の4県。
群馬県は「観光事業者が受けた損害を、(東電に)適正に賠償してもらうという基本線は変わらない」とした上で、今回の決定については「一歩前進」(観光物産課)と受け止めている。受け入れるかどうかは事業者の判断次第となるが、県は「この基準では駄目だという声が多数あれば、改めて必要な対応を考えたい」という。
原発事故の被害が深刻な福島県。旅館ホテル生活衛生同業組合は10月28日の理事会で、東電の決定を受け入れることを決めた。菅野豊理事長は「風評被害で経営状況の厳しい旅館も多い中、いつまでも賠償問題に時間をかけることは観光復興のためにならないと考え、受け入れることにした。一度区切りをつけることで、観光復興に全力で取り組んでいけるものと考えている」と語っている。
秋の叙勲・褒章、観光関係は4人
政府は3日までに、秋の叙勲、褒章の受章者を発表した。観光関係では、国土交通省の観光事業振興功労で3人、厚生労働省の生活衛生功労で1人が各章を受章した。
国交省の観光事業振興功労では、ホテル佐勘(宮城県仙台市)の会長で国際観光旅館連盟副会長を務める佐藤潤氏(70)が旭日小綬章を受章した。
また、小浜春陽館(長崎県雲仙市)の会長で日本観光旅館連盟副会長の馬渡孝一氏(73)、本吉兆(大阪府大阪市)の会長で国際観光日本レストラン協会理事の湯木敏夫氏(78)がそれぞれ旭日双光章を受章した。
厚労省の生活衛生功労では、日本の宿古窯(山形県上山市)の社長で全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長を務める佐藤信幸氏(58)が藍綬褒章を受章した。
観光庁長官、1万人招待事業に意欲
観光庁の溝畑宏長官は、10月21日の専門紙向け会見で、世界から旅行者1万人を招待する「Fly To Japan(フライ・トゥ・ジャパン)事業」について、海外メディアの関心が高く、東日本大震災からの日本のイメージ回復、訪日観光の需要喚起につなげたいと意欲を示した。
フライ・トゥ・ジャパン事業は、来年度の実施に向けて11億8600万円の予算を要求中。公募で選んだ旅行者1万人に往復航空券を提供して日本に招待。旅行者にはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通じてクチコミで日本の情報を発信してもらう。
溝畑長官は10月に国際旅行博への参加でシンガポールを訪れた際、各国のメディアから同事業について質問を受け、多くの記事に取り上げられたと報告。「概算要求の段階だが」と前置きした上で、「訪日観光への関心を高め、同時に国内のインバウンド関係者にも勇気を与える事業。関係省庁、地方自治体、民間の総力を結集して取り組みたい」と述べた。
同事業では、1万人のクチコミ効果に期待をかけている。震災後、外国人を対象にした観光庁の調査結果によると、信頼できる情報源として、「国際機関」に続き、「日本在住または震災後に訪日した自国民の情報」が多数を占めた。
事業の費用対効果も重視し、招待者の選定方法などを詰める。イメージ回復などの効果のほか、1万人招待の直接的な経済効果として、外国人1人当たりの旅行消費額を13万円として総消費額を13億円、波及効果を30億円と試算している。
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