日本政策金融公庫は10日、旅館・ホテルなど生活衛生関係営業の景気動向等調査の今年7〜9月期分の結果を公表した。同期の生活衛生業の売上、採算、業況の各DIはマイナス37.2、マイナス19.2、マイナス30.4で、ともに前期(今年4〜6月期)から上昇したものの、依然として低い水準が続いている。公庫では「生活衛生関係営業の景況は、依然として厳しく、持ち直しの動きにかげりがみられる」としている。
調査は9月上旬、ホテル.旅館業、飲食業、美容業など生活衛生関係営業3163企業に行った。このうちホテル.旅館業は200企業に聞いた。
同期の売上DI(前年同期比で増加とする企業割合から減少とする企業割合を引いた値)はマイナス37.2で、前期比3.9ポイント上昇したものの、小幅な伸びにとどまった。前年同期比では1.0ポイントの上昇で、6期連続で前年同期の水準を上回った。来期(今年10〜12月期)の見通しはマイナス24.5で、今期から12.7ポイント上昇の見込み。
9の業種別では、ホテル.旅館がマイナス26.3で、前期のマイナス52.4から27.1ポイントの大幅な上昇となった。来期はマイナス10台半ばまで上昇する見込み。
業種別で前期から上昇したのはホテル.旅館のほか、飲食業、公衆浴場など4業種。理容業、美容業、映画館などは低下した。
同期の採算DI(当該期に黒字とする企業割合から赤字とする企業割合を引いた値)は、全業種で前期比0.1ポイント上昇のマイナス19.2。ただ、前年同期比では0.8ポイント低下。2期連続で前年同期の水準を下回った。
業種別では、ホテル.旅館がマイナス15.5で、前期の33.0から17.5ポイント上昇した。
このほか飲食業、氷雪販売業、映画館の3業種で前期比上昇した。
同期の業況DI(前期比で好転とする企業割合から悪化とする企業割合を引いた値)は、全業種で前期比3.4ポイント上昇のマイナス30.4。前年同期比は2.8ポイント上昇で、7期連続で前年同期の水準を上回った。来期の見通しは今期比6.9ポイント上昇のマイナス23.5。
業種別では、ホテル.旅館がマイナス8.0で、前期のマイナス44.2から36.2ポイントの大幅な上昇となった。来期は今期とほぼ同水準を見込んでいる。
業種別ではこのほか、理容業、美容業、クリーニング業を除く5業種で上昇した。
ホテル.旅館で特徴的な業況判断理由は次の通り。
【今期・不変】ビジネスホテルやシティホテルが増え、廃業に追い込まれる同業者もあるが、当旅館は立地がよく、食事のおいしい純和風旅館として名も通っている。建物は老朽化がみられるが、現状は維持している。(栃木県)
【今期・悪化】例年行われている行事の中止で、地域経済が疲弊している。特に大勢の顧客で賑わう花火大会の中止で多くのキャンセルが発生してしまった。(岐阜県)
【来期・好転】10月にイベントや各種学会、11月には「とくしまマラソン」が開催されることなどから、予約は順調に入っている。今年は原子力発電所の事故の影響からか、関東方面からの観光客が増加している。秋の行楽シーズンでもあり期待している。(徳島県)
【来期・不変】秋の観光シーズンで7〜9月期よりはよくなる見込みだが、例年より出足が遅いのが不安材料。顧客のニーズを把握するため、コミュニケーションを大切にしたい。(奈良県)
【来期・悪化】震災の影響が落ち着き、本来の景気に戻ることを期待しているが、食材等が軒並み値上がり基調にある。特に米は震災の影響とみられる流通面での変化から品薄状態にあり、値上がりするなど、来期も厳しい状況が予想される。(鳥取県)