体験型観光を考える「第8回全国ほんもの体験フォーラム」が2〜4日、滋賀県で開かれた。全国各地から体験型観光の受け入れの担い手やコーディネート組織の担当者など約1400人が参加。2日にはパネルディスカッションが行われ、農林水産業や食文化を生かした「ほんもの体験」で地域の活性化を目指すことを再確認したほか、教育旅行に加えて企業研修などの受け入れによる市場拡大などを議論した。
主催は、滋賀県や県内の市町村などで構成する実行委員会、共催は全国ほんもの体験ネットワーク(世話人=新井徳二・南信州観光公社会長)。
米原市の滋賀県立文化産業交流会館で開かれたパネルディスカッションは、体験教育企画代表の藤澤安良氏を進行役に、地域や旅行会社の担当者などパネリスト6人が参加。「ほんもの体験が日本を元気にする」のテーマで意見交換した。
地域で教育旅行の受け入れなどに取り組む事業者らが、教育効果や地域への経済効果の高さを指摘。びわ湖・近江路観光圏協議会・近江屋ツアーセンター所長の田渕正人氏は「ありのままを学んでもらおうという地域の理念が大事だ。ほんものの体験と交流こそが、旅行者にも、住民にもより豊かな暮らしをもたらす。体験型観光は日本を元気にする切り札」と訴えた。
体験型観光は、教育旅行の受け入れに成果を上げているが、企業研修など一般団体への市場拡大が課題。JTB東日本国内商品事業部団体課長の納代信也氏は「企業研修では社員間のコミュニケーションの向上などが期待されている。ほんもの体験とは人づくりにつながるものであり、その点では教育旅行と変わりはない。旅行会社も情報発信に努め、一般団体にも市場を拡大したい」と語った。
また、東日本大震災からの復興の取り組みについて、地元漁師らと連携してサッパ船のクルーズを確立した岩手県田野畑村から報告があった。津波被害は甚大だったが、7月末に再開したサッパ船クルーズの参加者は1千人近いという。村役場政策推進課復興対策室の渡辺謙克氏は「参加者には被災地を応援したいという思いがある。津波の被害を学んでもらうプログラムも実施しており、被災地のモデルとなる取り組みにしたい」と語った。
パネルディスカッションのほか、フォーラムの開催地、滋賀県から、びわ湖高島観光協会会長の古谷仁成氏、三方よし近江日野田舎体験推進協議会副理事長の古道紀美子氏、滋賀県湖北観光連盟・朝日漁業協同組合副組合長の松岡正富氏が、地域資源を生かしたプログラムや民泊の魅力、受け入れの喜びなどを紹介した。
分科会も滋賀県内各地で開かれ、(1)ほんもの体験交流による地域活性化(2)自治体・広域連携とコーディネート機能の重要性(3)青少年を心豊かに育むほんもの体験(4)体験型観光のマーケットの拡大(5)農山漁村の教育力と民泊に求められるもの(6)環境と地域産業から学ぶ地域の誇り──の6テーマについて議論した。