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観光行政 ■第2655号《2012年5月12日(土)発行》
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日本温泉協会が地熱発電問題で声明文「無秩序な開発反対」
「脱原発依存」の流れが強まる中、再生可能エネルギーの1つ、地熱発電に注目が集まっている。環境省も推進へ向け舵を切った。事態を重視した日本温泉協会(廣川允彦会長)は4月27日、「自然保護、温泉資源保護、温泉文化保護の見地から、無秩序な地熱発電開発に反対する」という声明文を出した。「再生可能エネルギーの必要性を否定するものではないが、地熱発電の実態を多くの人に知ってもらいたい」と切実に訴えている。
同省は3月29日、温泉資源の保護を図りつつ、地熱発電の促進に向けた「温泉資源保護に関するガイドライン」(地熱発電関係)をまとめ、都道府県に通知。また、同27日には「国立・国定公園内における地熱開発の取り扱いについて」として、国立公園内での開発規制区域でも自然環境への影響を最小限にとどめるなどの条件付きで、掘削を認める新基準を提示している。
地熱発電については、▽二酸化炭素(CO
2
)の排出量が少なくクリーン▽地球内部に蓄えられた豊富な熱エネルギーは半永久的ともいえる供給が可能▽太陽光や風力に比べ天候に左右されず、安定した持続可能なエネルギー──という点が長所として挙げられているが、温泉協会は「いいことづくめの情報だけが流布されている」と指摘する。
声明文は、(1)蒸気や熱水を汲み上げる生産井は経年変化により減衰し、数年おきに新たな補充井の掘削が必要(2)熱エネルギーが膨大だとしても、発電システム自体は持続可能な再生エネルギーとは言い難い(3)発電出力維持のため、絶えず新たな掘削が繰り返され、周辺の地形の改変や環境破壊、温泉源への影響が危惧される──と反論。
大量の熱水や蒸気(いずれも温泉)を汲み上げるため、「周辺の温泉減ではその影響と思われる湧出量の減少、水位・泉温の低下、成分変化、枯渇現象などの事例が報告されている」と実例を挙げる。
さらに、発電後の蒸気や熱水は高濃度の硫化水素やヒ素などを含む、いわゆる産業廃棄物である点を挙げ、「河川などに排水することができないため、還元井から地下に廃棄することになる。しかも、廃棄する際のスケール対策として硫酸などを添加するため、土壌汚染や地下水汚染などが危惧され、安全性は立証されていない」という。
声明文はまた、「日本は『温泉』として地熱資源を最大限利用している世界有数の地熱利用国」と主張。温泉は観光立国の重要な柱の1つで、温泉が地域の活性や雇用確保に貢献していることも強調し、「開発にあたっては拙速を避け、慎重な判断を」と呼びかけている。
一方、CO
2
削減を目的とする地産地消の温泉発電(バイナリー発電)やヒートポンプによる温泉熱利用など「既存の温泉の余熱は有効に活用すべきだ」との見解を示した。
5つの提案
日本温泉協会は声明文の中に、無秩序な状況を回避するための次の5項目を提案している。
地元(行政や温泉事業者)の合意▽客観性が担保された相互の情報公開と第三者機関の創設▽過剰採取防止の規制▽断続的かつ広範囲にわたる環境モニタリングの徹底▽被害を受けた温泉と温泉地の回復作業の明文化
環境省、「三陸復興国立公園」創設へ
環境省は7日、東日本大震災で被災した自然公園を再編整備する「三陸復興国立公園」(仮称)の創設を核とした「グリーン復興ビジョン」を発表した。観光客の誘致も視野に入れており、実現すれば東北観光にとって大きな起爆剤となりそうだ。
三陸復興国立公園構想は、昨年5月中旬に同省が公表した「東日本大震災からの復興に向けた基本的対応方針」に盛り込まれた。また、7月下旬には東日本大震災復興対策本部が「復興の基本方針」を策定。この中で、三陸復興国立公園について、「防災上の配慮を行いつつ、被災した公園施設の再整備や長距離海岸トレイルの新規整備を行うことについて検討する」とした。
同省はこうした動きを受け、グリーン復興のビジョンの策定を進めていた。
ビジョンでは、三陸復興国立公園は陸中海岸国立公園(岩手・宮城)を中心に、2013年度中に創設する。区域は青森県八戸市の蕪島から宮城県石巻市・女川町の牡鹿半島まで及び、その周辺の自然公園を対象に、自然景観や利用状況の調査をした上で再編するとしている。
三陸復興国立公園内には長距離自然歩道「東北海岸トレイル」を整備する。蕪島から福島県相馬市の松川浦までを対象に、かつて使用されていた道や林道などを活用。周辺には標識やトイレ、案内所などの関連施設を整備し、観光客らの利用を促進する。
また、ビジョンは「復興エコツーリズム」の推進を提唱した。推進の際は「食」などの資源の活用、漁業者との連携による小型漁船の活用や漁業体験など、「農林水産業と連携して進め、幅広い復興に貢献すると共に、震災の体験の語り継ぎや被災した地域のガイドツアー、震災の痕跡・地質や化石などをもとに展開されるジオツアーと連携して取り組む」考えを示した。
観光庁長官が就任会見、「観光の成長に力尽くす」
観光庁の井手憲文長官はこのほど、就任後初の専門紙向けの定例会見で抱負を述べ、成長性の高い観光分野を伸ばすために力を尽くす考えを示した。東日本大震災からの復興では、インバウンド、国内観光の本格的な需要回復に取り組むほか、観光産業の強化を重視する姿勢などを強調した=写真。
井手長官は「日本経済は中期的には沈滞気味だが、観光は成長性のある分野だ」と述べ、歴史小説家、司馬遼太郎の明治期を描いた作品を引用しながら「観光はがんばれば伸びる。『坂の上の雲』を目指して力を尽くしたい」と語った。
施策の方向性では、インバウンドに関して市場ごとの需要に対してきめ細やかな施策を打つ必要性を強調したほか、旅行消費など質の向上も必要だと指摘。国内観光を含めた震災からの需要回復では「痛手をこうむっている地域もあり、復興の道は半ば。いろいろな手段を組み合わせて着実に取り組む」と述べた。
産業育成にも触れ、「観光産業は多様な要素が入り混じった分野。客数を増加させる施策などに目が向きがちだが、産業全体を強化することが重要」と語った。観光分野の成長、産業の強化のために観光庁職員には、業務に関するスキル、ノウハウの蓄積を求めていく考えを示した。
前観光庁長官が自転車で東北一周、「観光博」アピール
観光博をPRしながら自転車で東北を快走する溝畑氏
今年3月末に観光庁長官を退任した溝畑宏氏が、東北観光博を盛り上げ、東北の震災復興を後押しするため、自転車で東北を走っている。4月27日に福島県相馬郡新地町をスタート。1週間ほどの単位で数回にわたって東北入りし、9月ごろまでに東北1周約1600キロを走破する。走行中の模様は動画配信サイト「ユーストリーム」で生中継されている。
この企画は「みちのくひろし旅」と銘打たれている。震災復興にかかわるイベントなどをサポートしている一般社団法人のRE—BORN47のプロジェクトとして実施されており、東北観光博実行委員会が後援、観光庁スポーツ観光推進室が協力している。
溝畑氏は、東北観光博で設定されている28の観光ゾーンのすべてを自転車で巡る。東北の太平洋側を北上し、青森県でUターンして日本海側を南下する。8、9月ごろに福島県いわき市にゴールする予定。9日午後現在では、岩手県花巻市付近を走っている。
溝畑氏は自転車で旅をし、在任中の協力に対する感謝を人々に伝えながら、東北、観光の魅力を各種メディアを通じて発信する。出発後にはテレビ、ラジオの番組の取材も受け、東北観光博を宣伝している。
動画配信にユーストリームが協力しているほか、スポーツ用品販売のゼビオがウエアや自転車を提供。支援車両を自動車メーカーのホンダが提供している。
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