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観光行政 ■第2656号《2012年5月19日(土)発行》
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立教大がADRセンター開設、観光のトラブル解決へ
「ADRセンター」を開設した立教大学
立教大学はこのほど、法務大臣の認証を受けて観光に関するさまざまなトラブルを解決する「立教大学観光ADRセンター」を開設した。宿泊や旅行に関するトラブルの相談を事業者や消費者から受け付け、同大学の法律と観光の専門家らが公正な解決策を見いだす。観光の領域に特化したこのような取り組みは日本初という。
同センター(センター長=川添利賢・立教大学法務研究科教授、弁護士)は、立教大学法務研究科(法科大学院)に附属する法曹実務研究所と、観光の実践的研究に実績がある立教大学観光研究所を母体に、昨年4月に開設。今年2月、法務大臣から認証紛争解決事業者の認証を受けたことで、事業を本格的にスタートさせた。
ADR(Alternative Dispute Resolution)とは、民事の法的紛争を裁判以外の手段で解決する方法。第三者の調整により、当事者同士が解決内容を合意する「調停」と、当事者が解決内容を第三者の判断に委ねる「仲裁」などがあるが、今回、同センターが行うのは「調停」になる。
「観光に関するトラブルは日常的に多く発生しているはずだが、金額が軽微なことが多いこともあり、ほとんどの場合、正式な法的手段によらず、“泣き寝入り”や“ゴネ得”で片付けられているのが現状ではないか」(同大学)。
センターは、これら観光にかかわるトラブルを中立的な立場で検証。担当する同大学法務研究科と観光学部の教員、弁護士らによる調停人が、それぞれの専門性を駆使し、公正な解決策を見いだす。要員は川添センター長をはじめとする12人。
調停の対象となるのは、旅行契約や宿泊契約から生じる様々なトラブル。具体的には(1)取消料に関する紛争(2)予約の齟齬(そご)に関する紛争(3)旅行の手配に関する紛争(4)添乗員、現地ガイドに関する紛争(5)サービスの表示に関する紛争(6)旅館・ホテルのサービスに関する紛争(7)土産物に関する紛争(8)旅行先での負傷、発病に関する紛争──など。
旅館・ホテルや旅行会社など観光関係事業者と消費者との間のトラブルが対象。事業者、消費者双方から相談を受け付ける。ただ、事業者同士のトラブルは対象としない。
受け付けた相談は後日、弁護士が電話または面談で確認。調停になじむ案件であれば、調停申し立てを行ってもらう。申し立て費用は税込み5250円。相談のみは無料となる。
時間と金がかかりすぎるといわれる裁判に変わる紛争解決の手法として、多くの需要が見込まれている。
センターでは、直面するトラブルの解決とともに、観光にかかわる解決の事例を積み重ね、「この領域で、適正な法的スタンダードを打ち立てたい」としている。
同センターはTEL03・3985・4650。受け付け時間は月曜から金曜までの午前10時から正午、午後1時から午後5時。
経済同友会が観光で提言、休日分散化に理解示す
経済同友会(代表幹事・長谷川閑史武田薬品工業社長)はこのほど、(1)休日分散化の実現に向け議論を再開する(2)観光業へ成長マネーが入る仕組みを構築する──などの提言を盛り込んだ「観光立国に向けた環境づくりを進める〜次代を担う産業としての成長基盤を作る」を公表した。休日分散については、経団連などはサプライチェーン(部品供給網)や金融決済などに影響が出るとして導入に消極的だが、同友会は前向きの姿勢を示した。
観光立国委員会(委員長・星野佳路星野リゾート社長)が中心になってまとめた。
提言は、休日分散が実現すれば観光需要が平準化し、宿泊業や運輸業の生産性が向上、「それにより、従業員給与が増加して優秀な人材が流入、ソフト面の競争力が強化されると共に、新規投資も可能になる」と指摘。価格低下の実現により希望施設への予約も容易になり、観光地の混雑も解消され、利用者の利便性も向上するとしている。
さらに、「休日の分散化が電力不足の対応にも一定の意義があるとすれば、その視点からも再検討する余地がある。与党成長戦略・経済対策プロジェクトチームで検討された『秋先行実施・2もしくは3地域で分散』案を俎そ上に載せるべきだ」と求めた。
「成長マネー」については、具体案として(1)投資減税の仕組みを構築(2)要件を満たす宿泊施設には固定資産税を軽減する(3)「投資・経営」の在留資格の緩和と、いわゆる投資ビザの発給により、海外からの投資の増加、および外国人投資家の訪日機会の増加を図る──を示した。
(1)では国際観光ホテル整備法施行規則で設備要件を定め、租税特別措置法に明記。投資減税をインセンティブとし、経営と投資の分離を促進し宿泊施設にプロの経営(専門オペレーター)が参入するように誘導するとしている。
このほか、地方の空港経営に民間企業の経営感覚、手法を導入することや、訪日旅行者の視点から情報の利活用、サービスのあり方を改善するよう提言。
訪日旅行者に関しては政府、地域、事業者それぞれの取り組みに言及。政府に対しては、JNTOや経済産業省などのウェブサイトの検索エンジンの最適化、NHK国際放送の活用を求めた。
10年度の旅行消費額は6%減の23兆8000億円
観光庁は11日、2010年の日本国内での旅行消費額の確定値を発表した。旅行消費額は23兆8千億円で前年に比べて5.9%減少した。前年を下回った要因は、日本人の国内旅行回数が減少したためとみられる。
観光、帰省、業務を含めた日本人の国内旅行のうち、宿泊旅行の消費額は16兆1千億円で前年の17兆3千億円から大きく減少した。日帰り旅行の消費額も5兆1千億円で前年の5兆5千億円を下回った。
日本人の旅行は、1回の旅行での消費額はほぼ前年並みだが、実施回数が減少している。宿泊旅行の1人当たりの年間回数は前年比7.7%減の2.51回にとどまり、観光目的に限ると8.2%減の1.34回だった。日帰り旅行も10.1%減の2.49回と減少した。
日本人の宿泊旅行、日帰り旅行以外の旅行消費額を構成する項目は、日本人の海外旅行(国内での消費分)が1兆3千億円でほぼ前年並み、訪日外国人旅行が1兆3千億円で前年の1兆2千億円から増加した。
旅行消費額は、国際的に推奨されている旅行・観光サテライト勘定(TSA)の導入に伴い暦年ベースの数値に変更した。また、推計方法の変更で公表済みの過去の旅行消費額を修正した。過去5年は、05年が28兆6千億円、06年が30兆1千億円、07年が28兆2千億円、08年が27兆8千億円、09年が25兆3千億円となる。
424万人の雇用創出 日本経済に貢献も
観光庁は、10年の旅行消費額23兆8千億円がもたらす経済波及効果を推計した。直接効果を含めた生産波及効果を49兆4千億円、雇用創出効果を424万人と算出した。
観光産業の日本経済への貢献度が分かるように、旅行消費の経済波及効果を全産業に占める比率で示すと、生産波及効果は国内生産額(国民経済計算における産出額)905兆1千億円の5.5%に相当。雇用創出効果は総就業者6392万人の6.6%に相当することが分かった。
国交省、ホテル火災で都道府県に通知
広島県福山市のホテルプリンスで13日、死者7人を出す火災が発生したことを受け、国土交通省と消防庁は14日、旅館・ホテルの防災対策について指導を徹底するよう各都道府県に通知した。建築基準法に基づく定期報告制度の徹底などを業界団体に指導するよう求めている。
国交省の通知は「旅館・ホテル等に対する防災査察の重点実施」「定期報告制度の徹底」の2点。
査察については、過去に行った防災査察や定期報告で指導した事項が是正されていなかったり、定期報告が未提出の施設に重点を置いて防災査察を行うことを求めた。
また定期報告制度は、防災対策に極めて重要として、制度の運用の徹底を改めて求めている。
一方、消防庁の通知は「消防法令違反等の是正の徹底」「夜間における応急体制の確保」「火災予防対策の推進」の3点。
このうち火災予防対策は、(1)喫煙などの火気管理の徹底(2)暖房機器、厨房機器など火気使用設備・器具の管理徹底(3)階段、通路などの避難経路および防火戸・防火区画の管理徹底(4)寝具・布張り家具(ソファーなど)に防炎性能を有する製品の使用推進──の4点を挙げている。
福山市のホテル火災は13日早朝発生。鉄筋コンクリート造(2階部分一部木造)4階建ての建物が全焼。死者7人、負傷者3人を出す惨事となった。
また14日午後には福島県穴原温泉の旅館「山房 月之瀬」で火災が発生。死傷者は出なかったが、宿泊客、従業員ら約180人が避難する事態となった。
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