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インバウンド ■第2658号《2012年5月31日(木)発行》
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中国の旅行業者、日本の温泉に注目
中国の旅行会社は日本の温泉に期待──。日本政府観光局(JNTO)は24日、訪日旅行を取り扱う中国の主要な旅行会社を対象に実施したアンケート調査の結果を公表した。期待できる訪日旅行のテーマとして最も多かった回答は「温泉」だった。一方、販売を強化する目的地は、主要な観光地を巡りながら東京〜大阪間を横断する「ゴールデンルート」に続き、北海道、沖縄が支持を集めた。
JNTOの北京、上海、香港の各事務所が今年2、3月に調査した。対象は訪日旅行を取り扱う115社。地区別の内訳は華北27社、華東36社、華南40社、内陸部12社。
「今年期待できる訪日旅行のテーマ」を複数回答で聞いたところ、全体の63%が温泉を挙げた。2位は「ショッピング」で59%だった。以下は桜の花見が56%、スキー・雪遊びが50%、秋の紅葉が48%、美食が46%、マンガ・アニメが44%などだった。
期待のテーマには温泉のほか、桜や雪、紅葉など日本ならではの季節感のある観光資源が多くの支持を集めた。特に紅葉についてJNTOは「国慶節(10月上旬)と春節(旧暦の元旦)の間の閑散期に訪日旅行に出掛ける人の増加に伴って新しい魅力として注目されている」と指摘した。
「今年販売に力を入れたい目的地」を聞くと、ゴールデンルートが87%で最多。続いて北海道が71%、沖縄が67%、東京が33%、関西が27%、九州が23%、その他が10%。沖縄が上位に入った要因には、沖縄への滞在が発給要件となる個人観光数次査証(ビザ)が導入されたことも影響しているとみられる。
しかし、「今年人気となる海外旅行の目的地」を聞いた設問では、日本を挙げた回答は45%で5位にとどまった。1位は米国・カナダで70%、2位はビーチリゾートで69%、3位は台湾で67%、4位は欧州で64%だった。
訪日数見込みは 10年水準下回る
中国の旅行会社に、今年の中国からの訪日旅行者数の予測も聞いた。その結果、過去最高だった2010年の水準を上回らないとする回答が57.3%を占めた。理由には「地震や放射能汚染への懸念」「日中関係の不安定要素」などが挙げられた。10年の訪日旅行者数と「同水準」は30.5%、10年の水準より「増加」は10.5%だった。
一方、増加している訪日個人観光の取り扱いについては、「今後積極的に取り組む予定がある」と回答した旅行会社が全体の98.3%を占め、個人観光の増加が見込まれる結果となった。
訪日外客、震災前の水準に回復
日本政府観光局(JNTO)が24日に発表した今年4月の訪日外客数は78万1千人で、東日本大震災、原発事故の発生前の2010年の同じ月と比べると、減少率はわずかに0.9%減に縮まった。全体数ではほぼ震災前の水準に回復した。一方で韓国、フランス、カナダは前々年同月比で依然として2ケタの減少。放射能汚染への不安などが解消されていないほか、円高などがマイナス要因となった。
今年に入ってからの前々年同月との比較は、1月が6.9%増、2月が17.6%減、3月が4.4%減。1月がプラスなのは、東アジアが旅行シーズンを迎える旧正月の該当月の移動が要因だが、震災の影響は月ごとに着実に回復している。1〜4月累計では前々年同期比4.0%減の269万2千人となった。
4月の外客数を市場別にみると、台湾が前々年同月比26.5%増の13万9千人と2ケタの伸びを示したほか、タイが同10.8%増の4万1千人で過去最高を記録した。中国は同0.8%減の15万人、香港は同5.1%減の4万4千人、米国は同3.9%減の6万4千人だった。一方で韓国が同19.6%減の15万3千人、フランスが同16.9%減の1万5千人、カナダが同11.9%減の1万4千人と落ち込みが大きかった。
台湾の増加要因は、日台のオープンスカイ(航空自由化)の合意に伴う新規路線の就航や増便の効果、それに伴う訪日旅行の宣伝効果などとみられる。中国の客数はマイナスではあるが、過去最高を記録した10年4月の数値にせまるもので、観桜ツアーなどが訪日需要の喚起につながったとみられている。
韓国の回復が遅い要因には、地震予測に関する報道や放射能汚染への不安、ウォンに対する円の高止まりなどが挙げられる。
また、需要の回復が顕著な台湾に関しても、JNTOは「東北地方への客足は依然として厳しく、首都圏への団体旅行も敬遠ムードが続いている」と指摘。訪問先別にみれば、訪日需要の回復が遅い地域もあるのが現状だ。
4月の訪日外客数について観光庁の井手憲文長官は、24日の定例会見で「前々年に近い数字まで回復してきたが、楽観はしていない。最大の訪日市場である韓国の数字が戻らず、ヨーロッパも厳しい」と述べた。主要な市場に対し商談会などを通じたプロモーションを強化するほか、韓国については、東京スカイツリーなどの観光素材も生かしつつ需要の回復に努める考えを示した。
出国日本人数は 過去最高を記録
4月の出国日本人数は前年同月比25.1%増の139万5千人だった。4月単月では過去最高を記録した。前年同月に対しては昨年7月以降、10カ月連続のプラスとなった。2010年4月との比較では15.0%の増加だった。
長野・諏訪地方、中国に産業観光を提案
長野県諏訪地方に集積されている精密機械加工などにかかわる産業を観光資源として、中国から旅行者を呼び込もうと、諏訪地方観光連盟(会長=山田勝文・諏訪市長)などの関係機関が21〜25日、中国の北京市、大連市でセミナーや商談会を開催した。「テクニカルビジットツアー」と題して、中国の旅行会社や企業に産業観光の魅力を紹介した。
諏訪地方観光連盟、国土交通省北陸信越運輸局、名古屋観光コンベンションビューローなどが連携し、国のビジットジャパン地方連携事業を活用して実施した。過去にも旅行見本市などに出展した際、産業観光をPRしたことはあるが、産業観光にテーマを絞ってセミナーや商談会を開催するのは初めて。
諏訪地方には、カメラや内視鏡などで知られるオリンパス、情報関連機器のエプソンをはじめ精密機械加工などの企業が多い。また、セイコーエプソンの製品や技術を紹介したものづくり歴史館などの施設もある。中国を対象とした観光プロモーション用のガイドブックでは約30社を紹介している。
中国でのセミナー、商談会には、山田・諏訪市長をはじめとする観光関係者、企業関係者合わせて約30人が参加。北京市で開いたセミナーには中国側から50人が参加、大連市では約25人が参加した。中国の政府関係機関なども訪問し、観光交流の活性化に協力を求めた。
初めてのセミナーながら反響は大きかったという。諏訪地方観光連盟インバウンド部会の横川辰美副部会長は「諏訪地方は“東洋のスイス”と言われるように精密機械に関する産業が発達している。産業観光に特化した訪日旅行の提案に対する関心は高かった。長野県とも連携し中長期的に取り組み、中国からのインセンティブツアーなどの誘致拡大に取り組みたい」と話す。
セミナー、商談会では、空の玄関口として中部国際空港が見込まれることから、名古屋市にある産業観光施設「トヨタテクノミュージアム産業技術記念館」なども合わせて紹介した。
九州〜韓国間の旅客航路、震災の影響で15%減
九州(山口県下関を含む)と韓国を結ぶ旅客定期航路の2011年度の旅客輸送実績は、前年度に比べて15.2%減の93万8千人となった。国土交通省九州運輸局が22日に発表した。東日本大震災や原発事故の影響を受けて、韓国人旅客が大きく落ち込んだ。日本人旅客は、夏場以降の円高ウォン安に伴う旅行需要の増加などもあったとみられ、前年度の実績を上回った。
実績の調査対象となる旅客定期航路は、下関〜釜山、下関〜光陽、博多〜釜山、対馬(比田勝、厳原)〜釜山の4区間。外国船社を含めた7社がフェリーや高速船を運航している。
11年度は、震災などの影響で上半期が37万6千人となり、前年度の上半期に比べて33.3%の減少となった。上半期としては、SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生した03年度以来、8年ぶりに40万人を割り込んだ。
一方で下半期は3.5%増の56万2千人。1999年度以降の統計で過去2番目に多い実績となった。
年間の旅客実績を国籍別にみると、韓国人が前年度比26.9%減の57万9500人、日本人が同16.1%増の34万345人、その他が10.5%減の1万7820人だった。
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