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観光行政 ■第2684号《2012年12月8日(土)発行》
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ノロウイルス急増、厚労省が注意喚起
ノロウイルスによる感染性胃腸炎の患者が急増している。厚生労働省によると、2006年に次いで、過去10年間で2番目に多い数で推移している。年間の食中毒患者数の約半数がノロウイルスによるものといわれ、うち7割は11月から2月の冬季に発生している。同省は11月27日付で、都道府県などの衛生主管部局に対し、予防対策の普及に一層努めるよう書面で連絡。食品を扱う事業者などに向けた予防のポイントを紹介するリーフレットも作成した。
国立感染症研究所がこのほど発表した感染性胃腸炎の患者数は、11月12〜18日で1医療機関当たり平均(全国約3千の小児科の平均)11.39人。過去10年間の同時期では、2006年の16.42人に次いで、2番目に多い。
厚生労働省は、ノロウイルス食中毒の発生原因として、調理従事者を介したものが主だとして、ノロウイルス食中毒予防に関する要点をまとめたリーフレットを作成。都道府県などに注意喚起するよう呼び掛けている。
リーフレットによると、ノロウイルスによる食中毒予防のポイントは(1)調理する人の健康管理(2)作業前などの手洗い(3)調理器具の消毒—の3点。
健康管理では、「普段から感染しないように食べものや家族の健康状態に注意する」「症状がある時は、食品を直接取り扱う作業をしない」「症状がある時に、すぐに責任者に報告する仕組みをつくる」。
手洗いでは、「トイレに入った後」「調理施設に入る前」「料理の盛り付けの前」「次の調理作業に入る前」を洗うタイミングとし、「指先、指の間、爪の間」「親指の周り」「手首」など、汚れの残りやすいところをていねいに洗うとしている。
調理器具の消毒に関しては、塩素消毒と熱湯消毒の二つの方法をあげている。塩素消毒は「洗剤などで十分に洗浄し、塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウムで浸しながら拭く」、熱湯消毒は「85度以上の熱湯で1分間以上加熱する」としている。
万一、感染者が出た場合、感染を広げないためのポイントもあげている。
食品、食器などに関しては「感染者が使ったり、おう吐物が付いたものは、他のものと分けて洗浄、消毒する」「食器等は食後すぐ、厨房に戻す前に塩素液に十分浸し、消毒する」、おう吐物の処理は「ペーパータオル等で静かに拭き取り、塩素消毒後、水拭きをする」「拭き取ったおう吐物や手袋などは、ビニール袋に密閉して廃棄する。その際、できればビニール袋の中で千ppmの塩素液に浸す」などをあげている。
観光庁、ツアー登山事故で中間報告、指導・監督手法に課題が
観光庁は11月30日、中国・万里の長城付近で実施されたツアー登山で発生した遭難死亡事故を受け、ツアー登山を催行した旅行業、アミューズトラベル(東京都千代田区)に対する国の指導、監督の問題点などを検証し、中間報告をまとめた。同社が以前にもツアー登山で遭難死亡事故を起こしていることから、事故の再発を防止できなかった要因などを調査。立ち入り検査のあり方などに課題があるとして、検査の強化をはじめとした指導・監督手法について改善に向けた方向性を示した。
11月3日、同社が実施した万里の長城付近でのツアー登山では、大雪のために参加者が遭難し、日本人客3人が死亡した。同社は2009年7月に北海道のトムラウシ山で実施したツアー登山でも遭難死亡事故を起こしていた。
事故の再発を重くみた観光庁では、トムラウシ山での事故後の国の対応について、長官をチーム長とする検証チームを庁内に設置。当時の観光庁の幹部や担当者にヒアリングを行うなど指導・監督態勢を検証した。
トムラウシ山での事故後、同社には聴取や指導のほか、5回の立ち入り検査を実施し、10年12月に51日間の業務停止命令の処分を下した。業務停止期間の終了後も、昨年12月までに3回の立ち入り検査を行った。
中間報告では、観光庁の対応について「処分後のフォロー、指導・改善事項の遵守をチェックする検査が不十分だったのではないか」「観光庁幹部の指導、管理が不十分だったのではないか」などの課題を挙げて改善の方向性を示した。
改善の方向性には、(1)立ち入り検査は速やかに、かつ頻度を高めて対応する(2)改善措置の確実な実施と事後的な確認・検証のため、ツアー登山等については安全確保の順守状況を記録させる等、検査方法の改善など必要な措置をとる(3)重大事案については方針を明確に示し、処分後の立ち入り検査等を継続的かつ頻度を高めて対応する—などを示した。
観光庁、MICE誘致強化で検討委員会立ち上げ
強化委員会の初会合
観光庁は11月28日、国際会議や見本市、インセンティブツアー(報奨旅行)などを意味するMICEの誘致、開催を強化するため、有識者を委員とする検討委員会を立ち上げた。日本での国際会議の開催件数は、アジア太平洋地域でのシェアが20年前に比べて大きく低下。委員からは、韓国やシンガポールなどが誘致への取り組みを強化しているのに対し、日本は中長期の視点に立った投資や人材育成に関して具体策が欠如しているなどの問題点が挙げられた。
ICCA(国際会議協会)の統計によると、アジア太平洋地域の主要国(日本、中国、韓国、シンガポール、豪州)の総開催件数に占める日本のシェアは、1991年には51%だったが、近年では20%台に縮小。要因には他国の経済成長などが挙げられるが、日本の誘致競争力の相対的な低下が懸念されている。
競合国は、ホテルと一体となった大型の国際会議場や展示場の整備、専門人材の育成などの施策を強化。観光庁が行った海外有識者を対象としたヒアリングでは、「韓国、シンガポール、マレーシアがMICEへの投資を拡大しており、日本との差は開きつつある」との指摘があり、投資などの面ではすでに日本が追う立場にあるとの見方もあった。
検討委員会では、委員の近浪弘武氏(日本PCO協会代表幹事、日本コンベンションサービス社長)が「重要なのは中長期のビジョン。10、20年のスパンでトップダウンによる先行投資を行う覚悟が必要。韓国、シンガポールとの差はそこではないか。何に投資するかと言えば、人材と施設だ」と訴えた。
誘致を主導する地域のコンベンションビューロー(CB)の態勢や人材に関する課題も指摘された。国内のCBのMICE担当者は、自治体や民間企業からの出向が多く、一定期間で異動することが多い。専門人材が育ちにくく、国内外の人脈も広がりにくい。
委員の石井清昭氏(日本コングレス&コンベンションビューロー副会長、ちば国際コンベンションビューロー専務理事)は「CBは自治体の外郭団体だが、MICEの意義や経済効果を自治体が理解し、十分な態勢をとっているかと言えば、必ずしもそうではない。担当者も多くは2、3年で替わってしまう。専門人材の育成、確保に関する施策が必要だ」と指摘した。
検討委員会の正式名称は、「MICE国際競争力強化委員会」。MICE分野の中でも特に国際会議の誘致に関するソフト面の施策を検討する。自治体やCBのマーケティング戦略の高度化、人材・態勢の強化などを中心に検討し、来年の春までに提言をまとめる。
MICEの誘致・開催の推進策を有識者で議論する機会は今回が初めてではない。提言の具体化について委員の定保英弥氏(帝国ホテル専務取締役)は「提言をまとめて終わりではなく、アクションこそが大切。民間も、団体も、観光庁も担当者は替わるが、提言を中長期的に実現できるようにすべき」と強調した。
委員会の他の委員は次の通り(敬称略)。
西村幸夫(東京大学副学長・教授)=委員長=、石積忠夫(日本展示会協会会長)、川村益之(JTB法人東京社長)、小堀卓(パシフィコ横浜社長)、玉井和博(立教大学観光学部特任教授)、塚本稔(京都市副市長)、中西充(東京都産業労働局長)、生江隆之(日本経済団体連合会観光委員会企画部会長)、松山良一(日本政府観光局理事長)、分部日出男(日本コンベンション事業協会会長)
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