安倍首相は17日、民間の政策提言組織、日本アカデメイアの会合の中で講演し、成長戦略の第2弾を発表した。「世界で勝つ」をキーワードにした戦略の一つとして、観光立国の推進を掲げた。訪日外国人旅行者の目標としてまず1千万人を達成し、さらに2千万人を目指す。実現に向けて「観光立国型のビザ(査証)発給要件の緩和を進める」と表明した。
ビザ制度に関しては「これまでは中国や韓国からの観光客が目立っていた。日ASEAN(東南アジア諸国連合)友好40周年にあたる今年は、ASEAN諸国から日本への観光客を増やすために、こうした国々を中心にビザ制度の見直しを行う」と述べた。
インバウンド誘致の国際競争の激化にも言及。「日本を訪れる外国人旅行者は年間800万人前後。これに対し韓国はこの5年間のうちにほぼ倍増し、年間1100万人。一気に抜き去られた」と述べ、要因を為替レートに加え、ビザ制度の違いと指摘した。
韓国とのビザ制度の違いについては事例を挙げて説明した。タイ、マレーシアからの観光目的の旅行者は、日本はビザ(短期滞在数次ビザなど)が必要だが、韓国は90日内の滞在ならば免除されている。
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安倍首相が成長戦略の中で、ビザ制度のあり方に言及したことで、発給要件緩和の実現に大きく前進した。治安などの観点から関係当局との調整は必要になるが、要件緩和の対象国や内容、実施時期が注目される。
発給要件の緩和では、自民党の観光立国調査会(山本幸三会長)が韓国など競合国並みに緩和するよう提言案に記載。国土交通省の観光立国推進本部(本部長・太田昭宏国交相)も、観光施策集の中で要件緩和が必要とし、夏をめどに一定の実施を期待している。
調整事項が関係省庁にまたがるビザ制度は、安倍首相が主宰する観光立国推進閣僚会議の検討テーマ。閣僚会議では夏までに観光立国の実現に向けたアクションプログラムを策定することになっている。