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地域観光 ■第2730号《2013年12月1日(土)発行》    
 

舞鶴市、引き揚げ資料の世界記憶遺産登録に意欲
会見に出席した多々見市長(中央)、山下館長(左から2人目)ら関係者

 京都府舞鶴市は11月20日、東京都内で記者会見し、市が運営する舞鶴引揚記念館の収蔵品「シベリア抑留や引き揚げに関する資料」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産」登録を目指す、と発表した。会見には多々見良三市長、同記念館の山下美晴館長、東京女子大の黒沢文貴教授らが出席した。

 第2次世界大戦の敗戦に伴い、政府は海外に残された日本人を帰国させる引き揚げ事業を開始するため、1945年から舞鶴をはじめ、呉、佐世保などを引揚港に指定。舞鶴港は45年から13年間にわたって旧ソ連や旧満州などから約66万人の引き揚げ者と遺骨1万6千余を受け入れており「日本人の引き揚げの記憶を象徴する港」(同市)となっている。

 しかし、戦後70年近く経ち、戦争を知らない世代の増加とともに、引き揚げの史実は過去の出来事として年々薄れつつある。多々見市長は「わが国の戦後の発展に果たした社会的役割を次の世代に語り継ぐとともに、平和の尊さを発信することが、市民を挙げて引き揚げ事業に携わってきた市の責務であると考える」と強調した。

 同資料の中には、抑留された元日本兵がシベリアの収容所で工夫を凝らしこっそり書き残したものや、映画や歌謡曲で知られる「岸壁の母」のモデルとなった端野いせさんが息子への思いをつづったはがきなどが含まれている。

 市は来年3月にユネスコへ推薦書を提出し、戦後70周年にあたる15年の登録を目指す。

 来年2月8〜23日には東京タワーで「舞鶴から世界へ〜引き揚げの記憶展〜」(仮称)や「世界記憶遺産登録推進記念シンポジウム」(同)などを開催し、機運を盛り上げていく。

 世界記憶遺産は92年に創設され、2年ごとに登録事業が行われている。現在、245件が認定されており、主なものには「アンネ・フランクの日記」「ベートーベンの手書きの楽譜」などがある。日本では登録が1件(福岡県田川市の炭鉱記録映画・日記など697点)、申請中が2件(国推薦の国宝「御堂関白記」「慶長遣欧使節関係資料」)ある。



姫路市、大河ドラマ放映などを機に観光振興に力
ドラマ館オープンを知らせるチラシ

 兵庫県姫路市が観光振興に燃えている。姫路生まれの戦国武将・黒田官兵衛を描く来年のNHK大河ドラマの放映と大河ドラマ館のオープンに加え、15年には「平成の大修理」が行われている世界遺産・姫路城の一般公開が再開される。姫路に注目が集まるのを機に、観光客の増加やイメージアップに弾みをつけたい考えだ。

 官兵衛は稀代の軍師として羽柴(豊臣)秀吉を補佐し、その天下統一事業を支えたことで知られる。大河ドラマ「軍師官兵衛」では岡田准一さんが官兵衛を演じる。

 「ひめじの黒田官兵衛 大河ドラマ館」は姫路城南側の家老屋敷跡公園内に1月12日オープンする。ドラマで使用された衣装やパネルの展示、関連映像の上映などで構成され、15年1月10日まで開催される。来館者は60万人を見込んでいる。

 また、同時期に姫路城内に「官兵衛の歴史館」もオープン。こちらも60万人の来館者を見込む。

 平成の大修理は09年10月着工。12年11月に瓦の全面吹き替えが終わり、城壁の塗り直しなどの本体工事も今年12月に完了する。修理見学施設「天空の白鷺」は14年1月に閉館し、その後は素屋根の解体工事が行われ、15年3月27日に大天守の一般公開が再開される。

 姫路観光コンベンションビューローの須佐淳司観光部部長は「15年春には北陸新幹線が開業し、北陸地方にも消費者の関心が集まると思うが、大河ドラマ放映と姫路城の一般公開という話題で姫路観光を盛り上げていく」と話している。



札幌市が札幌特区通訳案内士制度創設、まず17人が登録
第1期の特区通訳案内士の登録者ら(交付式で)

 札幌市は、国から「札幌コンテンツ特区」として地域活性化総合特別区域の指定を受け、その特例措置として「札幌特区通訳案内士」制度を創設している。研修、試験を経て第1期の特区通訳案内士が誕生し、11月7日に登録証の交付式を行った。登録者は英語、中国語、韓国語の17人。国際的な映画などのロケの誘致を目指すコンテンツ特区の取り組みに対応してロケ地観光などの案内役を期待する。

 報酬を得て外国人観光客に通訳案内(通訳ガイド)を行うには、国が実施する国家試験に合格する必要があるが、特区制度では特例として、札幌市が行う研修への受講などを経て資格を取得できる。ただ、通訳案内ができる地域は札幌市内に限られる。

 札幌市では、コンテンツ特区として映画やテレビドラマなどのロケ誘致に関する規制緩和や支援制度の充実に取り組み、映像産業の振興とその波及効果による地域活性化を目指している。映像作品のプロモーション効果を観光客の誘致にもつなげる考えで、ロケ地観光などに通訳案内士の活躍を期待している。

 札幌特区通訳案内士の研修は8、9月の2カ月にわたって実施され、定員の80人が受講した。札幌市の地理や歴史といった基礎知識、ロケ地観光の特性、旅程管理をはじめ、現場実習や語学研修などを経て、口述試験に合格したのは54人。このうち通訳案内士として従事するために登録したのは現在17人。言語別の内訳は、英語8人、中国語6人、韓国語4人(うち1人は複数の言語で登録)。

 交付式では、上田文雄市長が「観光客に札幌に何度も来たいと思ってもらえるようがんばってほしい」と激励し、一人一人に登録証を手渡した。中国語で登録した観光団体職員の幸田順一さんは「観光客の誘致や旅行客の案内にこの資格を生かしていきたい」と意気込んでいた。

 札幌市では、国内外からのロケの総合調整や安全管理に当たる人材を認定する「リエゾンオフィサー制度」も創設。今年度内に研修を始める予定。札幌特区通訳案内士の登録者にも合わせて資格を取得してもらい、海外のロケ隊の業務をサポートすることも期待している。



福島県、教育旅行誘致でセミナー開催
 福島県観光物産交流協会は来年1月17日、東京・平河町の都道府県会館で、首都圏の学校や旅行会社を対象に「教育旅行誘致セミナー」を開催する。教育旅行で県を訪れる学校数が東日本大震災前の水準に戻っていない現状を踏まえ、講演や教育旅行を実施した学校の事例発表を通じて、誘致につなげる。

 長崎大大学院放射線医療学専攻教授の高村昇氏が「放射線被ばくと健康影響」をテーマに基調講演。県への教育旅行実施校からの事例発表では品川区立荏原第一中学、和洋国府台女子中学の2校が行う。このほか語り部による震災講話などが予定されている。

 参加費無料、定員80人。問い合わせは同協会。TEL024(525)4024。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇


 同協会によると、教育旅行については年間約70万人(延べ宿泊者数)を受け入れてきたが、東日本大震災と原発事故による風評被害などで11年度は約13万人まで減少。12年度は約24万人まで回復したものの、「(教育旅行を)取り巻く環境は依然として厳しい状況にある」という。

 福島への教育旅行については、放射線に対する不安が敬遠理由の一つとして挙げられるが、県では冊子の製作や測定結果の積極的な公表などで不安払拭に努めている。11月5日公表した測定結果によると、いわき合同庁舎や猪苗代町役場などは0.07マイクロシーベルトで、東京都新宿区の都健康安全研究センターの0.04マイクロシーベルトと大差はない。

 同協会の野崎和彦・教育旅行推進課長は「県内の多くの地域では放射線の影響はなく、人々は日常の生活を送っている。安心して来てほしい。また、福島のいまをぜひ見てほしい」と呼びかけている。




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