観光庁はこのほど、旅館業の経営改善を支援する目的で構築した旅館向けの簡易な管理会計システムを公開した。システムは表計算ソフト(マイクロソフト社のエクセルファイル)で作成。多岐にわたる業務の特性から把握しづらい部門別の損益管理などを容易にし、経営実態の数値化を促す。中小規模の旅館などに活用してもらいたい考えで、利活用の方法をまとめたマニュアルも作成した。
管理会計は、決算書類や納税関係書類に加え、独自の様式の資料を作成し、企業経営の状況を財務的な数値として管理する手法。観光庁の観光産業政策検討会が昨年4月、中小規模の旅館をはじめとする宿泊産業の経営改善や生産性向上には管理会計の導入が必要と提言したことを受け、旅館に適した管理会計システムとして作成された。
旅館管理会計システムは、実績値、計画値、前年実績値を「データ入力フォーム」に入力すると、自動計算された結果が「管理表」に表示される。管理表には、「客室」「料理」「飲料」「売店」「その他」の5部門に関する売り上げ、費用、利益が表示されるほか、「総務」「営業」「施設運営・維持」の3部門の費用の状況が一覧で示される。
データ入力フォームは使いやすいように、税務申告などで作成する損益計算書の様式で構成。利活用マニュアルには、売り上げと人件費を各部門に配分する方法などが説明され、1泊2食付きの宿泊料売り上げを客室部門、料理部門に分けて入力できる。
このほか利活用マニュアルでは、旅館管理会計システムで把握した数値を経営の進ちょく管理や経営改善に生かす方法などが解説されている。
旅館管理会計システムは、観光庁が有識者を集めて設置した検討委員会(座長・長谷川惠一早稲田大学商学学術院教授)で検討した。観光庁では、旅館団体などを通じて旅館に管理会計システムの活用を呼びかけている。
また、検討委員会は、欧米にはこの旅館管理会計システムに類似した「宿泊産業のための統一会計報告様式」(USALI)があり、統計データも整備されているとして、「旅館管理会計システムの活用を業界内で普及させ、参考となる統計データの整備が求められる」と指摘している。
旅館管理会計システムとマニュアルは観光庁のホームページで入手できる。URLは次の通り。
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000203.html