観光経済新聞社はこのほど、全国47都道府県と都道府県旅館ホテル生活衛生同業組合に旅館・ホテルの耐震診断・改修に関するアンケート調査を行った。それによると、旅館・ホテルの耐震診断について補助制度を設けている自治体が41都道府県、設ける予定または検討しているとした自治体が3府県、ないとした自治体が3県だった。また旅館・ホテルの耐震改修については、14府県が補助制度を設けていると回答した。一方、都道府県旅館ホテル生活衛生同業組合に耐震診断・改修について現在の悩みを聞いたところ、診断・改修に掛かる費用面での十分な補助を求める声が多かった。
調査は3月下旬にファクスまたはEメールで行い、4月下旬までに自治体は47都道府県全て、旅館ホテル生活衛生同業組合は17組合から回答を得た。
自治体からの回答では、耐震診断についてはほとんどが補助制度を設けていることが分かった。
補助の形式は、都道府県が直接補助する場合や、市町村が補助を行うことを条件に都道府県が補助する場合などさまざま。ないとした自治体もあるが、市町村で独自に補助制度を設けていたり、旅館・ホテルに特化しない制度を設けていたりする場合も想定され、旅館・ホテルは自館が所在する自治体に確認をする必要がある。
耐震改修については、診断に比べると補助制度が確立されておらず、制度を設けているとした自治体が14府県にとどまった。
いち早く制度を設けた和歌山県は、平成27年度までの制度として、避難者を一定期間受け入れられる避難所としての機能を持つ旅館・ホテルなどに対して、市町村と協定を結ぶことを条件に改修に関わる費用を補助する。費用のうち、国が15分の6、県が15分の5を補助。旅館・ホテルなどの事業者は15分の4を負担するだけでいい。
また静岡県は、法律で耐震診断が義務付けられた旅館・ホテルなどに対して、最大6分の1の改修費用を補助。国と県、市町の補助を合わせると最大3分2の費用を補助することになる。
耐震改修への補助制度を持つとした自治体は、埼玉、神奈川、静岡、愛知、岐阜、三重、京都、和歌山、兵庫、鳥取、山口、香川、徳島、高知の各府県。首都直下地震や南海トラフ地震の発生を想定して、首都圏や太平洋側の自治体で整備している割合が比較的高い。このほか愛媛県では「補助事業を実施する市町へ、平成26年度から県が補助を行い、補助制度の創設を支援することとしているが、現時点で市町による補助制度が立ち上がるまでには至っていない」と回答している。
一方、47都道府県の旅館ホテル生活衛生同業組合には、現在困っていること、行政への注文などを聞いた。
回答では、「改修費用の補助は県として厳しいとの話がある。国は責任をもって地方自治体を指導してほしい」(群馬県旅組)、「市町の補助制度がない場合、助成は国の補助金のみとなってしまい、所在市町によって事業者の負担が大きく異なる。県の助成制度も国に準じて、市町の助成制度がない場合も直接事業者に補助する仕組みにしてほしい」(静岡県旅組)、「法の趣旨は十分理解できるが、該当施設にとってはあまりに経済的負担が大きく、まさに死活問題」(福岡県旅組)など、行政による手厚い補助や融資制度の確立を求める声が多く挙がった。
また「平成27年末までの耐震診断について、時間的な制約が短すぎる。消費税の段階的アップ等による建築会社の業務増加により耐震診断の発注が困難な状況にある」(愛知県旅組)など、法律で設定された耐震診断を行わなければならない期間の短さを指摘する声もあった。
さらに「診断結果公表についても該当施設に与える影響が大きいことを十分配慮していただき、慎重に取り扱っていただくよう要望する」(福岡県旅組)と、耐震診断の結果を公表することに懸念を示す声も聞かれた。
旅館・ホテルの耐震診断・改修については、昨年11月25日に施行された改正耐震改修促進法で、旧耐震基準に基づき建築された昭和56年5月末以前で、延べ床面積5千平方メートル以上の建物について、平成27年末までの耐震診断が義務付けられたことにより、その実施が急がれている。
旅館・ホテルの耐震診断・改修に関する調査