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観光行政 ■第2752号《2014年5月31日(土)発行》    
 

観光庁、着地型旅行普及へ規制緩和を検討

 観光庁は、着地型旅行の普及を促すため、旅行業法などの制度改正の検討を始めた。第3種旅行業の業務範囲、宿泊施設による着地型旅行商品の販売などの規制を緩和する方向で制度設計を進める。有識者会議の提言を踏まえたもので、詳細や実施時期は未定だが、着地型旅行商品を造成しやすくし、販売経路の拡大につなげたい考えだ。

 観光庁が観光事業者や学識経験者らを集めて設置した旅行産業研究会(座長・山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)はこのほど、「旅行産業の今後と旅行業法制度の見直しに係る方向性について」と題した報告書をまとめた。この提言の一つに、着地型旅行に関する施策の方向性が示された。

 研究会は、着地型旅行商品の多様化と販売経路の拡大に向けて制度の見直しを提言。具体的な方向性としては、(1)第3種旅行業務の範囲の拡大などの措置を講じることで、商品造成を促進する(2)宿泊施設などが一定の条件を満たす旅行商品を販売できるようにする—を挙げた。

 観光庁は、研究会の提言を受けて制度のあり方を検討する。現行の第3種と地域限定の旅行業では、募集型企画旅行を実施できる範囲は、営業所が所在する市町村と隣接する市町村の区域だが、さらに区域を拡大できないか、具体的な要件を検討していく。

 着地型旅行商品の販売に関しては、契約した旅行会社の商品を販売できる旅行業者代理業があるが、宿泊施設などで販売しやすくするため、規制の緩和を検討する。宿泊施設にとどまらず、観光案内所や道の駅などでの販売の可能性も視野に入れている。

 旅行業者代理業では、観光圏整備法に基づく観光圏に対する特例措置として、観光圏内限定旅行業者代理業があり、宿泊施設が旅行業務取扱管理者に替えて、国の定める研修の修了者を選任すれば商品を販売できる。見直しの方向としては対象を観光圏に限定せず、旅行業務取扱管理者の選任などの要件を大幅に緩和できるよう検討する。

 制度の見直しに着手する観光庁観光産業課の石原大課長は「旅行商品を造りやすく、売りやすく、消費者にとっては利用しやすくする。着地型旅行商品の市場拡大につながるようにしたい」と話している。

 着地型旅行に関連する制度改正では、地域の観光協会や宿泊施設などに商品造成を促そうと、2007年、旅行業法の施行規則を改正し、業務範囲を限定して第3種旅行業に募集型企画旅行の実施を認めた。さらに13年4月、営業保証金などが第3種より低額な地域限定旅行業も創設した。


12年の旅行消費額は約23兆円、6年ぶり増加

 観光庁が21日に発表した2012年の日本国内の旅行消費額は22兆5千億円となった。前年に対して0.4%増となり、微増ながら6年ぶりに増加に転じた。このうち日本人の国内宿泊旅行は前年比1.4%増の15兆3千億円で、全体額と同様に6年ぶりに上向いた。

 日本国内の旅行消費額は、06年に30兆1千億円だったが、以降は減少が続いた。日本人の国内宿泊旅行も、06年には20兆6千億円に上ったが、東日本大震災が発生した11年には15兆1千億円に落ち込んでいた。

 12年の日本国内の旅行消費額の内訳は、日本人の国内宿泊旅行のほか、日本人の国内日帰り旅行が前年比10.1%減の4兆4千億円、日本人の海外旅行(国内消費分)が同7.1%増の1兆4千億円、訪日外国人旅行が同29.6%増の1兆3千億円だった。

 旅行消費額全体に占める市場別の構成比は、日本人の国内宿泊旅行が68.2%、日本人の国内日帰り旅行が19.8%、日本人の海外旅行が6.3%、訪日外国人旅行が5.7%となった。

 構成比が最も大きい日本人の国内宿泊旅行を目的別の内訳で見ると、観光が9兆5千億円、帰省が3兆6千億円、ビジネスが2兆3千億円。

 12年の旅行消費額22兆5千億円がもたらす生産波及効果は46兆7千億円に上り、399万人の雇用誘発効果があると推計されている。



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