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観光行政 ■第2760号《2014年7月26日(土)発行》    
 

関東地方、広域連携の遅れが課題に
関東の観光広域連携をテーマにしたシンポジウム

 関東は広域連携の空白地帯—。関東地方の観光広域連携のあり方を考えるシンポジウムが18日、東京都内で開かれた。広域連携の立ち遅れがインバウンドを推進する上での課題に挙がり、2020年東京オリンピック・パラリンピックの地方への経済効果の波及も危ういとする指摘も。有識者らは、インバウンド振興を目的とした民間主導の広域連携の必要性などを提言した。

 シンポジウムは「関東観光広域連携シンポジウム」と題し、国土交通省関東運輸局、日本観光振興協会関東支部、関東商工会議所連合会が主催。広域連携に関する意見が講演やパネルディスカッションで交わされた。

 関東運輸局企画観光部の鈴木史朗部長は「オリンピック開催のお膝元である関東は、広域連携が全国で一番遅れている。広域連携の観光組織もない」。首都・東京を抱え、各県に有力な観光資源を持ちながら、インバウンドへの広域的な取り組みが弱いと指摘した。

 広域連携の弱さは誘客の上でも不利に。栃木県・鬼怒川温泉の鬼怒川グランドホテル夢の季の波木恵美社長は「インバウンドでは、鬼怒川だけでも、栃木県だけでも売れない。広域のルートを発信して売らないと。栃木、群馬と言っても海外には認知されていない。外国人は東京には来ても、他の関東は素通りで、京都などに行ってしまう」と課題を指摘した。

 訪日外国人の地域別訪問率調査(日本政府観光局実施、2010年)によると、関東では東京都が全国トップの60.3%で、以下は神奈川県が17.8%、千葉県が15.0%、山梨県が8.2%と高いが、栃木県は3.6%、埼玉県は1.7%、茨城県は1.2%、群馬県は0.9%と低い。周辺県は、約3人に2人が訪れる東京から旅行者を引き寄せられていない。

 オリンピックの東京開催では、地方への経済効果の波及が課題とされている。ディスカウントストア「ドン・キホーテ」グループのインバウンド事業を担当し、ショッピング観光などで同業種・異業種間の連携に成果を上げた実績を持つジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長は「何もしなければ、地方の受ける恩恵はゼロ。そうしないためには、町ごとの地域連携を確立し、広域連携、広域間の連携へと進める必要がある。周囲は同志、仲間という考え方が連携の基礎だ」と訴えた。

 関東地方では、広域連携の前段階として観光関係者の情報交換を進めようと、2010年2月に関東観光推進会議(事務局・関東運輸局)が設置されているが、九州観光推進機構など、他の地方に見られるような誘客事業を具体的に推進する常設組織はない。

 関東地方の広域連携について、JR東日本やJTBで要職を歴任し、現在は観光地域づくりプラットフォーム推進機構の会長を務める清水愼一氏は、事業化や組織化のポイントとして、(1)インバウンドを目的にまとまる(2)東京を中心にまとまる(「東京」を売り、そこから周辺県に周遊させる)(3)民間が自分たちの儲けを考えて前面に出る—を挙げ、「訪問率トップの東京がある関東がバラバラなのは問題。早期に連携を進めるべき」と提言した。



観光庁、MICE効果測定モデルを改良

 観光庁はこのほど、MICEの開催による経済波及効果を把握できる「簡易測定モデル」を改良し、これまで使用してきた旧モデルに代えて新しい測定モデルの提供を始めた。経済波及効果が算出される対象範囲は、旧モデルでは「全国」だけだったが、新測定モデルでは「全国」「都道府県」「都市」別にそれぞれの数値が算出できるようになった。

 簡易測定モデルは計算ソフトになっており、開催されるMICEの基本情報、開催地域の特性などの数値を入力すると、直接効果、間接波及効果、付加価値誘発額、就業効果、税収効果などが自動的に計算される。

 自治体や企業などの関係者にMICEの誘致、開催への取り組みを促すには、経済波及効果のデータが不可欠なことから、観光庁が2009年度に簡易測定モデルを開発し、関係機関に提供していた。

 新しい測定モデルは、地域ごとの産業連関表を利用することで、都道府県別、都市別の経済波及効果が算出できる。都市別の経済波及効果の算出は、コンベンション法に基づく「国際会議観光都市」に認定された52都市が対象になっている。

 このほかにも、国際会議を種類別に「医学系」「科学・自然・技術」「その他」に細分化。算出結果の表示様式も従来より見やすくした。

 簡易測定モデルは、観光庁の指定するEメールアドレス(jp-mice@mlit.go.jp)に「経済波及効果測定モデル希望」と題したメールを「差出人の所属」「氏名」「連絡先(Eメールアドレス、電話番号)」を明記して送付すると入手できる。



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