温泉地で新たな「名物料理」による誘客の動き |
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湯田上温泉ホテル小柳で開かれた「新潟和食」成果発表会 |
地域食材を利用し、地元ならではの料理を開発して新たな観光資源に育てようという事業が全国各地で行われている。「食」は重要な観光資源であり、その土地でしか味わうことができない料理や食材を求める旅行も盛んになっている。本紙では、食の分野から観光振興に取り組んでいる新潟県と石川県輪島市、山梨県・石和温泉の事業について紹介する。
成果発表会で披露──新潟
「新潟和食」の開発を推進している県は4日、県内の宿泊施設や飲食店の料理人が考案した料理を披露する「『新潟和食』成果発表会」を湯田上温泉ホテル小柳(田上町)で開催した。参加者は「新たな名物を新潟観光の目玉にしたい」と期待を示している。
発表会には、県や観光事業者、和食関連業界関係者ら約40人が参加し、新たな料理を試食した。
県料理生活衛生同業組合が提案したのは、「四季折々の食材を用いた『祝いご膳』粋(いき)」。
美食家で知られる北大路魯山人が、糸魚川市出身の詩人、相馬御風(ぎょふう)に振る舞った料理を参考に開発した「魯山人の『祝いご膳』」と、糸魚川藩に伝わる正月料理を参考に開発した鯛を食材の中心に据えた「陣屋料理の『祝いご膳』」。
北陸新幹線開業に合わせ、同市の料亭「鶴来家」で先行提供を開始。料理だけではなく、四季折々の庭の景色や目で楽しむ器と盛り付けなど、料亭ならではの「粋」な体験を盛り込んだ。
県旅館ホテル生活衛生同業組合は、「のっぺ伝承プロジェクト『こんさいの玉手箱』」。
同組合は、新潟の代表的な郷土料理「のっぺ」の県内各地域に伝わるレシピを収集・分析。組合員の施設で宿泊客に提供しているほか、県内外でのデモンストレーションを通じてのっぺの魅力を伝えている。
発表会では、上越、中越、下越ののっぺを味比べするための小鉢セットを用意した。
県すし商生活衛生同業組合は、地魚のすし「極み」に郷土料理や焼き物を組み合わせた会席料理「極みと新潟和食」を披露した。
新潟すし三昧「極み」は、南蛮エビやヤナギガレイ、ノドグロ、ヤリイカなど新潟ならではの地魚を使用。新潟の味を求めて首都圏から多くの観光客が来るようになった。
同組合では、祝い事や接待、県外・海外からの観光客のおもてなしメニューとして最適とPRしている。4月から組合員のうち33店舗(1月31日現在)で提供する予定。
県調理師会は、「『新潟の味覚』おもてなし四季彩弁当 越の恵み」を出品。
南蛮エビや新潟和牛など県産ブランド食材、旬の食材を使用した質の高い弁当になった。発表会では「冬バージョン」を提供。4月以降、季節にあわせた弁当を県内のホテルなどで販売する。
県や地元観光団体などは、発表された各料理を名物に育て、旅行商品に組み込むことで観光誘客促進を図りたい考えだ。
「漁師鍋」を商品化──石川・輪島
石川県輪島市の宿泊施設の団体などが、同市輪島崎町に伝わる漁師料理「漁師鍋(トコトコナベ)」を宿屋料理として商品化し、1月から提供を始めた。3月の北陸新幹線開業や4月から始まる地元が舞台のNHK連続テレビ小説「まれ」の影響で観光客の増加が見込まれる中、地元の観光関係者らは、地域に伝わる伝統料理を新たな観光名物として売り出そうと意欲を見せている。
商品化に取り組んだのは、市観光協会と輪島温泉観光旅館協同組合、市観光民宿組合の3団体。
漁師鍋は、漁師町として知られる輪島崎町に伝わる郷土料理。漁師が船上で、捕れたてのサバの身を削ぎ切りにして、甘辛いしょうゆで煮て食べていたのが始まり。船上で簡単に煮るだけだったが、その後、漁師の家庭でも作られるようになった。
現在では、各家庭でいろいろな魚や野菜を入れるなど工夫を凝らした鍋料理に発展している。「トコトコナベ」の名前の由来は、“トコトコ”と煮て食べるところから付いたとも言われている。
各組合の組合員らが漁師らの自宅を訪問して作り方を学び、昨年12月23日には3団体の関係者が集まってホテル高州園(同市)で試食会を開き、しょうゆだしにサバ、海藻のツルモ、野菜、キノコがたっぷり入った鍋を堪能した。締めには輪島そうめんが出された。
地域の各旅館やホテル、民宿では、鍋に入れる魚やだしなどでオリジナル色を出しており、食べ比べも輪島観光の楽しみの一つになりそうだ。
“朝食日本一”へ──山梨・石和温泉
石和温泉観光協会(山梨県笛吹市)は「石和温泉の日」の1月30日(いさわ)から、石和温泉旅館協同組合の組合員施設のうち旅館・ホテル12施設で、宿泊客に地元食材にこだわった朝食「こぴっと朝めし」を提供している。同協会では、宿泊客に朝ご飯で山梨ならではの味を楽しんでもらうことで、「日本一朝食がおいしい温泉郷」を目指す。
この朝食プロジェクトでは、組合員施設の経営者や料理人らが、料理の原料や産地、生産者、調理法、提供方法などを吟味し、研究を重ね、各施設が特色ある朝食を作り出した。
主な料理は、梨北米(りほくまい)の朝がゆ▽大型のニジマス「甲斐サーモン」の塩焼き▽笛吹川で捕れたアユの一夜干し▽山梨産大豆の豆腐や揚げ出し豆腐、納豆、豆腐田楽、みそ汁▽山梨産フルーツいろいろ▽山梨産卵の卵焼き、オムレツ▽山梨産の野菜サラダ—など。これらの中から、5品目以上を提供することになっている。
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北海道の12月の宿泊実績、人員、売り上げ増加 旅館協会北海道調べ |
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日本旅館協会北海道支部連合会はこのほど、会員旅館・ホテルを対象に実施した宿泊実績調査の2014年12月の結果をまとめた=表。12月中旬には暴風雪に見舞われたが、宿泊人員、売り上げともに前年同月の実績を上回った。
主要な観光地、温泉地14地区に所在する旅館・ホテルが対象。今回調査では82軒の回答を集計。
宿泊人員では前年同月比4.4%増、売り上げでは同7.3%増。宿泊人員では14地区のうち9地区がプラス、売り上げでは11地区がプラスだった。
宿泊人員、売り上げの両方が2桁の伸び率だったのは、「洞爺湖温泉・支笏湖・日高・えりも」「小樽・朝里川温泉・札幌」「余市・ニセコ・岩内」の3地区となった。
年末年始(12月28日〜1月3日)の宿泊実績について聞くと、回答64軒のうち「前年より良かった」が24軒(全体に占める割合38%)、「前年並み」が31軒(同48%)、「前年より悪かった」が9軒(同14%)だった。 |
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