旅館の8割、外国人受け入れに「積極的」 |
|
外国人観光客でにぎわう東京・浅草 |
観光経済新聞社はこのほど、全国の主な旅館約100軒を対象に「外国人客受け入れ」に関するアンケート調査を行った。それによると、回答者のおよそ8割が外国人客を「積極的に受け入れたい」と回答。館内の外国語表示を増やしたり、外国人スタッフを採用したりするなどして、誘客に力を入れている。ただ、直前の予約変更やマナー、日本人客とのバランスなど、問題点も浮き彫りになっている。
「外国人客を積極的に受け入れたい」と思う旅館に理由を聞いたところ、「伸びしろが大きいターゲットのため」「オリンピック開催に向け増加すると思うので」「アジアを中心に経済成長している国々から来日される外国人客が年々増加すると考えられる」と、その順調な伸びを指摘する一方、「国内市場は人口減少で市場規模がどんどん縮小していくことは明白」「伸ばすのはここだけ」「国内の団体予約が減少する中の補てん」と、国内需要の低迷を指摘する声も多かった。
一方、積極的に受け入れようと思わない旅館に理由を聞いたところ、「スタッフが外国語対応をできない」「館内、客室設備への被害が心配」「国内、海外のお客さま両方に満足のいくおもてなしができない」などの答えが挙がった。
「外国人客の受け入れで工夫をしていること」は、「外国語表示を増やしている」「フロントでの案内シートの用意」「宿のご案内帳等を外国の方にも分かりやすい内容表記に変えて対応」など、表示の多言語化を行う事例が多く、「外国人スタッフの雇用」「英語対応可能なスタッフの活用」「常駐の通訳はいないが、海外客の来館に合わせて対応できるスタッフを確保している」と、外国語による先進的な人的対応をする旅館も見られた。
ほかに「ベッド付き和室の増設」「Wi—Fi全館完備」「食事内容を国別にアレンジして提供している」「相手国の国旗を掲揚」「積極的に部屋をアップグレード」など。「日本人となるべく同じやり方をする」「今のところ特別にはない。日本のお客さまと同じように過ごしていただいている」とする旅館もあった。
年間5千〜6千人の外国人客を受け入れている長野県湯田中温泉の「一茶のこみち美湯の宿」は、「地獄谷野猿公園」など近隣の観光スポットやスキー場への無料バス、民俗芸能などのアクティビティーを外客向けに提供、顧客満足の向上に努めている。
「オーナーが外国人」という静岡県浮山温泉の「坐漁荘」は、3、4泊の滞在型がほとんどのため、「日本の文化を取り込んだオプショナルツアー等を毎回提案している」。
高知市の「城西館」は、マレーシア国籍の社員が在籍。中国語、英語、マレー語での対応を可能にしている。
一方、「外国人客の受け入れで苦労していること」は、「外国語版観光ツールの充実」「全てのスタッフが英語対応をできるわけではないので、お客さまに疎外感を感じさせてしまうことがある」と、言葉の問題を指摘する旅館が多い。
「無連絡での人数の増減、到着時間の大幅な遅れ、直前での突然のキャンセル」「食事内容(肉がだめ、精進料理希望)や人数が、事前に連絡をいただいていても、当日変更になることが多い」「到着時間が遅れても連絡がつきにくい」と、事前準備の難しさを指摘する声も目立つ。
ほかには、「料金が安い」「料金交渉(提示金額と希望料金)」「OTAからの予約の際のキャンセル料の請求」「日本人客と海外客とのバランス」「伝えても、お願いしても、一向に改善されないマナー(一部の国)」「日本人のお客さまのお声がマイナス的なことが多い」など。
「自館で免税店登録(外国人に対する消費税免税)をしようと思うか」の問いでは、およそ半数が前向きな回答をしている。このうち6軒がすでに免税店登録済みで、5軒が現在申請中という。登録の予定がない旅館も「宿泊比率が20%を超えれば考えたい」「将来的に受け入れ実数が増加すれば検討すべきと考える」などとしている。半面、「登録済みだが、まだ具体的に販売展開はしていない」「旅館内ではほとんど買わないので登録はしていない」とする旅館もあった。
|
|
1月の訪日外客数は29%増で過去最高 |
|
今年1月の訪日外客数は、前年同期比29.1%増の121万人8千人となり、1月として過去最高を記録した。日本政府観光局(JNTO)が18日に推計値として発表した。中華圏の休暇シーズン、旧正月が昨年は1月末から始まったのに対し、今年は2月中旬に当たったため、時期の変動が旅行需要に影響したものの、円安を背景にした訪日旅行の人気の高まりなどで、中国、香港などは前年同月の実績を大幅に上回った。
年間を通じた月間の旅行者数として韓国、豪州が過去最高を記録。1月としては中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、米国、フランス、ドイツなどが過去最高だった。
韓国は40.1%増の35万8100人。1964年の統計開始以来、全市場を通じて初めて単月で30万人を超えた。LCC(格安航空会社)の就航、増便などが旅行需要を喚起した。
中国は45.4%増の22万6300人。ショッピングを目的とする個人旅行者が増加した。香港は38.1%増の8万7700人で、札幌便や成田便の増加、旧正月前の割安な旅行料金などがプラス要因になった。
台湾は10.2%増の21万7千人。旧正月の前ではあったが、航空便の増便などにより個人旅行者を中心とした需要が拡大した。
東南アジアでは、タイが64.9%増の4万4800人と大幅に伸びたが、マレーシアは旧正月時期の変動などがマイナス要因となり、11.9%減の1万2300人だった。
このほか、豪州が30.1%増の4万8600人。昨年12月に続いて2カ月連続で単月の過去最高を記録した。北海道や長野県を中心に、豪州でプロモーションを展開しているスキーリゾートへの旅行が好調だった。 |
|