自民党観光立国調査会の「観光基盤強化に関する小委員会」(鶴保庸介小委員長)が5日、「民泊を巡る現状と課題について」をテーマに開かれた。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の北原茂樹会長が出席し、内閣府や自民党で議論されている民泊営業の規制緩和について反対の意見を述べるとともに、宿泊4団体連名による5項目からなる要望書を提出した。北原会長は、ネットなどを介して行われている民泊営業について実態を把握する必要性を強調。民泊営業が認められる国家戦略特区内での事例についても、その成果や安全性を数年間にわたり検証すべきだとした。
宿泊4団体(全旅連、日本旅館協会、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟)連名の要望書は(1)旅館業法の改正については、その必要性を認めない(2)供給過剰ぎみの宿泊施設が大部分である地方においては特区の枠をひろげないでいただきたい(3)大都市の特区についても、先行例(東京大田区、大阪府)を十分検証してから次のステップに移っていただきたい(4)不法民泊の取り締まりを適切に実施していただきたい(5)政府におかれては、インバウンドによる大都市一極集中を民泊で受け止めるのではなく地方に分散されることに尽力していただきたい—。
民泊を旅館、ホテル、簡易宿所、下宿に続く五つ目の宿泊施設カテゴリーに位置付けるなどの旅館業法の改正は、「(民泊施設が)最低限の許可基準をうたっている簡易宿所の営業許可をとるのに、何の不都合があるのか。従来の簡易宿所の営業許可制度で十分対応できる」と指摘。東京都大田区と大阪府で先行して行われる予定の特区での民泊営業については、「さまざまな特区がさまざまな条件のもと同時進行し始めると、いたずらに国民の混乱をあおるばかりと考える。狙った成果がしっかりと出ているのかどうか、3〜5年かけて業界団体も交えて検証を行っていただきたい」とした。
また、各地で行われている営業許可をとらないマンションなどでの宿泊客の受け入れについて、「明らかに旅館業法違反」として、取り締まりを適切に行うよう要望。Airbnb(エアビーアンドビー)など、インターネットを利用した民泊の仲介については「看過するのではなく、旅行業の範疇で考えるか否か、早急に結論を出し、ルールを作ってほしい」とした。
会議には全旅連から北原会長、佐藤勘三郎副会長、野澤幸司副会長らが出席。このほか関係省庁(内閣府、警察庁、外務省、財務省、厚生労働省、国土交通省)の各担当者が出席した。
北原氏は「海外からお越しになったインバウンドの方が不法な民泊営業の施設に泊まり、万一火災や事故に遭われたり、近隣の住民を巻き込んだりしたらどうなるのか。観光立国は吹き飛んでしまい、オリンピックの開催も危ぶまれる。犯罪者の潜伏先やテロリストの拠点になる可能性も秘めている。やはり一定の取り締まりがなされるべきだ」と指摘。その上で、「政府には(民泊の)実態をしっかりと調査していただきたい」とした。
出席した議員は、北原会長の意見におおむね賛同。警察庁の担当者は「民泊もテロリストをはじめとする犯罪者の潜伏場所に悪用される恐れがある。防ぐために、宿泊場所の届け出をしっかりしてもらうとか、宿泊者の名簿が備えられるような措置を講じる必要がある。対応については関係省庁連絡会議で検討してまいりたい」とした。
民泊営業の規制緩和に反対する要望書・宿泊4団体連名(15年11月14日)