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観光行政 ■第2823号《2015年11月28日(土)発行》    
 

ロングステイ財団、初の学会を来春設立
記者会見する岡本立教大名誉教授(右)と弓野理事長

 ロングステイ財団(舩山龍二会長)は来年3月、「長期滞在型・ロングステイ観光学会」を設立する。長期滞在型観光を研究する学会は日本で初めてとなる。会の設立を11月9日に記者発表した。

 都内で開かれた設立発表会には同学会発起人代表で、ロングステイ財団理事の岡本伸之・立教大学名誉教授、弓野克彦・同財団理事長が出席した。

 岡本氏は「日本の観光の実態はあまりにも短期滞在型だ。国民1人当たりの国内観光旅行の回数は年間で2回ぐらい、1回当たりの泊数は1.5泊程度と非常に短い。例えば、フランスでは年間3週間、そのうち2週間は連続の休暇だ。ロングステイを国内で普及させたい」と設立の意図を説明。「どうすれば、ロングステイ、とりわけ国内における日本人のみならず訪日外国人のロングステイが可能となるのか。問題の所在がどこにあるのか、観光産業の実践の営みの中に、ロングステイを阻害する要因がありはしないか、ロングステイを促進する要因は何か、達成すべき課題はといった事柄がまさにこの新しい学会に与えられた研究テーマだ」と意欲的に語った。

 長期滞在型観光(ロングステイ)に関する広範な知識や経験を体系化し、政府が成長戦略の柱とする「観光立国の強化」と「地方創生」に寄与すると共に、従来の日本人の旅行形態や余暇の過ごし方に関わる課題に取り組み、官学民連携のもと長期滞在型観光のさらなる振興を図る。

 正会員は、長期滞在型・ロングステイ観光に関する学問分野について学識経験を有する者、または、関連分野で実務に従事する者で関心の高い者。会員数は100人以上を目指す。

 来年3月18日に設立総会、基調講演・シンポジウムを帝京大学霞が関キャンパスで開催、10〜12月に第1回全国大会を開く予定。


観光庁と厚労省、民泊検討会議設置へ
 住宅の空き室などを宿泊サービスに使用する民泊の問題に関して、観光庁の田村明比古長官は18日の専門紙向け会見で、厚生労働省とともに今月中に立ち上げる有識者会議の議論を経て、ルールづくりなど今後の対応に方向性を打ち出す考えを示した。

 田村長官は、外国人旅行者の増加に伴う大都市の宿泊需給のひっ迫の対策として「民泊は有力な選択肢の一つ」と述べると同時に、利用者のトラブル防止や仲介業者の関与のあり方、近隣住民への影響など、解決すべき課題も多いと指摘した。

 民泊の規制緩和に反対する宿泊業団体などの意見については、「いろいろなご意見があることは承知している。それらの考慮すべき事項を踏まえたルールができればいい」と述べた。

 宿泊サービスを巡るイコールフッティング(競争環境の平等化)の観点では、「既存の宿泊業界との公平公正な競争条件も考えなければいけない。仮に問題となるならば、既存の業界を縛っている規制を現代の状況に合わせて、変えていく必要があるのか、必要がないのかも検討する」と述べた。

 政府は、6月に閣議決定した規制改革実施計画で、インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅、別荘などを使用した民泊サービスについて、関係省庁で実態を把握した上で、旅館・ホテルとの競争条件を含め、幅広い観点から検討し、来年に結論を得ると定めている。


観光庁、日本版DMOの候補法人の登録制度創設
 欧米の先進事例などを踏まえ、各地域に構築が期待される日本版DMO(観光地域マネジメント・マーケティング組織)。観光庁は、日本版DMOの確立を支援するため、候補法人の登録制度を創設した。18日に公表した登録要領を基に、近く第1次の募集をスタートする。登録法人に対しては、地方創生の新型交付金をはじめ、関係省庁と連携した重点的な支援を行う方針。

 観光庁は、これまでの観光地域づくりについて、(1)観光以外の産業との連携、地域住民との意識共有(2)観光データの収集、分析(3)ブランディングやプロモーションでの民間的手法の導入—のいずれもが不十分と問題視。地域の多様な関係者を巻き込みながら、科学的な手法の下に戦略的に観光地域づくりを担うDMOの構築の必要性を指摘する。

 候補法人登録制度では、既存、新規の法人を問わず、地域でDMOの役割、機能を担おうとする法人が、DMO形成・確立計画を作成し、地方公共団体との連名で提出する。登録対象の法人は、申請時点で発足していなくても構想段階で申請できる。

 登録の区分は、区域の規模などによって分類。複数の都道府県にまたがった区域を対象とする「広域連携DMO」、複数の市町村にまたがった区域を対象とする「地域連携DMO」、単独の市町村を区域とする「地域DMO」の3区分。

 登録の要件は五つ。(1)DMOを中心として観光地域づくりを行うことに関する多様な関係者の合意形成(2)データ収集、戦略策定、KPI(重要業績評価指標)設定、PDCAサイクル導入の実施(3)関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整など(4)法人格、専門人材などを備えた組織(5)収益事業や法定外目的税、分担金などの安定的な運営資金の確保。いずれも計画段階で登録できる。

 登録法人に対しては、観光庁をはじめ関係省庁で構成する「『日本版DMO』を核とする観光地域づくりに対する関係省庁連携支援チーム」を通じて重点的な支援を行う。登録法人は、政府のまち・ひと・しごと創生本部が運用する新型交付金の支援対象にもなり得るという。

 申請された各地域のDMO形成・確立計画を観光庁で審査して登録。登録された法人は、KPI、PDCAサイクルを導入し、最低年1回、取り組みに関する自己評価を実施し、その結果を観光庁に報告する必要がある。

 観光庁は、候補法人登録制度やDMOのあり方などに関して、各地域で説明会を行うほか、来年1〜2月には各地域でシンポジウムを開催する予定。海外のDMOに関する先進事例の調査も進めており、今年度末をめどに報告書をまとめる。海外の先進事例では、スイス、アメリカ、オーストラリアなどのDMOの機能や運営を調査している。





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